1話 転生したのか。タイヘンダー。
よろしくお願いします。
カタカタカタカタ、カタカタカタ、カチィ。
部屋にパソコンのタップ音が響いた。
「あぁ、お腹空いたなぁ。」
そう言って私は、冷蔵庫の中にある今日のバイトの帰り道に買ってきたプリンを取り出した。
私はこの時、ちゃんと職についていない、半ニート状態であった。
誰も私を助けてはくれない。1人で生きていくのは難しい。そんなことを考えながら、プリンを持ってきた。スプーンも一緒にパソコンの机に持ってきて、一口分すくう。少し変な味がする気がする。きっとストレスだ。そう思い込み私は、そのまま食続けた。
「あぁ、眠いなぁ。」
そう呟いた私は、椅子の上で眠ってしまった。その時私は考えもしなかった。それが私の今世での最後の食事で、これから起こる出来事について…。
「…」
この部屋での音が何もしなくなった。
そして私は死んだのだ。
ーーーーーーーーー
ある朝、目が覚めると雪が積もっていた。
その様子を見て、私は言う。
「わぁー、ゆきだーー。しろーい。ゆきだるまつくりたーい。……え?」
そして私は思った。自分が今述べた雪だるまとはなんだろうと。なんで自分はこんな言葉を知っているのだろうかと。ハッとした。
そして私は、近くにあった大きな鏡で自分を見てみた。
「あれ、幼女…。え、私?」
長い、薄い藍色の髪の毛をして、黒色の目を持つ幼女が鏡の前に立っていた。
私は自分が誰なのか知っている。そして急いで近くに置いてある本を開いた。
読める。けれどこの字は日本語ではない。別の言語である。私はこの本の字に見覚えがあった。
「私…パソコンのゲームのキャラクターになった…?」
ここはパソコンの中の世界であるとそう思った。
「え、転生したの…私。」
どうやら私は転生したみたいだ。それもゲームの世界のキャラクターに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
一度冷静に考え、ゲームの中の自分の設定を思い出す。
この世界でのこのキャラの名前、いや私の名前は、エレスティーナ・バイオレット。バイオレット伯爵家の令嬢であり、魔法が使える。ここまでは普通のモブキャラクターだが、12歳で魔法学院に入学して早々に一緒に入学してきた第二王子殿下の婚約者になる。しかし、時は進んで16歳の時、第一王子が王太子となり、邪魔に思った私を殺す。
そんな設定であった。
私は、生まれながらにして死ぬ運命だったのだ。
「せっかく転生したのに、死にたくないなぁ。そもそもなんで転生したのだろうか…」
自分1人で考えたとしても答えは出ない。自分で答えを出すしか。
「私は、決められている未来が嫌だ…そうだ。逃げよううん!逃げようそうしよう!」
これが私がこの世界で初めて決めた決意。この決められた未来から逃げる事を心の中で決めた。
ーーーーーーーー
転生して3ヶ月がたった。この3ヶ月間この世界のことや魔法の勉強をした。
まずこの国はアルトレア帝国。この大陸の中で国土が最大で、南に海があり、東側には王国領があり、北側には、聖女がいるという聖国が接している。西は山々。そして、貴族内での序列があり、高い順に、王家→公爵家→伯爵家→子爵家→男爵家という形である。その下に平民がつく。
そしてさらにこの国の主力代家の序列も存在する。この序列は建国当初に携わった家が代家となり、この国のあらゆる国政をとり仕切る。
まず第1位がこの国のトップである皇帝陛下。
次に四大公爵家という四家が続く。詳しく言うと、
第2位は、アルメリア家で、この国では外交を担当している。
第3位は、エルミッド家で、この国では財務等をしている。
第4位は、フェイバリット家で、主に他国の諜報を行なっている。
第5位は、ルミナス家である。
その下に2家の伯爵家、グリフィス家とアス家が続く。
そして、第8位は私の家であるバイオレット伯爵家で、表向きは軍備の増強や諸外国との交渉の手伝いとされているが、実際には密偵やら暗殺業やらをしているらしい。主に国内で情報を集めたりしている。
そしてもう一つ下の第9位が子爵家のローザン家で、
その下に、男爵家のモスタリア家。
この序列の家の中の人を1人決めて大臣となる。うちはパパが大臣です。
最後に特別枠の第11位の平民枠がある。この平民枠は五年に一度開催される大会で優勝した者がなる。
この11人で帝国の内政をしている。だいたい会議して、法決めて公布って感じだね。
そして魔法だが、魔法は基本属性が炎、水、雷、土の四つである。
さらにそこに使える人が少ない、特殊属性である光、闇、氷の三種類合わせて7つが属性魔法である。
あと本には少ししか書いてないど個別魔法というのがあるらしい。私には使えないけどね。
そして、超位魔法という魔法がある。この魔法は極僅かの人しか使えない特別な魔法。そして威力は、何十万といった兵を一撃で葬り去るというレベルだ。この国では公爵家とあと数家の人達しか使えない。
これがこの世界での魔法常識らしい。前世では魔法に憧れていた私にはすごく興味深かった。
「さて、どうやって、未来から逃げようかな。第一目標としては学園に行かないようにお父様を説得することかなぁ。でも、、、」
そう。この国では魔法学園は必ず卒業しなくては貴族として舐められる。私だけが舐められるならいいけど家の人たちもバカにされるのは嫌だ。うーん。そんな時。
「エレスティーナお嬢様、夕食でございます。」
と、メイドの声が聞こえた。
「はーい。」
今の私は五歳だし、魔法学院入学は7年後だし、そう焦ることはないだろう。
そう思って私は部屋から飛び出した。
焦らず、考えて未来から逃げ出そう。そう私は決めたのだ。