ケモ耳娘
「なんか見られてない?」
「……当然。カルホネの格好はこの国では稀。目立つのは当たり前……」
俺に着ることを強要しておきながら白々しくそんなことを言うリーベは、フードで顔を隠し自分より圧倒的に長い棒を持っている姿も注目される要因であることには気づかない。
自分が注目されていることに気が行きすぎてそのことに気づくことがなかった。
唯一気づいていたハクギョクは面白そうだから黙っている。
「なんか、落ち着かないんだが……。やっぱ着替えちゃだめ?」
「すぐになれる……。カルホネの服は私の最高傑作。そこらの防具着込むならその服の方が高性能。合理的に考えてそれを着た方がいい」
俺はあまり派手な服を好まない。そのため、リーベたちが作る服を好んで着ようとはしなかった。しかし、リーベとしてはせっかく自分好みの容姿にしたのに服装がダサいのは納得いかなかった。
何としてもカッコいい服を着て欲しいと、リーベが作り出した服。それが、今俺が来ている服だ。
リーベの持てる技術の粋を集め作り出された服はもはや防具といって差し支えがない。高い魔法防御に刃物を通さない強靭さ、着ている思えないほどの軽い素材、自動再生の魔法陣まで組み込まれている。
ここまで強い服——もはや魔道具——を装備せず地味な服を着ようとは流石に思わなかった。
「お前、無駄に多芸だよな……」
リーベの能力は多岐にわたる。魔法はもちろん、近接戦闘・錬金術・刻印・服作りまで——、挙げればきりがない。
「……エルフは長寿だから時間はいっぱいある。国に使えてた頃に色々身につけた」
「通りで……」
そんなことを話していると冒険者ギルドが見えてきた。
『カルホネさん。絶対絡まれるので気をつけてくださいね?』
「……絡まれるん?」
『カルホネさん……、自分の格好良く見てください。こんな明らかに浮いた格好であら荒くれ者たちの巣窟の中に入っていったら絡まれるのは必然でしょう?』
「……なあ、俺ちょっと用事が……」
「む……、逃がさない」
「いやだ! 行きたくない!」
「問答無用……」
『諦めてください』
ハクギョクの言葉に急に行く気が削がれてしまい、駄々をこね始めた俺はリーベに引きずられながら冒険者ギルドに入っていった。
ギルドの中に入ると最初に目に入ったのは受付だった。入口から真っ直ぐの位置に三つ並んでいて、そのすべてに綺麗な女性が座っている。
(右は巨乳で、真ん中は胸が小さいが普通に可愛い。左の子は……、ケモ耳娘だな……)
エルフがいるのだから獣人がいてもおかしくはない。俺自身もいたら会ってみたいとは考えていたのだがここまで早く会えるとは思っていなかった。
「よし行こう」
早く受付で登録しないといけないな。残りの魔物を換金してお金にしないといけないし。それに、俺にはケモ耳娘が待っている。
頭の中にはすでにケモ耳娘と会話することしかない。
「さっきまであんなに抵抗してたのに……」
『絶対受付嬢に釣られましたね』
足取り軽く受付に向かっていく俺の後ろ姿をジト目で見つめる一人と一匹には気づかなかった。




