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スケルトン転生記  作者: ルーラル
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転生

 訪れるはずの無はなく海底のように深い闇に沈んだはずの意識が釣り上げられるように覚醒する。

 薄暗い空間に一人、ポツンとそこに自分が突っ立っていた。


(ここは、どこだ?)


記憶が確かであれば死んだはずなのだが……、こうして生きているのはどういうことか?


 周りを見渡してみるとどうやら洞窟のようで、水の音が響いている。

 

——カラン


俺が体を動かした時、どこからともなく聞こえてきた子気味良い音。

思わず振り返るが後ろには何もない。


——カラリ。


俺が体を動かすと再び音が洞窟内に響いた。


(何がどうなって……)


わけもわからず見渡すが広がるのは無機質な土の壁。

どうしようもなくなって下を向いた時、衝撃的なものが視界に入った。


骨だ……


本来俺の手があるべき場所に真っ白な骨がある。

よく見れば手だけでは無い。足も体も全てが骨だった。一応衣類は身にまとっているが、埃をかぶりところどころに穴が開いている。

骨と骨の間には蜘蛛の巣が貼られていて、長い時間放置されていたようだ。

肋骨の内側——本来心臓が収まっていた場所にはどういう原理か水晶のような赤い球体が浮かんでいる。


(はぁ? なんだ、これ?)


軽くパニックに陥った。その後数分間混乱したままだったが状況が変わるわけでもなく、ただすぎていく時間に次第に落ち着いてくる。

改めて自分の状況を考えてみる。


(これ……もしかして転生?)


最初に俺が考えたのがそれ。よくラノベを読んでいたこともあり受け入れるのは容易だった。


(転生したものと仮定すると……、俺の種族はスケルトンか?)


ラノベ知識を駆使して予想を立てる。よくある転生ものならこの後レベルを上げて進化。そして人、あるいは人型になるのだが……。

実際の所、それを確認するすべはない。ひとまずは情報収拾を——


 ——カラン、カラン


骨が打ち付け合う独特な音が響く。

特に動いたわけだはないのにそうしてこの音が響いてくるのか、不思議に思って辺りを見渡すとそこには俺と同じ骨が立っている。

俺との違いはその手に握られたボロボロの刀のみ。


(お? これは同族か?)


俺は軽く手を振り友好的に振る舞い意思疎通を図る。


この時の俺は危機感が足りなかった。この世界は日本でも地球でもない。ましてや今の俺はスケルトン、人ですらないのだ。護ってくれる法もモラルもこの世界にはなく、あるのは弱肉強食の摂理だけ。


そして俺は振り上げられた刀が自分に振り下ろされるまでその事実に気づけなかったのだ。


避けられたのは奇跡だろう。

とっさに地面を蹴り横に転がると自分がいた場所から金属が地面に打ち付けられた音がする。


(あ、あぶねぇ)


理屈はわからないが手に入れた第二の生。それがこんなよくわからない感じで終わるのは納得いかない。

逃げるのは……、多分無理。生き残るためには戦うしかないのだが……


(でも、刀とかずるくない?)


こっちは素手なのに対して相手は武器を持っている。不公平と叫びたいが相手はそんなことは聞いてくれない。


再び刀を振り上げるスケルトン。今度はしっかりと動きを見てから避ける。意外と振りは遅く、避けられないほどではない。


しかし攻撃を避けることができても、攻める手がない。このままじゃ追い詰められて避けきれなくなるのが目に見えている。


(何か打開策は……)


殴るか蹴るか、それともタックルでもするか? 色々考えたがどれも近接するしかない。


(でも、怖い……)


どうしても近く勇気が出てこない。


俺がためらっている間スケルトンが待ってくれるはずもなく追撃の構えを取る。

考えに気が行ってしまいそのことに気づけなかったせいで反応が遅れた。


(あ、ミスった!)


ギリギリの所で躱したが、背中を壁に打ち付けてしまった。

後ろに逃げ場はなく、追い詰められたことで焦りが状況判断を鈍くする。

スケルトンはすでに目の前に立っていた。


(何か、何か……)


ゆっくりと振り上げられた刀が俺に向かって迫ってくるのを引き伸ばされた時間の中で見ていた。

走馬灯だろうか? 音も色も置き去りに思考だけが加速する。


(何かないのか? 状況を打破する方法が……)


もうすでに切先は目の前に迫っている。それは同時に死へのカウントダウンでもあった。


(死にたくない)


そこからは無我夢中だった。

腕を突き出し自分の内側から溢れてきた力を解放する。

何故そんなことをしたのか、出来たのかはわからない。

ただ死にたくない一心で本能に従い行動した。


切っ先が届く一瞬、俺が目にしたのは——体をバラバラに吹き飛ばされたスケルトンの姿だった。


<レベルが上がりました>


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