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信じて、待って、絶望する



アリアドネは賢く、美しく、勤勉で。


公務を真摯に果たし、そしてなにより夫である国王ジョーセフを深く愛していた。


まだ仮初の夫婦だった頃、過労の為か高熱を出して寝込んでしまったジョーセフを、徹夜も厭わずアリアドネ自ら何日も看病する程に。



ジョーセフもまた、そんなアリアドネを大切にし、妃としての支えに感謝した。



けれど、2人は真の意味での夫婦にはなっていなかった。閨を共にはしていなかったのだ。



最初はそれも当然のことと見做された。



正式な結婚が成立した時、ジョーセフは16だったがアリアドネは12。まだ月のものも来ておらず、共寝をする意味がなかったからだ。



けれど、アリアドネが13になって半年ほど過ぎた時、女性としての機能が体に備わったが、それでもジョーセフは彼女と関係を持とうとしなかった。



「アリアドネを大切にしたい。今はまだその時ではない」



ジョーセフはそう言った。



身体の負担になる、心配だ、居てくれるだけでいい。


そんな言葉を告げられる度、自分はジョーセフから大切にされていると心から嬉しく思うと同時に、少し残念に思う気持ちも拭えなかった。



アリアドネは、早く本当の意味で彼の妻になりたかった。


閨の正確な意味を分かってはいなかったけれど、夜も一緒に愛する夫と過ごせるならば、それはなによりも嬉しいと思ったから。



けれど、ジョーセフはいつまで経っても、アリアドネを主寝室に呼ぼうとはしなかった。



14、15の時はまだ周囲が黙っていた。いや、一部で声は出始めていたけれど、妃が若すぎて体に負担だろうと理解を示していた。



けれど、16を過ぎれば訝しむ声の方が大きくなる。

そして、決してアリアドネを寝室に呼ぼうとしない国王の真意を推しはかる声も。



―――アリアドネ正妃では、妻としての役割を果たせないのではないか。


―――このままでは世継ぎは望めないのでは。



当人であるアリアドネもまた、そんな疑いと焦りを抱いたひとりであった。


昔よりもっと、夫婦となる意味について理解したアリアドネは、ジョーセフとの閨を実現する為に何度も夫に近づいては話をした。



それでも、ジョーセフが彼女を主寝室に呼ぶ事はなかった。


アリアドネが意を決して寝室を訪れても、その時はジョーセフの方が姿を見せなかった。



いつしか、ジョーセフはアリアドネと顔を合わせる事すらあからさまに厭うようになり、公務以外では会う機会もなくなっていき。




そうしてアリアドネが18、ジョーセフが22の時。



カレンデュラがジョーセフの前に現れた。



2つ年上のカレンデュラをジョーセフはひと目で気に入り、数か月も経たず彼女を側妃とすると臣下に告げた。



その後、カレンデュラの件は議題として議会に通され、大多数の大臣たちからの賛成票をもって正式に側妃と認められた。


そうして新たな妃として迎えられたカレンデュラは、城に上がったその日からジョーセフの寵愛を受ける。



アリアドネが側妃について知ったのは、可決されてから後、即ちカレンデュラがジョーセフの寝所に入るようになった後だった。



アリアドネは、未だ無垢な身体のまま。



そう、この時アリアドネは、ただ公務執務だけを果たすお飾りの正妃として生きる運命が定まったのだ。









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