イケメンの野ボーン
みんなしょうかいした
わいわいと騒ぐクライド達をじっとみながらシリウスは
薄く笑う。
今までの人生で運やツキなど存在しないと思っていた。
いや、その存在だけで、虐げられてきた境遇だから
運やツキなんて信じたくなかった。
生まれ、境遇などまさに運ではないか。
運やツキを認めてしまえば、自身に運が無い
ということになり、そして悲惨な人生であると認めることに
なるではないか。
だから、人生に運やツキなど存在しない
全ては深い思考と強大な知識で解決する。
と頑なに自分に言い聞かせて走ってきた。
だが認めたくないがツキ、運というものはあるらしい。
しかもどうやら、
自分にとんでもないツキが回ってきたようだ。
今まで誰からもされたことが無いクライドの態度のおかげで
感情に流され、魔王軍クライド傘下に加わった。
感情に流されるなんて、らしくない。
感情に流されれば待つのは破滅だけだ。
と一瞬後悔した。
だが今は、そんなことは思っていない。
むしろ、いつもの理論重視ではなく
感情に流されて決断をした自分をほめたい気分だ。
まったく、いやになる。
これまでの人生で忌み嫌い、心の奥にしまってきた
幸せ、運、ツキという言葉がこれほどまで心躍らせるとは。
クライドの横にいる、臆病で正直者のスケルトン。
ザインと言ったか、この者、用兵に才がある。
軍略を施せば、万夫不当の大将軍となろう。
その前にいるダークエルフの娘ボニー。
自分のことを単なるおせっかい、世話焼きと言うが
この者、治に才がある。
治政の知恵を施せば、政治の化け物となるであろう。
パックスの棟梁シックス。荒々しいがその能力と決断力は
優れた方面司令官をする能力がある。
魔王軍4軍団長にもひけをとらないだろう。
さらにクライドの背後には魔王が信任する
最高の諜報活動集団イコン族とナグル族がおり、
彼に忠誠を誓っていると聞く。
もっとも、イコン族もナグル族も自分達が
最高の諜報機関であるという自覚は無いようであるが。
そして彼らを統率する長であるクライド。
突出した何かがあるわけではない。
むしろ抜けたところが多々見受けられる。
マヌケだけどどこか憎めない骨。
しかしその思考は、魔物達が持つ限界を
いともたやすく超える。
磨き上げれば魔王すらも、いやこれ以上は言うまい。
シリウスにとって、ダイヤモンドの原石がゴロゴロと
目の前に転がっている。
そしてそれをどう磨くか、どのように輝かせるか?
その裁量が全て己の手の内にある。
彼らを軽く磨くだけで、魔王軍で突き抜けた存在に
なれるだろう。
徹底的に磨けば、どうなるだろうか。
これをとんでもないツキと言わずに何といおう。
そんなことを考えながらシリウスは、これからのことに
思案を巡らせていた。
いけめんはかわりものか




