14.疲れた・・・けど、お義兄様の過去はがっつり聞きます!
ほとんどフィンターとトウィンク伯爵の質疑応答です。
長ったらしい文章な癖に、分かりにくい・・・とか思わないでください^^;
「ふあ~っ!」
・・・疲れた。
お義兄様と一緒に来たからか、妙に注目されていつもの倍以上踊ることになった。
勿論、お義兄様はその何倍も踊ってるはずだろうけど。
その証明のように、椅子に腰を掛けたお義兄様は天使もびっくりの美しい顔でスヤスヤ寝息を立てている。
「うう・・・。それにしても、お義兄様は何故、目が見えてないのに踊れて、耳が聞こえてないのにリズムに乗れるんでしょう?それに、いちいち相手の名前を呼んでいましたよね?」
リヒトとハーリリンに投げかけた質問だったのだが、答えたのはお義兄様だった。
いつの間に起きたのか、リヒトに同時通訳をしてもらっていたらしい。
「踊れるのは、相手の魔力の形を意識すれば簡単ですよ。・・・ああ、魔力は血液と同じようなものなので、全身にいきわたってるんです。《さーもぐらふぃー》みたいな感じです。」
さ・・・?なんだって?
お義兄様には珍しく、私の疑問に気が付かなかったのか、そのまま話を進めて行ってしまった。
「リズムに乗れるのは・・・まあ、結局魔力頼りですね。音楽にも、なんにでも魔力はあるんですよ。集中さえすれば、音の高低は分からなくても音の途切れ方や、リズムだけなら分かります。」
はあ・・・魔力って便利だなあ・・・、いいなあ。
まあ、今更魔力へのあこがれを強めたって仕方がないんだけど。
「相手が分かるのは、人それぞれ魔力の質や色が違うからです。」
最後の質問に答え終わって、ちょっと疲れたらしいお義兄様は、再びウトウトし始める。
前までだったら、ここで寝かせちゃうけど、今日はここで引かない。
「ねえ、お義兄様。もう一つ、質問をいいですか?」
通訳をしていたリヒトも、私の敬語に驚いたのか一瞬手を止めたけど、そのまま書き出す。
彼の、一番の謎。
恐らく、お義兄様が一番触れられたくないところ。
そして、私が今、聞かなければならないこと。
「お義兄様は・・・私達と会う前、どんな生活をしていたんですか?」
「待ってください、フィンター嬢。トウィンク伯爵の生活など、分かり切ったことでは・・・!」
そう、お金を食いつぶす娯楽にまみれた男・・・。
私だって、それくらい知ってる。
でも、今の彼は、トウィンク伯爵自身じゃない気がして。
ありえないって頭ではわかってても、どうしても気になった。
迷って迷って・・・結局、聞くことにしたのだ。
「あー、私の過去ということですね。分かりました。」
・・・ん?以外とあっさりOKされちゃった!?
もっと渋られると思ったんだけど。
「長くなりますけど。」
★ ★ ★
「私は、《カンリョウ》でした。」
いきなり、分からないワードが飛び込んできた。
でも、以前お義兄様が口にしていた言葉だ。
『カンリョウ って なに?』
「あー、簡単に言うと国のお金の使い方の案や、国を動かす方法の案、国の決まりの案を考える役職ですね。試験を経て、仕事に就くことができます。」
・・・だそうだ。
「国民のために働くのは、働き甲斐があって楽しかったのですが、官僚になって1年、仕事中に倒れてしまったんでよね。」
・・・!?
倒れるなんて・・・若い彼には、荷が重すぎたのだろうか。
「しばらく体調を崩して、食事がとれなくなりました。食べても、吐くだけだったので。」
ああ、これが彼の拒食症の原因か。
今まで疑問に思っていたこと1つ1つが紐解かれていく気がする。
「1か月後に復帰したころには、同僚に驚かれるほど瘦せてしまって。でもまあ、仕事はちゃんとこなしました。・・・お分かりでしょうが、食事をできない状態で働いていては、結果が目に見えているでしょう。」
ああ・・・そりゃ、今の話の流れ的に・・・。
私の感情を読み取ったお義兄様が、首を少しかしげて答える。
「はい、勿論倒れました。・・・仕事の帰り道に。」
他人のことのように自分の過去を話すお義兄様が、少し怖い。
でも、私達は彼の細い声に必死に耳を傾けた。
「起きたら、視界も音も変で・・・。氷を通してみているかのように辺りはぼんやりしていて、聞こえてくる音も音声として聞き取れませんでした。」
切なそうに、彼がほほ笑む。
彼のどの表情も好きだが、この顔は嫌いだ・・・と思った。
「しばらくボーっとしてたんですが、夜になったら急に、行かなきゃ・・・と思って、気がついたらバロンズ家の前にいて。頭が妙に重かったのですが、とにかく扉まで行こうと思って再び歩いた瞬間・・・」
そこからは分かる。
私が知っているのは、それからだから。
暗黙の了解で、話を止めたお義兄様が次に放った言葉は、
「これくらいですね。」
だった。
官僚の仕事は、現実世界の言葉で言うと、予算案・政策案・法律案の制定などだそうです。