15.決断を迫られてたのに、いつの間にか友達ができました。
好きな俳優の番組をダビング(ブルーレイに移す作業)をしていたら、盛大にミスりました。
かなり傷ついているので、誤字脱字も多いかもしれません。
報告、お願いします。
・・・確信した。
お義兄様は、この世界の人間ではない。
にわかには信じられない話だけど・・・俗に言う転生者のようなものだろう。
「フィン・・・」
口を開いたハーリリンを手で制して、お義兄様の手を握る。
『はなしてくれて ありがとう』
読み取ったお義兄様は、はにかむように微笑んで、再び踊りの輪に戻っていった。
お義兄様のことだから、私達が困惑していることが分かったのだろう。
その華奢な後姿を見つめながら、ポツンとつぶやく。
「あの人は、どれだけのものを抱えているのでしょう。」
横にいる優秀な二人の側近からの返答はなかった。
その代わり、私に質問が投げかけられる。
「フィンター様。今の話を聞く限りでは、トウィンク伯爵は、自分が転生したことに気が付いていらっしゃらないようでしたが、私達の方からお話するのですか?」
・・・沈黙が落ちた。
ハーリリンも私も、自分の一存では決められないと思ってる。
でも、今決めないと、きっと後悔する。
「わ、わたくしは・・・お義兄様に言いたくないわ。あくまで、感情面での判断よ。決定じゃないわ。」
「・・・私も、フィンター嬢に賛成です。彼がどういうお方なのか確認し、彼の立場を確定させてから話すべきです。」
「・・・トウィンク伯爵が転生者と断定するには、まだ情報が足りません。もしかして、隠し子のようなものがいて、入れ替わっているのかもしれません。」
どこまでいっても、私は私で、ハーリリンはハーリリンで、リヒトはリヒトだった。
私は感情面から意見を述べ、ハーリリンは人間関係の観点でものを言い、リヒトは事実を大切に考える。
でも、皆結論は同じだった。
「ん・・・じゃあ、今はとりあえず話さないということでいいかしら?」
リヒトは即座に跪き、ハーリリンは一拍置いて「はいっ!」と返事をした。
★ ★ ★
「ふあああ~っ、美味しい!さすが伯爵家ね、野菜も肉も新鮮で柔らかいわ。」
例にもれず美味な料理に悶えていると、横から金色の塊が乱入してきた。
何事かと思って目を向けると、薄い水色の瞳と目が合った。
金の塊かと思ったのは、その令嬢の豪奢な髪だったらしい。
「本当に。」
耳を澄まさなければ聞こえないほどの小さい声で、恥じらうように話す。
そんな話し方は、どちらかと言うと伯爵家の令嬢寄りだ。
・・・まあ、私とは真逆だけど。
彼女らは可愛さで攻め、私は圧で攻めるタイプだ。
「あっ・・・申し訳ございません。」
誰に向かって話していたのか気が付いたらしく、首をすくめて目を潤ませる。
その様子は、可愛らしさそのままだ。
「いえ、大丈夫よ。貴方、この家・・・フール家のエレゲンス様よね?」
確か、今日の夜会会場はフール家だと説明を受けた気がする。
肯定するように顔を伏せ、しばらく固まっていたエレゲンス様が、急に顔をあげた。
口を開いては閉じ、開いては閉じの繰り返しだ。
「言いたいことがあるなら言って?」
私の言い方が責めているように感じたのか、焦って口を開いたエレゲンス様が、何度も噛みながら話す。
「その、フィンターさむは、トウィンク伯爵と仲がよろひいんでふ、よね?」
・・・またその話か。
いい加減飽きていた私は、否定することも面倒くさくて、
「ええ。」
と肯定する。
そういった瞬間、水を得た魚のようにぱあああっと顔を輝かせ、
「お話・・・お聞かせ願えますか?」
と次は噛まずに質問してきた。
そんなに可愛い顔で言われて、断れる人がどこにいよう。
あ・・・リヒトとお義兄様なら断れそう。
二人のことを思い出して、自然とほおが緩む。
機嫌がよくなってきたと自覚したので、その子にどんどん話してしまった。
「私もそこまで仲良くはなくて・・・」
「はい。」
「でも寝顔が・・・」
「本当ですか!?」
「それで・・・」
「まさかっ!あの笑顔の裏にそんなことがっ!」
「今日来るときに・・・」
「ああ、あのイケメンの側近さんとトウィンク伯爵のツーショットですか!?」
この会話からわかるように、どんどんエレゲンス様の話す量が多くなっている。
それがうれしくて、どんどん話していたらあっという間に30分がたってしまった。
もう話すこともなくなり、一瞬沈黙が落ちたとき、エレゲンス様の方から提案があった。
「この屋敷で私が大好きな場所があるのですけれど、10分だけ会場を抜け出しませんか」
今や友達の彼女の提案を断る理由などなかった。
満面の笑みで頷き、会場の扉から外に出る。
相当おすすめなのか、心なしか手をつかむ力が強い。
私が痛いよ~と言うと、すぐに離してくれて、すぐに二人で笑いあう。
背後で、重い扉が
バタンッ
と音を立ててしまった。
エレゲンス様の名前の由来は次回。
調べてみたら面白いかもしれませんww