12.お義兄様への疑いと、リヒトの意外な一面。
いつもより遅くなってすみません。
あの・・・本当に誤字脱字が心配なので、気づいたら速攻報告ください。
「あの・・・私は、参加したいと思います。その・・・夜会に。」
なんと、本人からの了承を得ることができた。
なら、躊躇する理由がない。
「じゃあ、今晩一緒に行く?」
私がそう言った時の、お義兄様の顔が忘れられない。
いつもの無表情を保ちながらも、目じりを赤く染めはにかむように笑うあの顔が。
ありえないほど可愛いのだ。
こんなにかっこいいお義兄様を可愛い、なんて言うのは失礼かもしれないのが、とにかく可愛い。
・・・完全にブラコンじゃないか、私!
「フィンターがよろしいのでしたら、喜んで。」
★ ★ ★
『おにいさま やかいは なんどめ?』
社交界デビューで衝撃的なニュースが走ったけれど、夜会に出席した具体的な回数は聞いたことがない。
軽い気持ちで聞いてみたものの、その後のお義兄様の様子を見て後悔する。
「ん・・・と、申し訳ございません。分からないと思います。」
本当に申し訳なさそうに眉をひそめて謝罪してくるから、こっちが謝りたくなった。
・・・お義兄様は謝ってばかりだな。
それにしても、ご両親のことと言い、今回のことと言いお義兄様は覚えていないことが多すぎる。
と、いうより・・・もしかして知らないのかもしれない。
ありえない発想だということは分かっているけれど、彼のことを知れば知るほど、トウィンク伯爵だとは思えなくなってくる。
「それよりも、この衣装、リヒトに教えてもらっただけですが、随分と女性らしいのでは?」
彼の服は、着物をワンピースやドレスのようにアレンジしたものだ。
確かに、菫色の服、赤い実をつけた植物の刺繡、帯は緑、襟は青・・・と比較的可愛らしい服になっている。
しかし!
「お義兄様!服に女性らしいも何もないよ!それを決めるのがおかしい!」
・・・決め台詞を言ってから気が付いた。
お義兄様には聞こえてないんだったよ~っ!
「あ、大丈夫ですよ。リヒトに通訳してもらっています。」
心読まれたよ・・・というか感情か。
しかし、これはどういう状況だろう。
目の前に座る麗しいお義兄様の横にはイケメンのリヒトがいて、馬車を操っているのは美人のハーリリン。
美男美女多くない!?この3人の横にいていいのか、私!?
「・・・話を戻しますけど、確かにそうですね。申し訳ございません、私が間違っていました。服を女性らしいとか男性らしいとか言うのはおかしいですね。」
のおおおおおおおおっ!
図らずとも、謝らせてしまったよ!
この短時間で2回も・・・未熟すぎるよ、私~。
でも、考えを理解してくれたのは嬉しい。
「あと、質問なんですけれど・・・。」
はい?
「今、仕事は休暇なのでしょうか・・・?」
ん?伯爵家の私達にとって、仕事は夜会なんだけど・・・。
すごい伯爵では、国の政治にかかわってたりするけど、我が家はただ単なる税金の金食い虫だ。
いや、待てよ・・・?トウィンク伯爵は、そのすごい伯爵なのかも・・・?
・・・違う。この人も、ただ顔と声がいいだけで、脳内はお花畑で能力も何もない・・・との噂だった。
だとすると、やはり仕事は夜会だけのはずだ。
「お義兄様、私達の仕事は夜会だよ?」
その返答に、お義兄様は目を瞬いたけれど、私が困っていることが分かったのか、すぐに切り替えた。
素の微笑みではなく、偽りの微笑みを顔に浮かべたお義兄様は、視線をさまよわせ、最終的に窓の外に向ける。
いや・・・何も見えてないでしょう!
まあ・・・それは置いといて。
お義兄様は本当に、ここの人間ではないのかもしれない。
お義兄様本人に聞いてみるか・・・な?
「・・・( ˘ω˘)スヤァ」
って寝てるし!
今日はお昼に寝てなかったから、お昼ご飯の代わりの睡眠かな。
さっきまで偽りの微笑みを浮かべていたとは思えないほどの、無邪気で無防備な寝顔。
この寝顔を見られるのが限られた人間のみだと思うと、果てしないほどの優越感に浸ることができたが、再び発せられた寝言に、リヒトとともに顔を曇らせた。
「う・・・ん。お詫びの言葉も、ござ・・・いません。」
この言葉の後、しばらく沈黙が落ちたが、思い切って破ってみた。
「リヒト。わたくしの計画に付き合っていただけませんか?」
「計画・・・と言うと?」
「題して・・・『お義兄様に謝らせない大作戦』です!」
自信をもって言った後、リヒトの異変に気が付いた。
肩が小刻みに震え、時折空気を求めるように動く。
「は・・・wwえ?ww大作戦とかって、ネーミングが幼稚園児レベルww無理・・・我慢できなww」
そういったかと思うと、声をあげて笑い出した。
長い、長い笑いだった。
こっちが呆れるくらいの。
・・・笑い虫かってんじゃないの、この人。
「スーッハーッ・・・wwそうですね、トウィンク伯爵は、謝りすぎだとは思いますwwはい、協力はしますよ、勿論ww」
協力してくれるのは嬉しいけど、いちいち『ww』はさんでくるの止めて?
知らなかった、ここまでリヒトが爆笑キャラだったなんて。
「・・・絶対ですよ!?」
「はい、はい・・・ww」
「はいは1回!」
「はい・・・ww」
・・・ダメだ。
会話が成立してない。
なーんて話をしている間に、今日の会場にたどり着いた。
お義兄様の肩を持ち、激しくゆすると、ゆっくりと深紅の目が姿を現しだした。
「ん・・・おはよ。」
寝起きのトウィンク伯爵が可愛すぎる件