第6話
ニールside
「ビクともしないだと・・・」
「全然剣が通らない!」
「ダメージを与えれなくとも牽制できればいい」
前衛の騎士たちの叫びだ。
ん? 魔獣の様子がおかしい・・・動きが止まった・・・いや、これは力を溜めている?
「なんだ・・・これはまさか!」
「全員退避!!」
ブレス!・・・魔獣の口から放たれた炎の吐息。
「なっ!・・・何だよ・・それ」
一瞬で魔獣を囲んでいた騎士たちが吹き飛んだ。
騎士だったもの・・・黒焦げになった甲冑だけがその場に残った。
これが魔獣のブレス。何だよそれ、反則じゃないか。
「怯むな! 攻撃を続けろ! こいつが学園の外に出たら大変なことになる。なんとしてもここで仕留めるんだ!」
団長の鼓舞のもと、再度攻撃を再開した騎士たち。
だが皆どこか浮足立っている。
無理もない・・・あんな攻撃がいつくるかも知れないとなると浮足立つのもしょうがない。
「ぐあああぁぁぁ!」
前衛の騎士のひとりが魔獣の爪によりやられた。
まずい! 消耗戦は覚悟していたが、騎士たちの被害の方が多くなってきた。
「グルルルル・・・・」
騎士団による囲みの綻びをついて魔獣が動きだした。
「まずいぞ! 魔獣を逃がすな!」
「このままでは突破されてしまう・・・」
「うわああぁぁ・・・こっちにきたぁぁ!」
「ぎゃああぁ!!」
魔獣が包囲している魔術師隊に襲いかかる魔獣。
近接戦闘が苦手な魔術師隊は、魔獣になす術もなく蹂躙されてしまった。
「魔獣が囲みを突破したぞ!」
「逃がすな! やつは手負いだ。 これ以上被害が出る前に仕留めるのだ!」
「追え! 追うんだ!」
囲みを突破された騎士団が慌てて、逃げた魔獣を追いだした。
俺も後を追うべく、魔獣の逃げた方角に走り出した。
魔獣の向かった方角・・・まずい! たしかこっちは避難場所に指定した講堂のある建物の方角だ。
いつまでも危険な学園内にいるとは限らない。
でもまだ講堂内に残っていたら・・・・
ミューラー殿下、ルシアさん・・・どうか無事でいてください。
ドゴォォン! もの凄い轟音が聞こえてきた。
轟音のもとにその元凶たる魔獣がいた。
魔獣は講堂の壁に体当たりをしていた。
なんだ? なんで魔獣がそんな行動をする必要がある? 逃げるだけならそんなことをする訳がない。
ということは、そこに魔獣を引付ける何かがあるということだ。
何かとは・・・考えたくはないが人・・・それも特定の人物。
魔獣が何かの目的のために召喚されたと仮定して、その目的・・・それはある人物の抹殺。
それだけではないかも知れない。
騒ぎに乗じて別の目的の遂行。
たとえば厳重保管されているマジックアイテムの強奪。
もしくは重要機密の奪取。
最悪の推理だ。
考えるだけでも胸糞が悪くなる。
ヤバい! 壁が壊され魔獣が講堂内に侵入しようとしている。
◇
ルシアside
ドゴォォン! もの凄い音とともに、建物が地震でもあったかのように揺れ動いた。
「きゃああぁぁ!」
「なに? なんなの?」
一緒に避難してきた女性たちがさわぎだした。
ここはニール様の指示のもと避難してきた講堂。
護衛の人もいるし、殿下や教師もいる。
建物も丈夫に作られており、その入り口は厳重に閉ざされいる。
何らかの災害が起きた際には避難する場所になっているため、僅かだか食料も備蓄されている。
ここは学園でも安全な場所のはず・・・。
でも・・・この揺れと音、ただ事ではない。
外では何が起きているの?
しばらくすると破壊音と振動が止んだ。
だがそれも束の間、地鳴りが近づいてくる。
この地鳴り、魔獣がここにやってきたとしか考えれない。
怖い! 考えたくはないがニール様はどうなったの? 魔獣の討伐に失敗したってこと?
ニール様は無事なの?
地鳴りがどんどん近づいてくる。
轟音、そして大きな木製の扉が粉々に砕かれたと思ったら、紫色をした大きな魔獣がその姿を現した。
ルシア
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