13.夜会会場についた!お義兄様がみんなの前で、あのことを公表する!
湿気が気持ち悪いですね~。
こんばんは(おはようございます、こんにちは)、たー兄です。
初投稿からそろそろ1カ月たつ頃ですが、飽きずに読んでくださってる方、ありがとうございます。
至らない私ですが、これからもよろしくお願い致します。
私とお義兄様が会場に入った時の、皆さんの反応はそれぞれだった。
何故この二人が?と瞬く者もいれば、本当にトウィンク伯爵?と首をひねる者もいて、とにかくトウィンク伯爵の麗しさに頬を染める人もいる。
圧倒的に後者が多いようだけど(もちろん男女関係なく)。
「これはこれは、フィンター様にトウィンク伯爵。」
誰も近づいてこない中で、初めに声をかけてきたのは、この城の持ち主、ベニュー伯爵だった。
中年太りに、微妙に残っている毛、いやらしく細められた目。
ザ・中年と言わんばかりのオジサンっぷりだ。
「お二人で入場とは、随分仲のよろしいようで。」
そこまで言ってから、トウィンク伯爵の横にいるリヒトに気づいたらしい。
さっきからトウィンク伯爵の手を包み込みながら、何やらしているリヒトに違和感を覚えるのも無理はない。
「・・・えっと、そこの側近は何を?」
もっともな疑問を口にしながら、改めて私達の姿をじっと見る。
瞳の色は水色と深紅で、真反対。
髪の色も、全く反対とは言えないが、合う色でもない。
それでも、服は紫でそろえている。
・・・傍から見れば奇妙だけど仲のいいペアみたいに見られてるんだろうな。
「・・・それは私からお答えしましょう、ベニュー伯爵。」
こちらサイドからの、初めての発言だった。
私が混ざれる会話ではないと察して、一歩後ろに下がる。
『拡声』
今や聞きなれたその魔法を使い、社交用の話し方ですらすらと話し始める・・・かと思いきや。
貴族にありがちな、冒頭で力んで、語尾が消える話し方ではなかった。
最初っから最後まで聞き取りやすくて、話がすんなりと頭に入ってくる。
まるで、国の政治にかかわる者のような口調だ。
これが、彼特有の話し方なのかもしれない。
少しずつだけどお義兄様のことが分かっていくことに、喜びを隠せない。
「お久しぶりです。先日は、私の不手際で夜会の会場が変更されてしまい、皆さんに大変なご迷惑をおかけしました。」
その一言に、周囲の人がいえいえ!というように首を横に振る。
勿論、私もその一人だ。
「本日は、この場をお借りして、皆さんにお伝えしたいことがあります。」
いきなりトーンが落ちた話し方に、会場の空気が一気に重くなるのが肌で分かる。
「私は、聴覚及び視覚を失いました。」
ざわざわした会場では、数人の令嬢が倒れ伏すのが分かった。
お義兄様も魔力の流れでそれが分かったのか、その数人を浮遊させて、自分の側近たちに託した。
今話した内容だけを考えると、とてもじゃないがそんなことをできるようには思えないが、できてしまうのがお義兄様なのだ。
「皆様にも、様々なことで助けていただくと存じます。至らない私ですが、どうか今まで通り接していただけると幸いです。・・・私からの話は、以上となります。」
会場の空気が完全によどんでいる。
ほとんどの人が、苦痛に耐えているような顔をしている中で、数人はパチパチと瞬きをしていた。
・・・そりゃそうだ、つい先日まで頭がお花畑みたいだったトウィンク伯爵が、いきなり国の政治にかかわっている者ように話すのだから。
私自身、少し信じられないところもあるけれど、悪い方向に傾いたのではなく、圧倒的にいい方向に傾いたので、よかったと思っている。
「はあ~。どうでしたか、フィンター。しっかり言えてました?」
さっきまでの、壁から聞こえてくるような音声じゃなく、目の前の彼の口から聞こえてくることに、わずかに安堵した。
・・・何故だろう。
お義兄様が、遠くに行ったようで怖かったのだろうか。別に、お義兄様は私のものじゃないのに。
私が黙っていたからか、私を探し当てて頬に触れてきた。
でも、私の感情がどういった経緯で浮かんだのかはわからなかったらしい。
諦めたように手を下したかと思うと、いきなり抱きついて来た。
「わあああっ!お義兄様、ここではやめてください!」
彼は、私の気持ちに気づいているだろうが、一向に力を緩めない。
・・・さっきの話で注目の的なの、お義兄様自覚してます!?
しばらく慌てていたけど、観念して抱き返す。
勿論、「しっかり言えてたよ。」という思いを込めて。
日本は秋に入って涼しくなってきましたが、この二人はアツアツです。