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間話 ある女悪魔の情報共有

 

 ──だから『白百合の勇者』シャルティリア=バルスフィアはこの世界の法則に縛られないってわけねえ。


 次に『第七位相聖女』。

 名をミラユルちゃん。


 穢れを知らない聖職者あ、って澄ましていながら意外と色欲に興味があるギャップがたまらないよねえ!! まあ誰もミラユルちゃんを押し倒すまではいけなかったけどねえ!! やっぱりハーレムはだめねえ、互いに互いの足を引っ張って結局ぐだぐだになっていたしい!! もう全員で背徳極めて絡み合えばいいのにい!!


 ごほん。ええっとお、ミラユルちゃんの能力ねえ。

 あの子は『初代』曰く九階級における第七位()()()()()()()天使やらあ、あるいは九姉妹の七女である『瞳の奥に潜む聖なる存在』の力を借り受けてえ、治癒や浄化あ、何より魔法の中でも超希少で超強力な空間系統魔法の中でも最高峰といえる封印まで扱っていたわねえ。


 つまりミラユルちゃんは『大罪の領域』と同じく空間に干渉してえ、この世界とは隔絶された自身に都合の良い領域を構築できるってことお。対象の時間さえも止めて活動を封じる封印なんかはその最たるものよねえ。『雷ノ巨人』であっても弱らせれば封殺できたって事実がその力の規格外っぷりを示しているわよお。


 そしてえ、もう一つ忘れてはならないのが『魂魄燃焼(ブレイクオーバー)』。魔力の源である魂を再生不可能なまでに消費してえ、魔法の威力はもちろん『できること』の幅さえも広げて本人も想像していなかったほどに広域の力を発揮する奥の手を()()()()()()()()()()のよねえ。


『瞳の奥に潜む聖なる存在』とやらの力を現世に出力しているだけでえ、ミラユルちゃん自身の力はそこらの人間と大差ないんだけどお、結果としてメチャクチャ強いのは変わらないよねえ。


 まあ、あの子はすでに死んでいるから警戒する必要はないけどねえ。『瞳の奥に潜む聖なる存在』が人間に力を貸し与える展開い、つまり『位相聖女』の再誕だけは警戒しておくようにい。『魂魄燃焼(ブレイクオーバー)』を授けるくらいはどの『位相』の聖女でも可能みたいだしい。


 次に『轟剣の女騎士』。

 名をナタリー=グレイローズちゃん。


 かつては栄えていたけど今はカチンコチンな北の大国のお姫ちゃんに身も心も捧げた女騎士よお。あ ミラユルちゃんや転移の魔法なんかで勇者パーティーを支援していた『あのエルフ』う、そして『あのエルフ』を囲い込もうとしていたお姫ちゃんとのドロドロっぷりは最高に尊かったよねえ。思い出しただけで蕩けちゃいそう☆


 でえ、ええっとお、まあこの女騎士は単純な物理特化よお。ただしい、『創造ノ亡霊』の七大秘奥の一つである物理的干渉を無効化するう、つまり透過を施して決してダメージを受けないというオモチャを力づくでねじ伏せるだけの脳筋だけどねえ。


 炎は水で消せるけどお、山火事をコップ一杯の水で消すことはできないってことねえ。あまりにも突き抜けた力は時に相性さえも凌駕するってことお。それにしても無茶苦茶ではあったけどねえ。『白百合の勇者』というだけあってシャルティリアちゃんは人間の中では飛び抜けていたけどお、それに唯一ついていけていたくらいだしい。


 最後に『無名の冒険者』。

 名をガルズフォード。


 ランクこそ低かったはずがあ、気がつけば勇者パーティーの一員として並び立つほどの活躍をした冒険者あ。ゆえに無名という冠がくっついているう……というのが人間社会でのガルズフォードの扱いよねえ。


 人間限定だけど心の中を見通す『心眼』や殺した相手の数や質によって自身の能力を上昇させる『能力向上(レベルアップ)』といった魔法だとしても既存の法則から大きく逸れた力を持っているのもそうだけどお、何より魔族固有の高い身体能力や長い寿命の持ち主なのよねえ。


 この男はみんなも知っての通り()()()()よお。魔族でありながら人間側に寝返ったクソ野郎う。この男がいなければ先の戦争の勝敗だってまた違ったかもねえ。他人を利用して自分の利益に変える小細工がお得意なんだしい。


 どんな犠牲を払ってでもあの野郎だけは殺してやる。

 絶対に。


 あっは☆ なんちゃってえ☆☆☆ チョロっと真面目な感じ出しちゃったあ。


 とにかくこれが勇者パーティーの全容かなあ。あくまでワタシが知る中ではあるけどお、共有しておいて損はないよねえ。



 ーーー☆ーーー



 ある女記者の手記にはこのような記載があった。


 例えばクルーン伯爵家の長男の落雷による感電死。

 例えばスカレルア商会の会長の事故死。

 例えばラグア侯爵家の当主を『愛人』が殺害。

 例えば近衛騎士団副団長の自殺。

 例えばレイ=ラスメリク法務大臣の病死……という記載が。


 ──『不慮の事故』ほど露骨ではない、自然な形を装った暗殺。その中で落雷や『愛人』を使った殺しは『雷ノ巨人』や『魅了ノ悪魔』の仕業と見て間違いないだろう。


 では、残り三つは?

 つまりはこの国を脅かす『勢力』に属する者は四天王だけにあらず。



 一つ、自殺という形を装うだけの力を持つその魔族。


 一つ、事故死までもっていくことができるだけの力を持つその魔族。


 一つ、病気という死因を仕込むことができるだけの力を持つその魔族。



 この国に蔓延る『勢力』の中にはまだこれだけの戦力が残っている。


『魅了ノ悪魔』の配下たる三の魔族。

 そして印象に残らない顔立ちの魔族の男。


 彼らは『魅了ノ悪魔』の言葉を思い返していた。


『とまあ、長々と語ったけどお、勇者パーティーはあくまで百年以上前の金字塔よお。それだけが人間の本領とは限らないからあ、足元を掬われないよう警戒は怠らないようにねえ』


 その上で彼らは『計画』の通りに動く。

 今度こそ勝つために。

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