8.トウィンク伯爵との朝食・・・からの会話。
トウィンク伯爵が起きました!
爽やかな朝かと思いきや、重い朝になりそうです。
あれから1週間。
トウィンク伯爵は、3日目に再び目を覚まし、とりあえず自分の置かれた状況を把握したらしい。
あー、耳も聞こえないし目も見えないのに、なぜ状況を把握できたかって?
それは勿論、私の優秀な側近たちのおかげです!
トウィンク伯爵の手に文字を書き込むという、天才的な方法(原始的とも言える)を考え出したのです!
「フィンター嬢?一人で何をぶつぶつ言っているのです?・・・ああ、トウィンク伯爵がお呼びですよ。」
就寝台の上の私をいぶかしげに見つめるハーリリン、今日も美しい!
というより尊い!可愛い!
神と比べるのがハーリリンに失礼なほど、ハーリリンは麗しく神秘的だ。
と、ハーリリン狂信者みたいなことを考えているとはつゆ知らない本人は、ぱっぱと私を着替えさせると、そのまま廊下に出た。
そして、私を促すように手を動かしている。
あれ・・・?
「ハーリリン、わたくし、まだ朝食を食べていないわよ?」
普段なら、起きて着替えた後はすぐに朝食なのだ。
・・・勿論、自室で。
なのに何故!今日は朝食抜きですか!?
またまた考えていることが顔に出ていたのか、ハーリリンは呆れたように首を横に振る。
「心配しなくても大丈夫ですよ。・・・トウィンク伯爵がお呼びなのは、朝食を一緒に食べたいということですから。」
ああ・・・そういうこと。
やだ、トウィンク伯爵がかわいい。
★ ★ ★
「すみません。朝なのに、わがままを言ってしまって・・・ケホッ。」
いまだかすれた声で話すが、超絶イケメンなこの人こそ、トウィンク伯爵だ。
銀色の髪、血のような深紅の目、日差しを知らない真っ白の肌、低い声・・・完璧じゃん!
ねえ、私の周りが美男美女過ぎるんだけど~!
何はともあれ席につくと、リヒトが料理を運んでくれる。
新しい景色だ。
「フィンター嬢、前菜でございます。」
・・・またコース料理か。
ガーっと出てきたものを、バーッと食べたいのに・・・。
ちなみに、この要望は30回ほど言ったが、ハーリリンは全く取り合ってくれなかった。
目の前にフォークとナイフとともに置かれるサラダを見て、はたと気が付いた。
「あら?ハーリリン、トウィンク伯爵にはしっかりと食事を差し上げてと言ったはずよね?」
そう、トウィンク伯爵の前には何も置かれる気配がなかったのだ。
「ああ・・・。実は、全くお食べにならないのです。」
どういうこと?
出しても食べないということは、遠慮しているわけでもなさそうね。
彼の手のひらに、
『なぜ たべない?』
と書き込むと、すぐに、申し訳なさそうに眉をひそめたトウィンク伯爵が、
「申し訳ございません。」
と返してくれたが、違う。
私は謝ってほしいのではなく、理由を知りたいのだ。
『なぜ』
しつこいかなあ・・・と思ったけど、もう一度念を押す。
すると、観念したように口を開いてくれた。
「私は・・・拒食症なんですよ。おそらく、最重度の。」
はあっ!?
口をあんぐりと開けたまま固まってしまった私を見かねたのか、ハーリリンが代わりに彼の手に書き込む。
『げんいんは?』
ああ、確かにそれ重要だよね!
さすが、ハーリリン!天才か。
「うう~ん。医者にはストレスと過去の何かが原因だと言われていますが。」
・・・?
みなさん、感想を下さい!!