説明を……
「だから……その。……いっぱい迷惑かけると思うけど、お友達になって欲しい」
様子を伺うように上目遣いで覗いてくるリーベの手は少し震えている。拒絶される事に怯える姿は、普段よりさらに小さく見えた。これが他人ととの関わりを恐れるリーベの精一杯だった。
「あぁ、よろしくな」
『ふふ、私はもうとっくに友達だと思ってますけどねー』
そんな姿を見て拒絶するのなんてできる者はいないだろう。いたらそいつはもう鬼だ、人間じゃ無い。
俺は、快く受け入れ、ハクギョクは元々友達であったと主張する。
リーベは嬉しさからかその綺麗な瞳から涙をこぼし、思はず見惚れるような笑顔で
「——ありがとう」
——と言った。
あれから、感情を抑えきれなくなったハクギョクがリーベの胸元に飛びつき服を乱しながら感情をあらわにし、それを抑えるため俺が引き剥がすなどの騒動があった。
その間、リーベはずっと幸せそうに微笑んでいた。人生で初めてできた友達に嬉しさで胸が一杯になっていて、ハクギョクに動きを止められスライムにたかられている事には気づいていない。
助けてくれと言う叫びもリーベに届くことはなくスライムの波に飲み込まれていった。
『リーベさん、嬉しそうですね』
ハクギョクは、いつの間にかリーベの肩によじ登っていた。
「……ん、初めての友達だから。すごく嬉しい……」
『ならよかったです。これからも二人でカルホネさんを改造しまくって最強の魔物作り頑張りましょうね!』
「一緒に……、うん。……作る。カルホネも友達だから全力で最強にする」
『それじゃあ、どっか行っちゃったカルホネさんを回収しましょうか』
自分がやった事にも関わらず白々しくそんな事をのたまうハクギョクだが、リーベはその様子を可笑しそうに見ていた。
『あ、いましたいました。カルホネさんこんなところで何してるんですか?』
「お前がやったんだろ……。だいたい体の動きを止めるとか、反則だろうが。俺の体なのに釈然としねぇ……」
ぶつぶつと文句を言う俺をスルーしてハクギョクはリーベに話を振る。
『この後どうします? カルホネさんで確認したいことはもう終わりましたし。レベル上げも器を上げなきゃあんまり意味ないと思うんですけど』
「……そこは考えてる。カルホネにはまず、今の体の使い方をきちんと覚えてもらう」
「自分の体ぐらい使えるぞ?」
『カルホネさん……、自分の体に施された改造の内容、理解してます?』
「ぐ……、それはお前らが教えてくれないせいで……」
悔しそうに呻いた。未だ自身に施された改造の全容を把握できないため負け惜しみのようになってしまう。
『いいえ、きちんと改造する時説明しましたよ?』
「……聞き流してました」
流石にバツが悪い。モゴモゴと声が小さくなりハクギョクからは呆れたようなため息をつかれた。
「問題ない。それをこれから覚えてもらうから」
決然とした態度でそう発するリーベに、俺は静かに頷く。
「それじゃ、ついてきて……」
「ん? そっちは家とは反対だぞ?」
「実戦が一番だから……、口頭じゃなくて体で覚えてもらう」
リーベの言っていることはひどく真っ当。確かに口頭より実戦で身につく事もある。しかし、何故だろうか。不安が拭えない。
スライムで国を滅ぼしかける奴が真っ当なことをするだろうか?
答えは簡単、否である。
「あの……、リーベさん。実戦って何を……」
「……いいから」
「いやいや、ちょっと待って。説明を、説明をようきゅ——」
『ハイハイ、駄々こねないでくださいね』
口を閉ざされ、リーベに首根っこを掴まれた俺は手足をジタバタさせながら抵抗する。
しかし、リーベはその見た目に反して力が強い。暴れる俺を引きずりながら洞窟の奥に消えていった。




