表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/115

第四十八話 お出かけでの食べ歩き その十五

 

 王都内に潜む三人の魔族の撃破及び認識を希薄化させる魔族の男の気配が消えたことを第一王子は確認した。


 そういった報告がガルドの耳にはまっている音声伝達用の魔法道具からもたらされた。他ならぬ第一王子ブレアグス=ザクルメリアから。そう、ガルドは決戦を始める前に備えていた。


 初めはわざわざガルドに接触してきた第一王子ブレアグス=ザクルメリアとの情報交換。


『「魅了ノ悪魔」はさっさと撃破したい。だが問題があってな。ようやく使えるようになったあの騎士は民を気にして全力で戦えない可能性がある。いやまあ「魅了ノ悪魔」を王都の外に連れ出す予定ではあるが、王都に潜んでいるだろう部下に暴れるよう命令されたら厄介でな。何か魔族どもが騒ぎを起こす暇もなく撃破するいい方法ないか?』


『王家の秘奥を使えば王都に潜む魔族を探し出すことはできるし、敵が魔族であってもある程度は撃破も可能だ。「相談役(プリンシパリティ)」に相談すれば単なる魔族が相手ならまず負けはないだろう。ただし、敵が分散していたら全部に対応できないかもしれない』


『それならこっちに転移の魔法の使い手がいるから問題ない。連絡用の魔法道具でも用意しておけばそっちで敵の位置を把握・連絡すればいい。必要に応じて転移を使って適切な人員を飛ばせば敵が広範囲に散らばっていても対応は可能なはずだ』


『転移の魔法だと? それは百年以上前に勇者パーティーに協力したとされるあのエルフくらいしか生きた使い手は確認されていないはずだが……お前、何者だ? まさか──』


『何でもいいじゃないか。「魅了ノ悪魔」を撃破してこの国が救われるなら。とにかく今回の作戦に参加するメンバーについてはこっちで用意するから連携して王都内の魔族の撃破よろしくな』


 次にアンジェリカ=ヴァーミリオン公爵令嬢のメイドとの接触。


『どうしてお嬢様に内緒にする必要があるんですか?』


『アンジェリカ=ヴァーミリオン公爵令嬢の魔法は派手すぎるからな。騒ぎを起こさずにケリをつけるには向いていないし、何よりここで恩を売っておけばどこかで利益に変えられるかもだし?』


『断ります。私はお嬢様のメイドです。お嬢様の不利益に繋がるようなことは──』


『ちなみに作戦決行予定日は明日。つまりおたくのお嬢様とシャルちゃんのデート日だったりするんだが、それでも断るのか?』


『貴様』


『はっはっ。そう怒るな。お詫びといってはなんだが、かつて「白百合の勇者」が生み出した二振りのナイフをやるからよ。ドヴェルグの技術を模倣して使った超振動魔刃? とにかく並の魔族なら一刀両断できる優れものだ。これを()()()()()()()()()()()()()が使えば魔族の一匹や二匹は余裕だから、安心してお嬢様のために戦ってくれ』


『……ッ。何をどこまで知っているんですか?』


『少なくともまだ人間の範疇のメイドさんが知っていることくらいは全部的な?』


『チッ、嫌味ったらしい言葉ですね。まあいいです。ただしこれだけは肝に銘じておいてください。お嬢様とシャルリア様のデートの邪魔をしたら承知しないですから』


『それは大丈夫だって。シャルちゃんたちは何が起こっていたか気づくこともなくうきうき幸せ気分で一日を終えられるからさ』


 最後にシャルリアの父親に。


『騎士崩れの料理人。明日決戦だからよろしくな。あ、わざわざ説得する必要はあるか?』


『明日……はぁ。くだらない小細工だが、乗ってやる。ただしこれで終わらせろ』


『もちろん。そのために馬鹿みたいに奔走したんだしな』


 そして。

 ガルドは言い放つ。



「なあ。まさかとは思うが、この俺がそんな『命令』に備えていないとでも思ったか?」



 王都では未だ住民の犠牲者はゼロだ。

 皆殺しという『命令』は果たされていない。


『轟剣の女騎士』が駆けつけなくとも、守り抜くことはできた。


 だから。


「後ろは気にするな。見ての通り悲劇なんて一つも起きやしない。だからお前は『魅了ノ悪魔』をぶった斬ることだけ考えろ」


「相変わらず人をいいように転がしてドヤ顔しているでありますか。だけど、まあ、それで無辜の民が救われるなら私も含めて転がってやるであります」


 ナタリー=グレイローズが剣を構える。

『大罪の領域』。『魅了ノ悪魔』の全力全開はもう彼女によって破られている。ならば後は消化試合だ。両者がぶつかれば、必然的にナタリーが勝つのだから。


 そのはずだった。



 バヂィッ!! とクルフィアの艶かしい腕に迸るは雷。

 それは『雷ノ巨人』の冠たる魔法だった。



「それは……まさか『雷ノ巨人』を喰ったのか?」


「逆に聞くけどお、そのくらい予測してなかったわけえ? シャルリアちゃんたちによって『雷ノ巨人』は倒されたあ、だから悪魔固有の魂喰いによって()()()()()()()()()()()()()ことはないって楽観視していたとかあ? だとしたらちょっとばかり平和ボケしすぎじゃない?」


『魅了ノ悪魔』クルフィア=A=ルナティリスの全力は破られた。だがサキュバスとしての全力はまだ出し切ってはいない。


「あっは☆ ここからが本番だよねえ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ