《 阿修羅 》
阿修羅が育ち始めたのは 遠い幼き日。
決して失いたくない、
大切なものに 笑顔を見せて、
けれど内側では、
大切なものを傷つけた この世を怒り憎み、
猛り狂っていた。
その頃 私の中の、
もう一人の自分が 阿修羅と化して、
それに気付いたから、
誰にも知られないように 大事に育て始めた。
阿修羅と共に戦ってきた私。
阿修羅と共に生きてきた私。
苦しみの根源を、
切り刻んでも 切り刻んでも、
何も変わる事は無く、
息が詰まる程の苦しみは無くならず、
やがて 阿修羅は私に溶け込んで、
私そのものが阿修羅になった。
私そのものが 怒り憎んで戦い続けた。
長い年月が過ぎて 今。
阿修羅は鎮まっている。
戦いに疲れ 苦しみを受け入れて、
大切なものを、
唯 大切にしていれば良かったのか?…と、
大切なものの為に、
戦った事は無駄だったのか?…と、
自問自答して。
私の阿修羅は 消滅してはいない。
鎮まり 眠っている。
まだ 怒り悲しみながら。