ステータス
<レベルが上がりました>
(・・・は?)
脳内に響いてきた声に困惑する。
正直状況についていけない。吹き飛ばされたスケルトンもそうだが、死の間際に走馬灯のように引き伸ばされたあの時間。本当に走馬灯か?
それに本能のままに行動したが、腕から放たれたあの衝撃波……あれは一体なんだったのか。
問題のスケルトンは俺が放ったよくわからない衝撃波によってバラバラ。確実に死んだだろう。
(……考えても仕方ない。今はそれよりも……)
レベルと言ったか……確かに転生したと思ってはいたが、もしかしてステータスとかもある世界なのか?
(ステータス——って言っても出てくるわけ……うわっ、本当に出た)
ステータス
Lv2
Name なし
Race スケルトン
HP 30/31
MP 1120/1142
STR 5.2
INT 64.8
MEN 49.4
VIT 3.1
DEX 200.1
AGI 3.6
スキル <暗視>
ユニークスキル<魔道><魂感知>
ゲームのような表示が目の前に現れる。おそらくこれが俺のステータスなのだろう。しかしステータスの見方がいまいちわからない。
(もう少し詳しくならないか? )
すると目の前の表示が変わり簡単な説明が現れる。
Lv レベル。種族によって必要経験値が異なる。
Name 名前
Race 種族 スケルトン:骨の魔物。雑魚中の雑魚。砕くと肥料になる。
HP 生命力。ゼロになると死ぬ。基本はVIT値の10倍。
MP 魔力量。ゼロになると回復に時間がかかり動くことが困難になる。基本はINT値とMEN値の和の10倍。
STR 力。筋力値。
INT 知力。魔法操作、魔力運用に影響。
MEN 精神力。精神に対する抵抗力に影響。
VIT タフさ、防御力に影響。
DEX 器量。器用さに影響。
AGI 素早さ二影響。
<暗視> 暗いところでもよく見える
<魔道> 魔力を支配し、あらゆる魔法を操れる。
<魂感知> 魂を知覚できる。
(スケルトンの評価がひどい・・・)
それを見た最初の感想はそれだった。
確かに物語とかではよく最弱ポジションで出てくるがそれにしたってこの評価はあんまりじゃないか? 雑魚中の雑魚って……。
(しかし雑魚という割にステータス高くないか?)
基準がわからないのでなんとも言えないが最弱の割に魔法に関するステータス、そして器量が異常に高い気がする。
逆にタフさはなく一撃でも貰えば即死に繋がるだろう。さらに攻撃をかわすための早さもない。
(攻撃される前に倒すしかないな……)
ステータス的には魔法使いだろうか? 近接戦は好む所ではないのでそれはありがたい。正直、さっきの戦闘で二度としたくないと思っていたのだ。
よく考えてみてほしい。瞼もないせいで目を瞑ることも出来ず、切っ先が目の前に迫ってくる様子を……。あの時は焦っていて意識が向かなかったが今考えるとトラウマものだ。
そう言えば、あの時スケルトンを吹き飛ばした衝撃波。あれは<魔導>のスキルのおかげだったのだろうか?
無意識で使うことができたのは奇跡だがこの強力なスキルはありがたい。ステータスを見る限り魔法使い寄りのようだしこのスキルには今後、一番お世話になるだろう。
そして、他のスキルは大体名前と説明で理解できるのだがこの<魂察知>はなんだ?
これはあれか? 一度死んで死者となったから身についたのか?
色々文句はあるが一度使ってみることにした。
(ちらほら何かが動いてるのを感じる。これが魂か……)
洞窟内にいる者が手に取るように知ることができた。
これは利便性があるな。さっきみたいに近付かれるまで気づかないなんてことはなくなるだろう。使っていると落ち着くし普段から使うようにしよう。
(それで、名前は無くなったのか・・・)
思い出そうとしても記憶に靄がかかったかのように思い出すことができなかった。
スケルトン・・・
骨・・・
カルシウム・・・
(・・・カル骨)
思いついた単語を適当につなげた時だった。
視界の端でステータスが更新されてしまった。
ステータス
Lv2
Name カルホネ
Race スケルトン
HP 30/31
MP 1120/1142
STR 5.2
INT 64.8
MEN 49.4
VIT 3.1
DEX 200.1
AGI 3.6
スキル <暗視>
ユニークスキル<魔道><魂感知>
(アアアアァァア! キャンセル! キャンセル!)
しかし、ステータスに表示される名前が変わることはなかった。
(うぅ・・・、名前これで決定? なんかご丁寧に骨がカタカナ表記になってるのもむかつく・・・)
(でも待てよ? これ名前決めたところで使うことあるか?)
骨の体では声が出ない。名乗ることもできないだろう。
(そもそも、スケルトンが名前を持ったところでどうするんだ?)
名前を使うとしたら自分と同じ知能の高い魔物、もしくは人間だろう。しかし、この世界でスケルトンの立場は最弱。
人間と友好的な立場にはないだろう。
強いスキルもどこまで通用するのかわからない以上、過信もできない。
カルホネにとって降って湧いた第二の生。人間ですらなく、種族としての評価は雑魚中の雑魚。
(死ぬのは嫌だなぁ)
一度考えたらその思いはどんどん強くなっていく。カルホネには二度目の死は容認できなかった。
(強くなろう)
戦う術もある。スケルトンの体なら食事もいらないだろう。
幸い、強くなるための道筋は示されている。
——Lv上げ。
異世界に来て数時間。生きる目標が決まった。