ギルマス
「何をしている」
ざわめきに包まれていた修練場。水を打ったように誰もかれもが口を閉じた。
野次馬をかき分け近づいてくる男。見た目は若干色黒。隆起した筋肉はあのゴブリンキング並に隆起している。頭はハg ……スキンヘッドでぱっと見マフィアだ。受付のカレンがギルマスと叫んでいなければ俺は恐怖で逃げていたかもしれない。だって怖いし。
『おい、リーベこの後どうするんだよ?』
『……考えてなかった』
『お前、本当行き当たりばったりだな! 計画性とかないのかよ!』
『そんな物があれば今こんな状況にはなっていない』
意地はって言うような事じゃないんだが。ハクギョクは完全に無視を決め込んでいる。お前も煽ったろ、ちょっとは関心もて。
「おい、そこの馬鹿ども。なんの騒ぎだ、これは」
「ギルマス! 実は——」
野次馬たちはギルドマスターとカレンに向いている。逃げるなら、今しかない。
『おい、リーベ。今のうちに逃げるぞ』
『サー』
このまま人混みに紛れてしまえば逃げ切れる。なんだかんだあったけど何とか丸く収まったな。
「おい、そこの二人。お前らも当事者だろう。このまま残れ」
全然収まんなかった。
「はぁ……。色々言いたい事はあるが、まずは……おい、そこの奴ら。このバカを医務室にでも連れて行け」
「えー、コイツをですか? 大丈夫ですって、ギルマス。コイツはゴキブリみたいにしぶといのでそのうち勝手に起き上がります」
「いいから連れてけ。ギルド命令だ」
「うわー、職権乱用。しゃーない、やるよ!」
そういって、悪態をつきながらナゲットの足を掴み引っ張っていく男。なんか、ナゲットの扱いひどいな、コイツら。ゴキブリとか言ってるし。
「お前らは付いて来い。話がある」
俺たちに一言声を掛けるとギルドマスターはギルドの中に戻る。リーベは先にギルドの方に行っちゃったし、俺もいくしかないか。
「すみません、カルホネさん。同行願います」
カレンに促され、俺はギルドへと足を向けた。
「すまなかった」
ギルドマスターに案内された応接室で開口一番謝罪を受けた。確かにナゲットと揉めたが、俺らがおとなしく引き下がればよかった話だからな。謝られるような事じゃないんだけど。
「……誠意が足りない。もっと頭を下げて」
「おい!」
なんてことを言い出すんだコイツ。人見知りのくせによく分からないところで強気になれるんだよ。
「いや、確かに嬢ちゃんの言う通りだ。本当にうちのギルドの者が迷惑をかけた」
「いや、こっちにも非があったし。頭を上げてください」
「はは、そっちのにいちゃんは見た目に反して人が良いな。表情が動かねーから凄く怖いけど」
やっぱコイツ、謝らせといた方がいい気がする。別に表情を動かさないようにしてるんじゃないんだよ。体の一部と敷いて取り込んだとはいえ、端的にいえばスケルトンにスライムが纏わり付いていただけなんだよ。だから感情の起伏に合わせて表情の変化をさせるのは流石に面倒なんだ。
「だが、そう言う訳にもいかないんだよなぁ。冒険者が一般人に手を出しちまった以上ギルドとしても生半可な対応ができねぇんだ」
「はぁ……、一般人? 誰が」
「お前だよ、お前」
「カルホネはまだギルド登録終わってない」
「……あ」
そう言えばそうだった。登録するために血が必要になるとかで揉めてたんだ。




