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なんか……お兄ちゃんみたい


「さあどんどん食べて、私たちの出会いのパーティーだから」

 数日後、俺は梢にまんまと誘い出され、都内の有名イタリアンレストランにいた。

 超有名ホテルの中にある超高級レストラン、さらには個室……8人は座れるテーブルに二人っきりで腰掛けていた。


「──マジか……」

 あらかじめ予約していたのか? テーブルに着くや次々と料理が運ばれて来る。

 テーブルにズラリと並べられた色とりどりの料理、おそらくフォアグラ、多分キャビア、もしかしてトリュフ? 某テレビ番組でしか見た事のない食材、いくらか当てるあの番組で、一品数千円を越える様なメニューが目の前に並ぶ。


「どうぞ、今日は一杯食べてね」

 梢はそう言うが、小さな口に小さく切ったチーズを一切れだけ入れ、モソモソと食べている。


 よくある、見た目は細いが大食漢という設定ではなさそうだ……つまりは……。


「俺が全部食うのか……」

 わかってるとは思うが俺は古くさい日本人なんだ、昭和の人間といってもいい。

 小学校での給食は絶対に残してはいけない、アレルギーなにそれ美味しいの?っていう時代の、人間の記憶を持っている。


 生まれ変わってもその辺の教育は、(しつけ)は、体に染み付いている。


 残すわけにはいかない、絶対に残せないと俺はチャレンジメニュー宜しくと出された物を必死に食い始めた。


「あははは、凄い凄い」

 

「凄いじゃねええええええ! お前も食ええええええ!」


 必死に食べ続ける……高級料理なので見た目程ボリュームはない、ないけど旨い物は得てしてカロリーが高く味が濃い。

 ニコニコと笑って俺の食べる姿を見ている梢に、少しカチンと来るも、奢りなのだし仕方ないと俺は必死に食い続けた。


◈◈◈


「うがあああ、もう入らねえ」

 デザートまで含めて全部平らげた俺はお腹を擦りながら高級な椅子に寄りかかる。


「美味しかった?」


「あ、ああ、ご馳走さまでした」

 

「うふふ、いいえどう致しまして」

 紅茶を飲みながら梢満面の笑みで俺を見ている。


「なんだろうね、なんか不思議な感覚なのよね」


「不思議?」


「うんそう……貴方と一緒に食事をしてるとね、私姉弟も姉妹もいないのに、なんだか家族の様な、家族と一緒に食べている様な、そんな感じがするの、両親と一緒に食事なんてもう何年もしてないし、恐らく今一緒に食べてもこんな気分にならないと思う」


「──へ、へーーーー」


「へーーって何よ! 結構センシティブな事を言ってるのに! でも、それ、そんな感じが……そうね、まるで…………お兄ちゃんってこんな感じなのかな? って思えちゃうのよね」

 梢は、あははと笑う、俺も冗談めかして一緒に笑った…………なんとか……笑った。


「何で年下なのにお兄ちゃんなんだろう……うーーん、私の事先輩って思ってないんでしょ?」

 梢は冗談半分でそう言うが……まさにその通りだった……先輩なんてこれっぽっちも思っていない……うわべだけ……だって梢……妹なのだから。


 そしてこうして会えば会うほど、俺達の距離が、歴史が埋まっている気がする。

 前世との距離が……。





 

 

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