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間話 ある亡霊の遺産

 

 魔族四天王の一角である『創造ノ亡霊』の真価は本体の戦闘能力ではなく摩訶不思議な道具を生み出すことだった。


 魔力を燃料に超常的な力を発揮する道具。すなわち秘奥。それも魔族しか扱えないという制限があるから鹵獲されても他種族が扱えないという安全策まで完備していた。


 のちに性能は比べ物にならないくらい低いが、人間でも扱える魔法道具が生まれるきっかけにもなったが、それはともかくとして。


 亡霊の生み出した道具の中でも絶大な力を発揮するものは七大秘奥と呼ばれていた。


 一つ、あらゆる干渉を透過するよう身体に組み替える秘奥。


 一つ、半径三キロの生命体を内側から(つまり外側に展開するあらゆる防衛策を無視して)焼却する秘奥。


 一つ、竜巻や地震、噴火や津波など自然災害を自在に操る秘奥。


 一つ、座標を連結して惑星の裏側だろうが瞬時に移動可能な秘奥。


 一つ、死以外のあらゆる損傷、病を瞬時に癒す秘奥。


 一つ、対象の神経伝達能力を狂わせて身体を操る秘奥。


 ここまでが勇者パーティーが確認、破壊したもの。

 だけど最後のこれだけは勇者パーティーもその存在すら知らないものだった。



 一つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 通常、生物が完全に死亡すると魂が霧散する。生命の根幹となる魂が失われればどんな魔法でも死者を生き返らせることはできないというのは魔法における絶対的な常識だ。


 だからこの秘奥はまず肉体が死した瞬間に魂を確保する。主人格となる魂の肉体が朽ちようとも、代わりの器となる専用の肉体──『娘』に自身の魔力や魔法、記憶から人格までありとあらゆる情報を刻み込む秘奥なのだ。


 誰の肉体でもいいわけではなく、あくまで専用の肉体が必要だという制限はあるが、その条件さえ達成できれば擬似的な不死に至ることができる。


 それだけの秘奥を隠し持っていながら『創造ノ亡霊』が勇者パーティーに殺されたのは単にその時には完成していなかったからだ。


 作製自体は亡霊が生前に全自動で組み上げるよう調整していたのだが、物理的に作り上げるまで間に合わなかったというわけだ。


『創造ノ亡霊』自体は百年以上前に勇者パーティーによって殺されている。その後、『第七位相聖女』をはじめとした人間たちに多くの亡霊の遺産は破壊されたが、最後の秘奥だけは人間にその存在を知られることなく魔族側が所持しているのだ。


 合わせて魂を受け止めるために必要な器となる『娘』も全自動で作られていたが、その完成は亡霊の死後三日経った時であった。……『娘』が刻み込まれた力を自壊せずに使用できるようになるまで成長するには相応の時間が必要ではあったが。


 また秘奥は魂の全てを刻み込むだけでなく、ある程度刻み込むものを指定することもできる。


 例えば意識や記憶は刻まず、魔力や魔法だけを刻み込むことで魔王の存在は抹消してその力だけを器に注ぎ込むということも。


 ……この仕様に関しては『創造ノ亡霊』と、この秘奥を作り上げるにあたっての協力者にして共犯者である『魅了ノ悪魔』、そしてその部下である認識を希薄化できる魔族の男しか知り得ない。


 悪意ある『計画』は悪魔の十八番だ。


「あっは☆ 魔王の時代はとっくに終わっているのよお。その力『だけ』ワタシが有効活用してやるわあ」

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