白玉
<スライムをテイムしました>
<名前を決めてください>
(・・・ああ、はい。いや楽でいいんだけどね)
あまりにも思うように事が進むと逆に不安になってくる。
(名前か・・・、俺のやつは失敗したけどこいつも道連れにするか?)
俺が不吉な事を考えるとそれを感じ取ったかのようにスライムが慌て出す。
目の前を不安そうにウロウロする様は実に愛嬌がある。このまま愛でていたい気持ちもあるがそんなことをしていたら時間がいくらあっても足りない。
(ふむ、まずは特徴を挙げてみるか)
——白い
——不定形
——核を持ちなんでもとりこむ
(・・・白血球だな、これ)
カルホネの中でパッと出てきたのはそれだった。
(これでいっか)
名前を考えるのが苦手であることは自分の時に十分理解したため深く考えることなく決めようとした。しかしスライムは、このままじゃまずいと感じ取ったのか、必死に抗議する。
ペチペチペチペチ
伸ばした体を俺の手に必死に打ち付けてきた。力も弱くただペチペチ音が鳴るだけの可愛らしい抗議に思わず無い頬が緩む。
(白血球はダメか。てゆうかなんでわかるんだよ・・・)
実際、はたから見ればスライムを眺めるただの骨だ。顔色もうかがえるわけでも無いのにこのスライムは、自らの名前が恐ろしく残念なことになる危機をいち早く察知した。
あるいは、これだけ機微に敏感だからこそ最弱種ながらも生き残れたのかもしれない。
ペチペチペチペチ
(ああ、わかったわかった。名前考えますよ)
(白血球だろ? つまり、好中球。・・・あれ? リンパ球? どっちかわからんぞ・・・)
そうして、あーでも無いこーでも無いと考えた結果。
(よし、お前の名前はハクギョクだ!)
スライム Lv1 Name ハクギョク
しっかりステータスに反映されたことを確認する。心なしかハクギョクも嬉しそうだ。白玉? ……そんなもの知りませんな。
(他のステータス見れないかな)
名前が決まると他のことも知りたくなってくる。俺のステータスのように表示されれば楽なんだが……。
ステータスでてこいと駄目元で思うと思わぬところから正解を引き当てた。
ステータス
Lv8
Name カルホネ
Race スケルトン
HP 30/39
MP 1152/1152
STR 6.7
INT 66.0
MEN 49.2
VIT 3.9
DEX 201.8
AGI 3.6
スキル <暗視><鑑定><刀術><隠密><テイム>new
ユニークスキル<魔道><魂感知>
従魔:ハクギョクnew
<テイム> 自分に従属した魔物を従える。ステータスに従魔が追加される。従魔に表示された名前からステータスを見ることができるようになる。
(こっちに表示されるのかよ。・・・こうか?)
ステータス(従魔)
Lv1
Name ハクギョク
Race スライム
HP 57/57
MP 30/30
STR 0.7
INT 1.8
MEN 1.2
VIT 5.7
DEX 2.3
AGI 5.6
スキル <暗視><危険察知>
ユニークスキル <消化>
<危険察知> 危険を感じ取る。
<消化> 取り込んだものを効率的に消化する。
なるほど、やけに鋭いと思ったら危険察知のおかげだったようだ。
名前をつけるのにスキルが反応するほど危機感を覚えたのかよ。しかも何気に俺のVITとAGIが負けてるし……。
ハクギョクのステータスは全体的に低く突出したものはない。やはり俺の尖ったステータスが際立つな。魔法使いルート確定かな、これは。
(まあ大体把握した。ハクギョクに戦闘は無理そうだな。止めだけ刺させればいいか)
ハクギョクを交えた戦闘を想定し今後のレベル上げの計画を立てる。
さしあたっての問題はどう考えても戦力外のハクギョクを戦闘中、どこに置いておくかなのだが……。
ピョコン
そこまで考えた時、俺の手の上でプルプルしていたハクギョクが肩に飛び乗り骨の隙間をすり抜け肋骨の内側に収まった。ちょうどよく収まったハクギョクはうねうねと動き回る。
(そんな手があったか。てか、骨の間にあった埃やら蜘蛛の巣やらが食べられて綺麗になってく)
どうやらハクギョクはカルホネを綺麗にするために行動したようだが、このままその場に留まってもらうことにした。
ここなら戦闘中邪魔になることはないしちょうどいいだろう。
(よし、レベル上げに戻るか!)