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家庭教師就任


「お母さんは……その、夜勤に?」

 

 カレーを食べ終わると楓はコーヒーを入れてくれた。

 一息ついてからさっきの続き、話の続きを切り出す。

 楓は少し複雑そうな顔で俺に疑問系でそう言った。

 

「お父さんは?」


「えっと……私が小さい頃に死んじゃったって言ってたけど……」


「けど?」


「多分どこかで生きてる……みたい」


「……そか」

 楓もまた梢と同様に複雑な家庭環境だった。

 それも同様に、楓の髪の毛や容姿のせいなのかも知れない……。


「ずるいよ先輩! 私は先輩の話が聞きたいなあ」


「俺の? って言われても」

 趣味、人の前世を見る事……なんて言えるわけ無いし、そもそも最近は見てないし……それ以外の趣味も無い……ヤバいよく考えたら俺ってつまらない人間に……。


「でもでも、先輩Aクラスですよね? 2年でAクラスって凄いって友達が言ってました」

 へーー……友達居るんだ……いや、まあいるか……誰かと違ってね……誰かって? 俺だよ……。


 進学校の我が校は、1年は受験の成績でクラス分けされる。

 まあ受験は1度のテストで決まるので、たまたまAクラス入り出来る事もある。

 しかしそこから1年間トップクラスの成績を常に取らないとならない。

 そうしないと2年の時にクラスの入れ替えが発生する。

 

 2年と3年の2年間Aクラスだった生徒には、自動的に某有名大学への推薦が与えられるシステムの為、2年では必ずAクラスに入っておきたい。

 その為、受験に失敗した生徒は死に物狂いでAクラスを狙ってくる。



「まあ、勉強で苦労した事無いかなあ」

 2回目の人生だし、それも若くして死んじゃったみたいだし……。


「羨ましい……」


「クラスは?」


「ううう……Dクラス」

 妹は最低のクラスだった……。


「ち、違うんです! 受験当日忘れ物しちゃって、慌てて家に戻って、私テストとか緊張しちゃうんです、だから早く行って落ち着かないと実力を発揮出来なくて……本当なんですよ!」


「わかったわかった疑ってないから」

 

「でも……先輩と釣り合わないって言われたら……」

 涙目でそういう楓……釣り合わないって言われるのはむしろ俺の方だと思うんだけど……実際既に言われているし。


「まあ、わからない事があったら聞いてくれ」


「ほ! 本当に?」


「え? ああ」


「やっったああああ! 先輩が、先輩が! 家庭教師してくれるって!」


「は? いやいや言ってない言ってないから!」


「だって、教えてくれるって言ったじゃないですか! 嘘なんですか?」


「いや、嘘じゃない、だから学校で」


「学校のどこで? 図書室は勉強禁止ですよね?」

 

「いや、えっと……そうだ喫茶店でとか」


「お金かかっちゃいますよ?」


「た、たまには……」


「私の家見ての通り何ですよ?」


「うううう……」

 奢る! と胸を張って言えば良いのだが俺もバイトとかしているわけではない……。


「あーーあ、A組入りたいなあ……」

 ちらっちらっと俺を見る……付き合っているわけじゃない、もしこれが他人ならば、自分でやれと突き放せるんだが……楓は俺の可愛い妹……あくまでも家族としての可愛さだけど……。


「……わ、わかった……」


「やった! 嬉しい! じゃあ記念にお布団敷いてきます!」

 

「敷くな!」


「えええええ! なんでぇですかあぁ」

 楓は俺を見て膨れっ面でそう言った。

 いや、無理だから……。

 

 それにしても……現世で妹の家庭教師をするとは……。 





 


もう駄目ぽ(꒪꒫꒪⌯)

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