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スケルトン転生記  作者: ルーラル
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What is your name?

あの後、俺は怒ったハクギョクをなだめることに腐心させられた。

その結果、もう二度と自分一人で戦うような事をしないと約束させられ、女性の扱いについてこんこんとお説教を受ける事になった。

気づけば少女も参加していて、正座のままただひたすらハイと答えるだけの機械となった。


お説教が終わる頃、だいぶ時間が経ったのか小鬼とはまた違った魔物が集まってきた。

少女は面倒そうにため息をつくと、俺に自分のうちに来るよう声をかけてくる。


『家? こんなところにあるのか?』


質問するが少女は答えることなく進んでいく。その先にはハクギョクを逃がすために向かわせた通路。そこを黙々と進んでいく。


右へ、左へ、曲がりくねった道の先——行き止まりにたどり着いた。


『道、間違った?』


辺りを見回してみるがあたりは一面岩ばかり。また無視されるかとも思ったが、少女は壁に手をつきながら振り返り、俺を見た。


「大丈夫、ここで会ってるから」


どこか得意げに答えると、少女の手から魔力が溢れた。魔力は壁に染み込むように広がっていき、それに呼応して複雑怪奇な文様が浮き上がる。

壁全体に文様が広がると、端の方から青白い光に分解されていき、奥から木でできた扉が現れた。


「ここが私の家」


ドアノブに手をかけ、開きながら言う。入るように示しながら家の中に消えていく少女。ハクギョクは特に驚いた様子もなく少女の後を追い入っていく。


口を開いた間抜けな顔のままそんな二人の後ろ姿を眺めていた俺は間違っていないと思う。




家の中に入るとハクギョクが入り口の眼の前で固まっていた。


『……どうし——た? ……はあ?』


ハクギョクに声をかける瞬間、目に入ってきた光景に思わず変な声を上げてしまった。


「どう?」


自慢するかのように問いかける少女。どこか褒めて欲しそうな雰囲気を感じる。


おそらく洞窟を削り出したからだろう。床から天井に至るまで岩で覆われている。魔法により全体的に光が行き届き、天井の高さも十分あるため閉鎖的な印象を受けることはない。家としては及第点だろう。

しかし、ここにはそんなことより目をひくものがあった。


『なあ、この部屋はなんだ?』

「……? 普通の部屋だけど?」


不思議そうに首をかしげる少女。何を聞かれているのか理解できていないらしい。


『言い方が悪かったか……、この部屋の惨状は何だって聞いたんだけど』

「……確かにちょっと散らかってるかもしれないけど」

『いやいやいや、ちょっとどころじゃないぞ? 完全に足の踏み場もないからな? とゆうか、机の上に置いてあるカビてるパンはなんだよ!』


これを自慢しているのなら割と本気で正気を疑うレベルだ。


気まずそうに視線をそらす少女。足の踏み場もないほどの紙の束に、机の上に放置された食べかけのパン。長期間放置されたものなのかカビが生え緑色に変色している。

他にもちらほらと洗っていない食器や、明らかにゴミでしかない不恰好な置物など、片付けられていない部屋が俺達の目の前には広がっていた。


「これでも片づいてる方……」

『コレで片付いてるのか……』


 がっくりと肩から力が向けた俺を、ハクギョクがまあまあと慰める。


「……とりあえずここに座って」


わかりやすく話を転換する少女は足元の紙を退けながら机の前の椅子を勧める。

俺はこれ以上の追求を諦め、言われた通りに座った。

少女はその対面に座り、机の端に置かれていたペンと紙を手元に寄せる。


『家の中でもローブは来てるのか?』


俺が何気なく質問すると、突然びくりと肩を震わせた。フードを両手で掴む少女はどこか怯えているように見える。


『カルホネさん……』


こんな偏屈なところに住んでいるぐらいだ、きっと訳ありなんだろう。

無神経に聞いてしまったことをハクギョクが非難するように小突いてきた。



『あー、別に着ててもいいよ。こっちは気にしないから』


対応に困ったが、結局興味ないといった風に手を振りながら言うに留まった。

その結果、言い方が悪いとハクギョクに叩かれる事になったが……。


「ん、ありがとう……。ローブはあんまり脱ぎたくないから……」


それ以上、話を掘り下げる事はせず無言で部屋を見渡す。

部屋の隅にガラクタのように転がっている骨やゴミを眺めていると何か忘れているような気がする……。

ここで、今まで言うべきことをまだ言っていなかったことを思い出した。


『遅くなったけど、助けてくれてありがとう』


 机に額がつくほど深く頭を下げる。正直投げ捨てられてるガラクタが俺と重なって見えてしまったことが悲しかったが、それはそれでこれはこれだ。

感謝は伝えないといけない。


「気にしなくていい。こっちが勝手にやっただけ。それよりもハクちゃんに感謝するべき」

『そんなことはないと思うが……、確かにハクギョクには感謝だな。ありがとう』


お礼を言われたことに照れているのか、謙遜する少女。ハクギョクは嬉しそうに跳ねている。


「……お礼はもういい、それよりいろいろ聞きたい事がある」

『それはこっちもだ。聞きたい事はたくさんある』「なら情報交換。こっちも答えるから、そっちも答えて」


交渉成立とばかりに手を差し出してくる。

俺がその手を取ろうとした時——ふと、先に確認しておかなければいけない事に気づいた。

ここまでお互い一度も気にしてこなかったが交渉をするのならこれは外せないだろう。


『それはいいんだけどさ……』

「……?」

『どうしたんですか?』


 首をかしげる少女と、いつの間にか少女の近くに寄っていたハクギョクが聞き返してくる。


『名前、なんて言うの?』


俺達はまだ自己紹介をしていなかった。


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