小説案 ④:「イチゴノカタルシス」
「な、なぁ待ってくれよ!オレがお前に何したってんだよ!?」
少年は確かにこの人物と肩がぶつかり文句をつけたのだが、たかがそれだけのことでいきなり鉄パイプで殴りかかられるとは思ってもいなかったため、急に弱腰になった。
「アンタ、じゃない。“アンタ達”・・・!」
フードを目深に被っていて顔は見えないが、それは明らかに女性の声音だった。少年は最近仲間内で噂になっていた、この町で続発する『不良専門の通り魔』のことを思い出した。まさか、コイツが・・・?
「分かった、文句言ったのは謝るよ!だから・・・
少年が言い終わる前に、通り魔はその右足に向けて容赦なく鉄パイプを振り下ろした。ゴッという鈍い音は恐らく足首の骨が折れた音だろう。
「あがっ!ああぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
少年は倒れ込み、激痛に耐え切れず声を上げた。通り魔は地面に転がった少年の腹を思い切り踏み付け、躊躇う事なく鉄パイプを少年の右足に何度も何度も叩き付ける。真夜中の高架下に、少年の悲痛な叫び声だけが響いていた。
オマエラサエ、イナケレバ・・・
「ねぇ聞いた?また昨日の夜も出たらしいよ。今度は右足が酷い状態だったって」
「やられたのって、竹橋高の不良グループの人だってね。不良を懲らしめてるつもりなんだろうけどね~、ちょっとやり過ぎじゃない?今は不良しか狙われてないけど、いつか私達も襲われちゃうかも・・・」
校門前で少女達が話している声を聞き付け、一人の男が彼女達に声を掛ける。
「お、ちょうどいい!そこのお嬢さん達、その通り魔についてちょっと聞きたいんだが・・・」
少女達が声のする方へ振り返ると、そこにいたのは黒いスーツにサングラス、そして天然パーマ姿のかなり古い探偵ドラマの主人公のような男がやけにカッコつけたポーズで立っていた。だが女子高の校門前でこんな男に出くわすとアレにしか見えない。
「・・・せ、先生ー!不審者不審者ぁー!多分痴漢かなんかー!!」
「え!?ちょ、ちがっ、待って!」
少女達は全速力で校舎へと逃げていった。時代遅れの探偵、忍足 浩二は肩をすくめた。
「ハァー、うら若き乙女には探偵スタイルの良さは分からねぇか・・・」
「探偵さん、そのエージェント・ス○スみたいな恰好はさすがに怪しいと思いますよ?」
浩二が振り向くと、今回の依頼人で、この高校の教師でもある旭菜 蓮が立っていた。
「そんなぁ、旭菜さんなら分かるでしょ?このクールかつ情熱的な探偵の心を体現した・・・
「生憎ですが、私も“うら若き乙女”ですので・・・。ここで長居されると生徒達も不安になってしまいますので、詳しいお話は職員室でしましょうか。さぁこちらへ」
「アッ、ハイ・・・」
仕事前から散々な言われようだ。浩二は心にジャブ、時々ボディブローを受けつつ、蓮に連れられて職員室へと向かっていった。
今回の事件、色々な意味で大変な事になりそうだ。そんな浩二の妙に鋭い勘は、今回最悪な形で当たってしまうこととなる。
こちらは自分の考えた小説の案を使って、そのワンシーンだけをとりあえず書いてみたものです。
出してみて、何かしら反響があった場合には作品として書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。