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???話 その四 海と水着回

 

 夏の長期休暇、()()()()

 そこに至る、どこかの未来。


 突然だが、水着回ったら水着回であった。


 光によって解放された北の大国は海に面している。

 そして解放してから日が経っていないので遊楽のための浜辺にはまだ人が集まっていない。



 というわけで()()()()()()()()()──エルフの長老の娘アリスフォリア=ファンツゥーズの転移の魔法によって店員の少女たちは海水浴にやってきていた。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけでなく『アン』に扮したアンジェリカやそのメイド。


 つまりは小さな飲み屋で出会った常連たちが、だ。


『あっは☆ 海とくれば百合イベント待ったなしよねえ!!』


 ()()()()()()()()()()()()、つまりは『魅了ノ悪魔』クルフィア=A=ルナティリスが水着と言わずただでさえ布面積の少ない衣服を脱ぎ捨て──


『色々と台無しになるのでやめてください』


『ああっ!? 何で邪魔するのよメイドお!?』


 ──る前にアンジェリカのメイド(メイド服水着バージョン)が止めたり。


『アリスフォリア』


『そんなに睨んで怖いっしょー。まあ、あーしだって最後までミラユルちゃんが一途に想っていたナタリーのことは大嫌いだけど?』


『はぁ?』


『あぁん?』


 あるいは()()()()()()()()()()()()『轟剣の女騎士』ナタリー=グレイローズ(ビキニアーマー装備)とアリスフォリア=ファンツゥーズ(エルフの伝統水着という名の葉っぱオンリーに炎のように輝く黄金の首飾り装備)がバチバチだったり。


『はふう……アリスちゃん、ほしい……』


 会話が聞こえないほど遠くから水着姿のアリスフォリアに見惚れる()()()()()()()()()()()()()()()()()というか北の大国の姫であるリアルル=スノーホワイト(淡い蒼のモノキニ装備)だったり。


 各々が楽しんでいた。

 海とかガン無視ではあったが。


 あくまでメインは海ではなく水着なので仕方ないのだ!!


『うん、みんな楽しんでいるみたいだね。うんうん、私は何も見なかった。見なかったからね!!』


 全力で目を逸らしている店員の少女。

『アン』に扮したアンジェリカとしては興味ないので勝手にやっていてくれればいいといった感じであった。そのための犠牲としてメイドを連れてきたまであるのだから。


 予定通りメイドの犠牲で店員の少女と二人きりになれた。

 というわけで改めてアンジェリカは店員の少女に視線を向ける。


 白を基調としたドレスタイプの水着であった。主張しすぎないふりふりが可愛らしさを強調している。


 普段の活発な店員さんの印象とは少し違っていて、だけどそれは決して解釈違いとまではいかない。これはこれでいいというか、普通に似合っていて見飽きない。


『アンさん。そんなに見つめられると照れるんだけど』


『はっ!? 申し訳ありませんっ。店員さんがあまりにも可愛らしくて、つい』


『ぶっふふ!? かっかわっはっあ!? 私が? ないない、絶対ないって!!』


『いいえ、店員さんは可愛らしいですわ!!!!』


『そんな力説するほど!?』


 もう、と照れ隠しに口を尖らせて呟くシャルリア。

 ドレスタイプの水着でできるだけ体型を誤魔化しているシャルリアと違ってアンジェリカは大胆な黒のビキニタイプであった。


 胸から肌から強調してなお芸術品のような美しささえも感じさせるのはそれだけ内から迸る何かがあるからか。


 高貴にして高慢。

 小さな飲み屋では色々とアレな部分を見せることもあるが、本来のアンジェリカ=ヴァーミリオン公爵令嬢は社交界でも臆することなく己を貫き通すだけの『力』ある人間なのだ。


『アンさんは、とっても綺麗だよ』


『…………、ふ、ふうーん。それは、その、はい』


 そんなアンジェリカが自分の言葉一つでこんなにも動揺して赤くなってまともに返事もできないという事実に思うところがないわけがなかった。


 シャルリアは──



『あっは☆ 波に水着が流されて予期せぬ肌色の流出とかあ、日焼け止めを塗るためにむき出しの背中に手を這わせるとかあ、二人きりで岩陰に隠れて欲望の限りを尽くすとかあ、海といえばヤりたい放題なのにシャルリア×アンジェリカはどうせ進展しないのが目に見えているのよねえ。となればあ、ここはそれとなく誘導して無理やりにでも進展させちゃおうかなあ☆ あァンっ。そんなの遠くから眺めているだけでもぞくぞくするよねえ☆」


『ああもうっこの淫乱空気を読んでください! お嬢様たちは進展しそうでしないじれじれっぷりがいいんですよ!!』


『エルフ風情が姫様に色目を使いやがって。今日こそ息の根を止めてやるであります!!』


『にゃっはっはっ! それはあーしの台詞っしょー。やるってんならエルフの秘術(セイズ)を存分に使って相手してやる!!』



 ドンバンドゴバッコォォォン!!!! と何やら海で水着回だっつってんのに激闘勃発であった。


 話している内容までは魔法がぶつかる轟音で聞こえないが、とにかく色々と台無しだとシャルリアはため息を吐くしかなかった。


『なんでこうなるんだか』


『……いつもこんな感じ、だけど……』


『リアルルさんたちのいつもがこれってどうなっているの?』


 いつのまにか隣まで移動していた『姫様』にそうツッコミを入れるシャルリア。


 平和の象徴・日常まっしぐらな水着回なのにどこぞの巨人との戦闘が霞むくらい荒々しい争いが目の前に広がっていた。仕方ないので止めるために光系統魔法を使おうとして、そういえば今は『店員さん』だということに気づくシャルリア。


『店員さん』が光系統魔法を使えば即座に正体がシャルリアだとバレてしまう。


 となると、


『よし、逃げよう』


 水着回がものの一分で終了した瞬間であった。

 次に海に来るときはせめて泳ぎたいと、切実にそう思った。

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