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【おまけ編】リヒトとハーリリンの出会い(ハーリリン視点)

今回初の、フィンター以外の視点です!

トウィンク伯爵が容体が安定した日の夜の話。



「元フリー側近のリヒトです。これからは、よろしくお願いいたします。」

 柔らかい低音ボイスが私の耳に入り込んでくる。

 う・・・なんてカッコいい人なのでしょう。

 トウィンク伯爵も次元が違うほどのイケメンでしたが、目の前にいる彼もなかなかの美男です。

 サラサラの黒髪に、シトリンのような金色の目が映えています。


「フィンター嬢の側近、ハーリリン・・・です。」

 やだ、いつもならスラスラ言えるはずの言葉に詰まってしまいました。

 私としたことが、どうしたのでしょう。

「あ、敬語じゃなくていいですよ。」

 敬語の貴方が言います?

 フィンター嬢や伯爵には、あっさりと言える一言。

 なのに、胸の塊に突っかかる。

 ・・・もう!しっかりしなさい、ハーリリン!

「はい。・・・リヒト、さんも敬語はやめてく・・・れる?」

 俗に言う『タメ口』とは、ここまで難しいものなのでしょうか。

 使いこなしている市民の皆さんを尊敬いたします。

「ああ。」

 ああ?ああ!?

 形のいいその唇から流れ出るその返答は反則ではありませんか!?


「呼び方も、『リヒトさん』だと固いよ。ほかの呼び方で呼んでよ。」

「た、例えば?」

「え?今まであだ名で呼ばれたことないから分かんないよ。」

「・・・!?えっと・・・リ、リリリリ・・・」

「なんの呼び出し音?ww」

「ひ、ひどい・・・。」

「リー君?」

「カレカノかww」

 ・・・それは思いましたよ。

 君付けは提案するべきではありませんでした。

 失笑されて終わりかと思ったけど、その次に耳に入ってきたのは意外な一言だった。

「ん、いいよ?僕もハーリリンさんのことをあだ名で呼びたいです。」

 呼んでもいいですか、じゃなくて呼びたいですって、断る余地がないではありませんか!

「はい。何でもいいでス。」

 ・・・声が裏返ってしまいました。

 恥ずかしいです。

 『穴があったら入りたい』とはまさにこのこと! 


「可愛いww・・・う~ん、リーリンとか?」

 ちょっ、リー君とリーリンって、ホントにカップルみたいではないですか!

 彼には羞恥心というものがないのでしょうか!?

「まあ、いいや。リーリン疲れてるでしょ?もう寝てきな。」

 なっ・・・貴方だって昨日一睡もしてない癖に!

「リー君も休んで!」

「二人一緒に寝るわけにはいかないだろ?僕は、大丈夫。」

「駄目!」

 今回一番の功労者はリー君と言っても過言ではないのです。

 そんな彼が、ホントは一番寝るべきなのです!


「私が、トウィンク伯爵につきますから!」

 伯爵もフィンター嬢も健康体そのものなので、ずっとそばについておく必要はない。

 『奥様』がいるところには誰も立ち入らない。

 だから、普段なら二人同時に眠れるのですが、まだトウィンク伯爵の体調が不安定なのでどちらかがそばについていないといけないのです。


「でも・・・リーリン、医師免許(メディカルライセンス)持ってないじゃん。」

 ぐっ。

 核心を突かれました。

 けがも病気も、一度もしたことがない人たちしかいないこの家に仕えている私は、医師免許(メディカルライセンス)を取得する必要がなかったのです。

「いいよ。僕が側につく。」

 そう言われると、引き下がるしかないのです。

 仕方なく、自室に下がりました。

      ★ ★ ★

 ガチャ

 ギィィィィィィ

 リー君とトウィンク伯爵の様子が気になって、つい夜中に来てしまいました。

 これは失礼に当たらないのでしょうか。不安です。


 足音を立てずに、そーっと入ると、まず長い銀髪が就寝台から零れ落ちているのが見えました。

 あれが、トウィンク伯爵の髪でしょう。

 さらに近寄ってみると、トウィンク伯爵の上に誰かが覆いかぶさっています。

「リー君?」

 顔を近づけてみると、スーッスーッと規則正しい寝息が聞こえてきました。

 一瞬、倒れているのかと思いましたが、どうやら寝ているだけのようです。

 動かしたら起こしてしまいます。

 近くにあった毛布をひっつかんで彼の肩に掛けました。

 就寝台の横の椅子に腰かけて、しばらくお二人の寝顔を見つめます。


 トウィンク伯爵は、時折眉間に皺を寄せ、寝言を呟いています。

 内容は、

「申し訳ございません。」

「今すぐ修正いたします。」

「そのようなことはございません。」

「おっしゃる通りでございます。」

 といったものでした。

 相当、苦しい日々を送ってきたのでしょう。

 聞いているこっちが、悲しくなるような言葉の数々でした。


 一方、リー君は安らかな寝顔でほほ笑んでいます。

 綺麗な金色の目は隠されていますが、私の心はざわざわします。

 私は、この気持ちがどういうものか気づかないほど子供ではありませんでした。

「リー君、ごめんね。私、リー君のこと好きになっちゃったみたい。」

 彼の白い頬に唇を落とし、立ち上がると急いで部屋を出ました。

 きゃあっ・・・!

 これほど恥ずかしいことなのですね、キスって・・・。

 

 焦っていた私は気が付きませんでした。

 そのころ目をぱちっと開けたリー君が、

「あかん・・・。可愛すぎるww」

 と呟いていたなんて。

リヒトが意外と笑うタイプで面白い。


次回の投稿は、10月6日となります。

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― 新着の感想 ―
[一言] あかん…イケメンの関西弁好きすぎる… リヒトも尊いんだよなぁ。 リー君&リーリンのペアもけっこう推してます! 今回もありがとうございました!
[一言] リヒトめっちゃ笑うやん。 リヒトってハーリリンに一目惚れでもしたんですか? リーリンとリー君がくっつきますように… てかハーリリン、フィンターっぽいね。
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