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《 片想い 》
灼熱に 体の組織がドロドロに融解して、
唯一残った左の眼球。
私は少しずつ蒸発しながら流れて行く。
日が暮れて、
辿り着いたのは夜の海。
波に浮かび、
その揺らぎに漂うドロドロの私。
ふと 左の眼球で空を見上げれば、
月が微笑む。
ドロドロの肉塊の姿の私を、
ありのまま受けとめて、
静かに 優しく 微笑んでくれた。
左の眼球は 月を見つめて涙に潤う。
そして月に恋をした。
肉塊に半分埋もれながら、
波の揺らぎに合わせて揺らぎ、
私の左の眼球は月を見つめる。
見つめ続ける。
想いを語る口を失ったから、
唯ひたすら月を見つめる。
もう二度と、
夜明けが来ない事を祈りながら。