第5話
ニールside
殿下とルシアちゃんの前でカッコつけてみたものの、正直いって魔獣は怖い。
訓練で猪など野生の獣や、ゴブリンなどの魔物なら討伐したことはある。だがあの魔獣は別格だ。
ランドガリアン、オオカミと大トカゲを足して割ったような体躯。その外皮は鎧のように硬く剣を通さないと聞く。鋭い爪と牙を持つ獰猛な魔獣だ。
デカい個体は全長5m程になるらしい。
そんな魔獣がなぜ王都に、しかも魔法学園に現れた。
詳細は不明だが、何者かによって連れてこられた? あんな魔獣を捕獲していたと・・・そんなことが可能なのか?
もうひとつの可能性、何者かによって召喚された可能性。
これは禁忌に触れる魔法を使用したことを示す。
可能性としては、後者の方が高いだろう。
禁忌魔法・・・我が国では生贄を触媒に発動する魔法として、道徳的に禁止ている魔法術式だ。
この国で使用する者がいるとは思えない。闇組織もしくは他国の手の者か。
考えているうちに建物を抜け、魔獣がいる校庭に到着した。
「なっ!」
俺が見た光景は、まさに地獄絵図だった。
至る所に転がる生徒の姿。すでに亡くなっている者、まだ息のある者、男女関係なく倒れている。
暴れる魔獣を遠くから攻撃魔法で牽制しつつ、数人の生徒と教師が戦っていた。
あれが魔獣、ランドガリアン・・・紫色の巨大な魔獣だ。まさにオオカミの体にトカゲの顔と尻尾、その体躯は硬い外皮は甲冑鎧のように硬そうだ。
甲殻獣とはよくいったものだな。
魔法や剣は硬い甲殻によって無効化されていて、ほとんどダメージはなさそうだ。
どうする? もう少し粘れば、騎士団も到着して宮廷魔術師もやってくるだろう。
それまでできるだけ被害を出さずに時間稼ぎをすればいい。
なんだ簡単じゃないか。
俺は自分にそう言い聞かせて、身体強化の魔法を使い魔獣目がけて走り出した。
まじかで見た魔獣は予想よりデカかった。
魔獣の注意は別のところにある。側面から攻撃を仕掛けるべく剣を構えて魔獣に駆け寄った。
「どおりゃあぁぁぁぁ!」
全身全霊をかけた渾身の一撃、硬い甲殻を避けて薄い外皮を狙い剣を振り下ろした。
響きわたる金属音。激突の瞬間、俺の両腕がビリビリと震えてくる。
俺の渾身の一撃を受け、血しぶきが飛ぶが致命傷には程遠い。
「なんて硬さだ、甲殻のない場所狙ってこれかよ」
攻撃を仕掛けた次の瞬間、驚愕に引きつることになった。傷を負い憤怒した魔獣が俺に襲い掛かってきたのだ。
鋭い牙と爪の攻撃を素早く後方に飛んで退る。
「あぶねえ・・だが!」
続けざまの斬撃をあびせて、魔獣の注意を俺に引き寄せる。
今だ! 俺が魔獣の注意を引付けることによって、他の攻撃要員がフリーになる。
魔獣に攻撃魔法が降り注ぐ。が、この程度の魔法ではダメージは与えられないのか。
校庭は広い。四方から降り注ぐ攻撃魔法。たとえダメージはなくとも時間稼ぎができればそれでいいのだ。
「くっ・・・騎士団はまだか。魔獣が硬すぎて剣がボロボロに刃こぼれしてきた。身体強化の魔法もいつまで持つか分からない」
俺の他の生徒、教師たちも同じ状態だった。
その時だった校庭の外からドラの音が聞こえてきた。
やっと騎士団が到着したようだ。
「待たせたな騎士の雛たちよ。後は我らレオン王国守護騎士団に任せるがよい」
ふう、なんとか持ちこたえることができた。
「よしっ、包囲陣形で一斉にかかるぞ! 魔術師隊は魔獣の注意を引付けろ。学生たちは負傷者の救助だ」
「今こそ我らレオン王国守護騎士団の力を見せる時だ!! 学園で暴れる魔獣を打ち取るぞ!」
「「応!」」
魔術師隊から放たれた攻撃魔法が魔獣に直撃した轟音とともに、魔獣が悲鳴らしき声をあげた。
さすが国を守る魔術師隊だ。学生たちとはレベルが違う。
「いいぞ!このまま力で押し切れ!」
誰もがこれで魔獣を倒せると思った時だった。
何だ・・・この胸騒ぎは・・・・?
ルシア
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