六淑女ーゼクスドミナ
「みんな、帰ったよ〜‼︎」
城に入るなりモノが大きな声で言う。中も相当の広さがあり、彼女のよく通る声が木霊する。
奥には玉座のようなものがあり、その手前には五人の少女達が待っていた。
「遅かったな、大丈夫だったか?」
そう言うのは篝火の竜人のソーン。背中からは荒々しい翼、頭からは湾曲した角が生え、尾骶骨付近からは尻尾が伸びている。どれも紅く染まっていて、それに加えて長い赤髪に灼眼と、全体的に紅黒い。
「大丈夫そうですよ……ソーンは心配性ですね」
そんな心配をするソーンに、呆れた様子のトレスが答える。
邪眼の蛇女の彼女は、普段は魔眼の暴発を防ぐために目を黒い布で覆い隠している。服装は黒を基調としていて、聖職者やシスターのようだ。蛇女とは言え、外見は普通の人間となんら変わらない。……大きく脚を露出したり、胸がかなりふくよかな点を除けば。
「でも、一番心配してたのは、トレス」
そう指摘するのは魔道機械人のテトラだ。明るい黄色の短髪に黄色い瞳、そして身体のラインがはっきり出るぴっちりとしたボディタイツを身に纏っている。
「皆んな心配するに決まっておろう。これでもし、あるじ殿が生誕されなかったら、わしらの生まれた意味が無くなってしまうのじゃ」
老年のような口調でしゃべるのはフェムだ。彼女の種族は月神狼であり、種族由来でよく鼻と耳が利く。口調とは裏腹に見た目はとても幼く、煌めくショートカットの銀髪にへそ出しのショートパンツと言った服装をしている。
「フェム、滅多なこと言っちゃダメですよぉ」
擬態の蟷螂女のシスがおっとりと注意する。緑髪ツインのお団子ヘアに白と黒のメイド服で、裾は長く手をすっぽりと覆い隠すほどだ。
今、俺の目の前で確かに6人の少女が会話している。NPCのような決められた会話を繰り返すのではなく、意味を持って応答しているんだ。彼女たちは生きてる、そうだ、生きてるんだ……‼︎
これといった目標もなく、ただ同じ毎日を繰り返す現実世界よりもよっぽど楽しい生活が待っている。そんな予感がする。折角のチャンスじゃないか。決めた、俺は彼女たちと共にこの世界を満喫するぞ!
そのためにはまず……
「みんな、集まってくれてありがとう。六淑女の中で、誰か周囲の地形情報は分かるか?」
堂々としよう。俺自身がこのゲームの主人公である「レクス」になりきらなきゃな。
「それなら、先ほど私が周囲を探索してきたよ」
ソーンには竜翼が生えているため、モノほどではないとはいえ十分な飛行能力を有している。
「分かった、結果は?」
「周囲1キロほどに草原が、その先2キロほどに森林が広がっているみたいだ。人工物は見当たらなかったよ」
なるほど、人工物は無しか……この世界の住人と接触したかったが仕方がない。むしろ安全なのは利点ともいえるか?
「なら、これからの行動について話したい。まず初めに……」
と、言いかけたところでフェムが待ったをかける。
「待たれ、あるじ殿。人間のにおいがしてきたのじゃ。数は30人ほど、速度からすると馬か何かに乗っておるの」
流石は月神狼、索敵はお手の物だ。
「フェム、人間なのは間違いないか?」
「もちろんじゃ。わしの嗅覚を舐めるでないぞ? あと5分とせずに城門に着くじゃろう」
あと5分か……問題は、敵対勢力なのか、それとも友好勢力なのかだ。もし戦闘になったとき、俺はみんなを守れるのだろうか……?
「悪かった、お前の鼻を信じるよ。全員、念のため戦闘用意。ただし俺が許可するまで相手に危害を加えるのは無しだ。いいな?」
「反抗的だったら食べちゃってもいいですかぁ?」
シスは蟷螂らしい残忍さを持っている。俺が設定したとはいえ、正直こえぇ……なにせ俺も人間なんだよな。
「ダメだ。食料はあとでどうにかするから今回は我慢できるか?」
「ほんとですかぁ? なら今回は我慢しますぅ」
そう言って、長い裾で頭のお団子を撫でている。
「マスター、門、開けとく?」
テトラが尋ねる。彼女の造形魔法で造った建物は彼女の意思で鍵をかけたり門の開閉を行うことが可能だ。
「……いや、俺らの方から出向こう。全員、準備は出来たか?」
各自が小さく頷いた……よし、初めての異世界の住民との接触だ。気張っていこう!
ソーン:イグニスドラゴニュート
少し抜けている部分があるモノをサポートする。
彼女もまたしっかりものであり苦労人。
怒るとそれはそれは怖いらしい。
トレス:イービルアイバジリスク
露出度の高いシスター衣装に身を包む少女。
目を覆う布は魔法によってそう簡単には外れないようになっている。
大人のお姉さん感。
テトラ:マギアエクスマキナ
造形魔法の使い手。
短文や単語で区切って喋る。
冷静だが表情豊かな少女。
フェム:マーナガルム
幼い容姿の獣少女。
しかし口調は老年さながら。
一番のトラブルメーカー。
シス:ミミックエンプーサ
ゴスロリ風の衣装を好む。
人間への残忍さでは六淑女トップ。
彼女も何気に結構なトラブルメーカー。
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