18話 暴かれた真実
ざまぁ回2-2
ナルキスの父親の欄に追記
「では次の議題に移ります。
これから資料をお配りしますが、此方はこの室内でのみご覧下さい。
メモを取る事も禁止します。」
シオン殿下のお言葉で何故かクリスではなく、侍従が資料を配布しています。
クリスの仕事ぶりを見るチャンスでしたのに……
と、思っておりましたけど資料のタイトルを見て納得致しましたわ。
《ロピアー公爵家爵位簒奪未遂及び御令息入れ替え疑惑について》
こ、これは…やっぱりナルキス様とクリスの事ですわよね?
それにしても…『入れ替え』は何となく、気がついていましたけどまだ、『疑惑』なんですのね?
『爵位簒奪未遂』まで、話しが進んでいたのは驚きですわ!!
『事実は小説より奇なり』と、言いますけど……
いつも暢気なお母様も、驚き過ぎて言葉も出ないようです。
あ、お父様はある程度知らされていたご様子ですわね。
公爵家側を見てみると、公爵様はやはりある程度知らされていたみたいですけど、公爵夫人は顔面蒼白で、今にも倒れそうですわ。
大丈夫でしょうか?
ナルキス様は放心状態で
「嘘だ…嘘に決まってる。
俺様が父上と母上の子供じゃない、かもしれないなんて……。」
ちょっとお可哀想かもしれないわね……
資料によると《2人が入れ替わっているのではないか?》という疑惑が浮かんだ理由は、いくつかありますわ。
キッカケの一つは、ナルキス様のとても公爵家の血を引いているとは思えない素行の悪さ。
それとは真逆のクリスの素行の良さ。
マリーの実子のはずのクリスへの態度。
育児放棄、虐待にしか見えない躾け。
それに対して、ナルキス様への甘やかしが酷すぎる。
(領都本邸古参使用人達の証言)
公爵様とクリスの嗜好や癖など、共通点の多さ。
例えば、コーヒーを飲む時に砂糖とミルクを大量に入れる。
スプーンで混ぜるタイミング、カップを持ち上げるタイミング、コーヒーを飲むタイミングが同じ。
困った時に髪の毛を弄る癖。
笑った時に出来る笑窪。
(シオン殿下他の証言)
そして、極めつけは私が見つけた、ナルキス様がはめていらした指輪。
アレはやはり、魔道具なのですって。
しかも【入れ替えの指輪】というアーティファクトだそうですわ。
子供の頃にエミール殿下と読んだ本に書いてあった【魔法の指輪】は、まさにこの指輪の事なのだそうです。
ただ、私が記憶していた『絵本の挿絵』というのは記憶違いで、エミール殿下が【禁書庫】から無断で持ち出した【危険な魔道具図鑑】という本に、載っているのですって。
とにかく、指輪の正体が解ったのはタークちゃんが一生懸命に調べてくれたお陰ですわね。
ありがとうタークちゃん!
皆さまが資料を見ながら、それぞれ考えを巡らせているとドアがノックされ、エミール殿下とタークちゃん達が入室してきました。
なんだか2人共とても真剣な表情ですわ。
エミール殿下がシオン殿下に
「兄上、【鑑定の魔道具】による鑑定結果をお持ちしました。
やはり兄上のおっしゃっていた通り黒でした。」
と、一枚の書類を渡されましたわ。
いったい何が書かれているのでしょうか?
それに『黒』、と言う事はクリスはやっぱり!
興奮して思わず立ち上がろうとしましたら、トマスに咳払いをされて、止められましたわ。
「これから先程、エミールとターク嬢が持って来てくれた【鑑定の魔道具】によるナルキス殿の鑑定結果を発表する。」
シオン殿下はかなり真剣な表情ですわね。
「鑑定の結果…ナルキス殿は公爵夫妻の子息ではなく……
父親は、デューク・F・サーキス。(ロピアー前公爵次男)
母親は、マリー・フォルラン。
と、なっている。」
あゝやはりとは思いましたが、流石に鳥肌が立ちますわね。
公爵夫妻は、顔色も悪くお互いを支えあっていらっしゃいます。
ナルキス様は床に座り込んで俯き涙を流していますわ。
「そ、そんな…じゃあマリーはずっと俺様に嘘をついていたというのか!?」
今後の公爵家の事を思うと
やるせない気持ちでいっぱいですわね……
まだつづく




