勇気が欲しい
あれから、今に至るまでの説明をした。最初の骨との戦闘からハクギョクとの出会い、鬼との戦闘まで。
結構突拍子も無いことを言っているつもりだったのだがリーベは特に驚いた様子もなく、落ち着いて聞いている。
どうしてかと思っているとリーベが教えてくれた。
リーベによるとかつてオレツエーがどうの、ハーレムがこうのと各地で暴れたものがいるらしく、そいつらが自らを転生者と名乗っていたようだ。
このように転生者は稀に現れる存在らしく新鮮味がないらしい。
(それ、確実に向こうの世界原産の転生者ですわ。なんかすみません)
転生者が行ってきた所業を聞くと途端に申し訳なくなってくる。奴隷を買いあさってハーレムを築くのはまだ可愛いもので、一国の王に対して内省チートしてやるから優遇しろと主張したり、正義感に駆られて悪徳貴族に喧嘩を売り全く関係ない善良な貴族の家を潰したりと聞いててこちらが恥ずかしくあるようなものばかり。
そんな経緯もあり転生者はあまり好かれない。
他にも転生者たちはこちらの世界で騒ぎを起こしているらしく、聞いているだけで頭を抱えたくなるようなものばかりだった。
俺が頭を抱えている時、リーベは聞いた話を紙に書き留めながら考察していた。
リーベは散々転生者の話をしたが、実はその中に魔物に転生したと言う話は一つもない。ゆえに異世界からスケルトンとして転生したことに内心驚いていた。
それが感情として現れなかったのにはちゃんと理由がある。簡単なことで、それ以上に驚くことがあったからだ。
ユニークスキル——それにリーベの意識は釘付けだった。別段ユニークスキルというものが珍しいわけではない。大抵の者は何かしら持っているし、むしろ持っていない者の方が少ない。
問題は持っているユニークスキルの内容だ。<魂察知>——、これはリーベのこれまでの常識を覆す者だった。<魔導>なかなかのものだが<魂察知>に比べると目劣りする。
「疑うわけじゃないけど、ステータス見てもいい?」
『……んん? ああ、別にいいけど、どうやってみるんだ?』
未だに頭を抱えていた俺は、突然話しかけられ反応が遅れた。どうやらリーベの方は考えがまとめ終わったようだ。
「鑑定を使う」
そう言われて首を傾げた。鑑定と言われると思いつくのはラノベ主人公がよく使ってるアレだがこの世界にもあるらしい。
「鑑定すればカルホネが言ってることの真偽がわかるから。これが手っ取り早い」
『もちろん構わないがどこまでまでわかるものなんだ?』
「ステータスとか、あと持ってるスキルの詳しい説明。普通にステータス見るより詳しく見れる」
『まじか……』
思った以上に見ることができるようだ。これなら今までよくわかっていなかったスキルの概要もわかるかもしれない。
「それじゃあ見させてもらう」
『どうぞ』
(そういえば、俺もレベル上がった後のステータス見てなかった)
今更ながら自分のステータスを把握していなかったことに気がつき、リーベが鑑定している間自分もステータスを確認することにした。
(ステータス)
ステータス
Lv14
Name カルホネ
Race スケルトン
HP 9/59
MP 1262/1281
STR 8.5
INT 70.8
MEN 57.3
VIT 5.9
DEX 208.1
AGI 4.8
スキル <暗視><刀術><隠密><テイム>
ユニークスキル<魔道><魂感知>
従魔:ハクギョク
ステータス(従魔)
Lv8
Name ハクギョク
Race スライムリーダー
HP 120/134
MP 60/82
STR 7.3
INT 4.5
MEN 3.7
VIT 13.4
DEX 5.2
AGI 10.3
スキル <暗視><危険察知><射撃>
ユニークスキル <消化><統率>new
<統率> 統率力が高くなる。自分より下位の同種、もしくは信頼を得た相手に大きな効果がある。
(……あれ? ハクギョクの種族が変化してる……)
俺の進化では種族の変化は起こらなかったのに……、この違いはなんだ?
進化するときに何か条件を達成する必要があるのか? それとも進化以外の要因が絡んでいるのか……。
「……なにこれ? INTとMENが……DEXも高い。なんでこのステータスでゴブリンキングに苦戦? この説明が本当なら、もしかして……——」
俺が考察中、リーベがブツブツ呟き始めたかと思うと、何かに気がついたかのように立ち上がり、床に散乱する紙をあさりだした。
「確かここら辺に……」
『お、おい? どうしたんだ、急に?』
突然の奇行にうろたえる俺を他所にリーベは紙の山から何枚か手元に寄せる。ある程度確認すると、納得がいったのか紙を抱きしめながら椅子に戻った。
「いろいろわかった」
『お、おう。それは良かったんだが、そんなに嬉しかったのか?』
ウキウキといったように肩を揺らしながら楽しいオーラを振りまくリーベに少し引き気味に尋ねる。
コクコクと首を縦にふるリーベは目をキラキラと輝かせている。
「うん。私、これでも魔物専門の研究者。これだけ新しい情報がわかって楽しくないはずがない。とりあえず確認したいことがあるからいろいろ協力して」
おとなしいキャラだと思っていたら、夢中になるとグイグイくるタイプだったようでものすごい勢いで迫ってくる。
『うおっ、近い近い近い! わかった! わかったから離れろ!』
あまりの熱意に反射で了承してしまう。
「やった、これで研究が進む。もしかしたら前々から計画していたあれも……」
グフフと怪しげに笑うリーベを見て早まったかと自分の選択を早速後悔するがもはや逃げ場はなさそうだ。
前言撤回をしてやめたいのだが……そんな勇気俺にはない。
純真無垢に喜ぶ少女和悲しませることが誰にできようか。少なくとも俺には無理だ。
————ほんと、勇気が欲しいよ。




