7.頼もしい側近たちと、睡眠の重要性。
読んでくださっている人が意外と多くてうれしいです。
誤字脱字報告も、大歓迎ですので、どうかよろしくお願いいたします。
「さあ?そこまでは私も存じません。」
もうツッコまないよ・・・。
てか無責任すぎない?
「本人の気持ちは本人にしかわかりませ・・・!」
ん?
リヒトは言葉を途中で止めたうえ、目を大きく見開いている。
彼の目は、一点を見つめている。
私の背後・・・扉か。
バッと振り返ると同時に、そこから歓声が上がった。
「わあっ!ここ、ホントにフィンター様のお城~?可愛い~。」
「すげえ!うわ、リヒトもいる・・・ってか、就寝台にいるのって、トウィンク伯爵じゃねえか!」
「うっそ~!」
「きゃあっ!ホントだ~。」
・・・え?
「ど、どなたでしょうか?」
その集団に向かって声をかけると、そのうちの一人がスッと前に出てきた。
茶髪で茶色の目・・・どこかで見たことがある顔だなあ。
・・・セントだっけ?
「こんにちは。バロンズ家の側近、セントです。えっと・・・ここに集まってる者たちは、さっきの放送を聞いて来た医師免許を持った側近です。」
嘘。
こんなに集まるとは思わなかった。
だって、ざっと見ただけでも100人はいる。
皆が集まってくれたのがうれしいと同時に、ここまでの人数を集められてしまう自分の権力がちょっと怖かったりもした。
「ほら!ボーっとするな。さっさと治療するぞ。」
「「「「「オーッ!」」」」」
老若男女問わず全員で叫んだ頼もしい側近たちは、マスクをつけるとトウィンク伯爵の周りに群がった。
氷枕を首の下に差し込んだり、解熱剤を飲ませたりと忙しそうにしている側近たち。
なのに私は突っ立ったままで見ていることしかできない。
助けたい人も助けられない私は、何のために生かされていたのだろう。
私なんかなんでもいいから。彼を助けて・・・お願い。
「ゴホッゴホッ、ケホッ、う・・・。」
突如、トウィンク伯爵が激しくせき込み始めた。
私は容体の急変に焦って、硬直するものの、側近たちはきびきびと動き出した。
「そこのお前、例のものをトウィンク伯爵に!」
ここで指示しているのは、セントだ。
指を指された、赤髪の青年が、大きいバックからその『例のもの』を取り出す。
彼がトウィンク伯爵の口に取り付けたものを見た私は、めまいがするほど驚いた。
(なんか、驚いてばっかりだな・・・。)
「そ、そこの貴方、それ・・・人工呼吸器よね?」
・・・人工呼吸器。
世界に3つしかないと言われている、高性能な魔術具。
使うのにたいして魔力はいらないが、作るための材料の確保が非常に難しいらしい。
ぱっぱと手際よくそれを付けている側近は、ほんの少しだけ得意そうに唇の端を持ち上げながら、
「私が仕えている伯爵家にあるのです。」
と答えた。
・・・ああそうだ、ここにいる側近たちの主は位が高いものばかり。世界で3つのものなんて、千とあるだろう。
一気に呼吸が楽そうになるトウィンク伯爵をみて、ほっと息をついた。
ギィィィィィィ
「・・・遅れ、ましたっ。ハーリリンで・・・す。」
あ・・・忘れてた、ハーリリン。
めっちゃ功労者なのに・・・ごめん☆
「あ、その顔、忘れてましたよね!?」
・・・図星過ぎて悲しい。
なんで、側近たちはこう、私の考えてることが分かるんだろう・・・。
「フィンター嬢が単純すぎるんですよ。はい、解熱剤・・・って、何なんですかこの人たち!?え、人工呼吸器!?」
そりゃ、驚くわ。
いやここどこ!?家間違えました・・・的な。
「ああ・・・。フィンター嬢が権力を行使して協力を要請し、それに答えた人たち・・・ということですね。」
何故こう、状況を飲み込むのが速いのだろう・・・。
え、私が遅い!?
「じゃあ、私はお役御免ですね。」
フィンターはそう言って、ふぁぁと欠伸をする。
ハーリリンとリヒト、昨日も看病であんまり眠ってないだろうし・・・。
うう、ぐっすり夢の中だった自分が恥ずかしい。
「ハーリリン、リヒト。こっちは大丈夫よ。二人は自分の部屋で寝てきなさい。」
私がそう言ったとたん、リヒトもハーリリンも挨拶もせず、風のごとく部屋の中に帰っていったのであった・・・。
「あぅ。これ私が寝ず番パターン・・・?」
主という立場に甘んじさせてくれない側近たちだなぁ・・・眠。
ブクマ登録、とっても励みになっています。
ちなみに、フィンターの名前の由来はドイツ語で『冬』です。
バロンズ家の名前は、英語で『男爵』という意味です。ストレートすぎるかな?