17話 白紙と廃嫡
ついにざまぁ回その2
(エリー視点)
「ボルネオール侯爵家の皆様、準備が整いましたので会議室までご移動くださいませ。」
王城女官の案内で、私達一家と執事長のトマスが会議室に移動します。
会議室にはドアが2つ有り、双方共話し合いが始まるまで入室不可となっておりますわ。
部屋の奥には、何故か分厚いカーテンが架かっています。
上座には既に、今回の件の調停員の方が、着いておいでです。
今回は、公爵家と侯爵家の交渉なので、特別に王族の方が、担当官だと聞いておりますわ。
あら?担当官の方は第四王子シオン殿下なのですね。
ナルキス様は、入室するなり上座側に居た彼を指差して
「お前、クリス!どうしてそこにいる!?」
と怒鳴られたのです。
ナルキス様ってば、またやってしまいましたわね。
クリスはシオン殿下の秘書ですから、居て当然ですわ。
慌てて公爵様が、彼の頭を押さえ付けて謝罪させています。
どこまで公爵家の品位を落とすおつもりなのでしょうか?
多少の混乱はありましたが、これより両家による話し合いが始まりますわ。
まず、シオン殿下のご挨拶からですわね。
「私はユイナーダ王国第四王子シオン・F・ユイナーダである。
今回は両家共に、我が国の高位貴族同士の手続きである為、王族である私が、担当する事となった。
何か質問はあるか?」
「「ありません。」」
両家の当主の同意がありました。
話し合いではなくて手続き?
という事は両家の間で、話しはもうついてるという事ですか。
「それでは、これよりロピアー公爵家嫡男ナルキス・F・ロピアー公爵子息とボルネオール侯爵家長女エリー・F・ボルネオール侯爵令嬢との婚約の白紙、及びナルキス殿の廃嫡に関する手続きを開始します。」
そう言ってシオン殿下は、両家の出席者の顔を見渡しましたわ。
「まず、ナルキス殿とエリー嬢の婚約破棄ですが、白紙という事で間違いありませんね。」
あら?破棄じゃなくて白紙ですの?
つまり、婚約自体なかった事になりますのね。
しかも廃嫡って公爵様達、随分と思い切りましたわね!
流石に驚きましたわ。
「「はい…間違いありません。」」
両家の当主の答えを聞いたナルキス様は、かなり取り乱しています。
無理も無いでしょうね。
今まで公爵家嫡男として育ってきたのに、いきなり廃嫡と言われたのですもの……
「ちょっと待てよ!
何で破棄じゃなくて、白紙ってなんだよ!
それに廃嫡ってどういう事だよ!?」
激昂してシオン殿下に詰め寄ろうとしたナルキス様を、護衛騎士の方が羽交い締めにしています。
「ナルキス!辞めんか!
シオン殿下に対して不敬だぞ!」
公爵様に怒られても、ナルキス様はまだ暴れて言い訳を続けおりますわ。
「あの女は王城の騎士達や学園の者達に、身分を傘にきて嘘の証言をさせているんだ!
ちゃんと調べろよ!!」
尚も暴れて納得なさらないナルキス様に、シオン殿下は冷静に結論を言い渡されました。
「ナルキス殿は我が王城の騎士団を、信用できないと?
むしろ身分を傘にきているのは、其方ではないか?
下位の貴族及び平民を虐げ、金銭物を搾取し、借りた物を紛失、破壊しても謝罪せず同じ事を繰り返す。
その様な者が次期公爵家当主に相応しいと思っているのか?」
シオン殿下の言葉に悔しそうな表情を浮かべるナルキス様。
「何の罪も無いご令嬢に恥をかかせたのだ。
更に婚約破棄をすれば彼女の経歴に傷が付く……
よって本件については、『婚約の白紙撤回』という結論に至った。
廃嫡の件も先に述べた通りだ。」
先程とは一転、顔面蒼白になったナルキス様は
「で、でも乳母のマリーが、言っていたのだ!
『身分の低い者は俺様に従うのが、当たり前で謝る必要など無い、俺様が一番偉いのだ。』と……
そうだ、マリーを呼んでくれ!
マリーが俺様に間違った事を、言う訳がない!」
まぁナルキス様、まだあの最低な乳母にベッタリですのね。
来年の春には学園を卒業(出来るか怪しくなって来ましたけど)して成人を迎えますのに……
何て恥ずかしい方なのでしょう。
婚約を白紙にして正解ですわね。
まだつづく




