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プロローグ
クロイセフ王国の若き国王ジョーセフ・クロイセフは、数段高い王座から正妃アリアドネを冷たく見下ろしていた。
彼女は床に跪かされ、手首には枷がはめられている。
そんな彼女に、ジョーセフは妻に向ける視線とはとても思えない、憎悪に満ちた眼差しを向ける。
無理もない、今、正妃アリアドネは罪を問われているのだ。
国王ジョーセフが寵愛する側妃カレンデュラに毒を盛った犯人として。
頑なに無実を主張する正妃に、ジョーセフは冷たく言い放った。
「精霊の泉に身を投げよ」と。
あまりな命令に、正妃と家臣たちは言葉を失くす。
けれど、国王は意に介することなく更に続けた。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせるがいい」