とある受付嬢から その2
私の元に来た二人だが、そのまま黙ってこちらを見ている。
男の顔が若干引き攣っているがどうしたのだろうか?
このまま待っていても半足かけてこないだろうから私から話しかけることにした。
「こんにちは、本日はどのような用で来られましたか」
私が話しかけると男は頭を掻きながら苦笑いを見せる。
間近で見るとその破壊力はすごかった。
少し生気の無い顔で作り物のように整った顔立ち。それだけなら少し近寄り難いのだが、人間味を感じさせる表情を見せられるとうっかり見ほれてしまいそうになる。
「あー、冒険者登録をしに来たんだけど……」
「……は、はい。冒険者登録ですね? 失礼ですがこの街の方ではありませんよね? どうしてわざわざこちらのギルドで?」
危ない危ない。私としたことが、つい見ほれてしまった。ここらの国では見ない顔立ちで、あまり耐性がなかったのが原因かもしれない。いや、きっとそう。
一瞬対応が遅れたけど、そのあとは完璧。マニュアル通りきちんとこなせた。
「俺ら冒険者ギルドのある街ってここが初めてだからね。身分証明書にもなるって言うしここで登録しとこうと思って」
「……? この街に来るまで冒険者ギルドのある街に一度も寄らなかったのですか?」
この街の周りで冒険者ギルドのないところなんて一つもなかったと思うけど……。
「いえ、俺ら向こうの森を超えてこの国は行ってきたんで他の町とか経由してないんですよ……」
少し困ったように言う男はギルドの南側を指差す。
確かそっちにあるのは迷いの森とか言われている入るのすらタブーなところなんですけど……。
え? 本当にそっちからきたんですか? はい……そうですか。
なんか深く考えちゃいけないような気がしてきた。
それに冒険者ギルドにはこう言う変な人が集まるから慣れっこだ。
今まで培ってきたスルースキルを存分に発揮し、仕事用の作り笑いを浮かべる。
「はい、わかりました。それでは冒険者登録の方に移りますね? まずこの用紙にお名前と——」
説明が一通り終わると男は今までずっと黙っていたフードを被った人に目を向ける。
コクリと頷くと用紙を受け取り記入していく。男の分も書いているようだ。
男は見るからに異国の人だしもしかしたらこの国の文字を書くことができないのかもしれない。
「できた……」
鈴の音のような綺麗で可愛らしい声が響く。どうやら私の見立て通り女の子だったようで、用紙を受け渡す手は色白でさわればプニッとしそうだ。
「確認させていただきます。……カルホネさんとリーベさんですね? 希望職業はお二人とも魔法使いですか? 剣士ではなく?」
フードを被った少女——リーベさんはまだわかる。でもカルホネさんはどこからどう見ても剣士の出で立ちだ。
腰にも剣をぶら下げているし、あれが杖という訳でもないだろう。
「問題ない……二人とも魔法使い」
リーバさんの方が答えた。自信満々に言うのだから間違いはないのだろう。
まあ、稀に魔法使いだけど武器振り回すのが好きで近接武器を使う人もいるし……きっとそう言うタイプの人なんだ。
たしか一時期、近接も長距離も両方こなせるオールレンジ魔法使いがはやったことがあるって聞いた。
30年くらい前かな? 賢者って呼ばれる人がそのスタイルでみんながそれを真似したって言う話だ。
成功した人はほとんどいないって言うけど大丈夫なのかな?
「登録後でも職業表示の変更は好きな時に出来ます。いつでも仰ってください」
一応変更はできることを伝えておく。ちゃんと頷いてくれたので、無理がきたら言ってくれるだろう。
「では、こちらで登録させていただきます。——はい、最後にこちらに一滴血をたらせば登録完了です」
この装置も不思議だ……。情報を入力して出てきたカードに血を垂らすだけでその人専用のカードになる。
難しいことわからないけど昔召喚された異世界人の一人が作ったらしい。
リーベさんが血を垂らすと一瞬光を放った。登録が完了した合図だ。
「はい、問題ありませんね。ではカルホネさんも……」
私が声をかけるとどこか焦った様子でカルホネさんがリーベさんを見ていた。




