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ボ乱打戦

夜更け。


辺りは静まり返っている。


パックス達は、夜は眠り明日への英気を養っている。

・・・わけはない。



静かであるが活発にパックス建築組が動いている。


砦の部品が全て揃ったのだ。


ゆえに、今晩一晩で一気に組み上げる。



現場ではシックス、ジュニ、クライド、ザインそして

ボニーがそろって作業を見守っている。


作業が大詰めだから、作業が心配だから。

そういった理由で集まっているわけではない。





さかのぼること数分前ワンが知らせをもたらした。


「旦那ぁ!大将!!ドーガ家の連中、夜襲を企ててるぞ!」



「なにぃ!上等じゃねーか、追い払ってやるわい!」


シックスが片眉をあげながら吠えると


「ちげーんだよ、大将!普通の夜襲じゃねーんだ」


「あぁん?」


「ただかく乱することが目的の夜襲じゃねーんだ。

ヤツら、今回の夜襲で蹴りをつけようとしてんじゃねーか

ってレベルの総力をあげた準備をしてんだよ」


通常、夜襲は相手を疲れさせたり混乱させることが目的だ。

従って、総力をあげた準備をすることは無い。


「ワン!もしかして"混沌者"が動いたんじゃないか!」


常識を覆すような作戦にクライドが思わず

声をあげてしまう。


「いいや、旦那の心配は最もだが、"混沌者"は動いてねぇ」


ワンが首をふる。


「なんで言い切れるんだよ。この裏のかき方は"混沌者"が

やる策略に似てるぜ!」


「"混沌者"はぜってー動いてねー。

なんで言い切れるかって?、今"混沌者"は謹慎中なんだ。

監視を立てられてるレベルで軟禁されてる。

だから"混沌者"の策じゃねー。

あえて言うなら以前"混沌者"が実行した策をドーガ家の

連中がマネしたってとこだな」


監視されてる?謹慎中?

気になるワードが飛び出してきたが

今はそれに構っている時間は無い。

敵の夜襲に備えなければならない。



そして夜襲の対策を打ち、今に至るわけである。



淡々と作業を進めるパックス建築組。


それをじっとみつめるボニーとザインに対しクライドが


「ザイン、戦いが始まったら

ボニーをつれてすぐに下がれよ。頼んだからな」


「んだ」



夜襲を待ち受けていることを悟られないように

平時と変わらぬ素振りをとるクライド達であったが

そこには静かであるがジリジリとした緊張感が漂っていた。



どれだけ時が過ぎたであろうか。

夜も更け、闇夜が深まったころ


ヒュンヒュンヒュンという無数の空気を切り裂く音が

クライド達の耳に入る。


クライド達がいるであろう場所に大量の矢が

滅茶苦茶に降ってくる。



ドーガ家の夜襲だ!!



しかし無数の矢は、クライド達に到達する前に

勢いを失い、ぽろぽろと地面に落ちる。


完全飛道具防御(パーフェクトプロテクション)


飛び道具を完全に防ぐ魔法。

しかし副作用としてこちら側の飛び道具も

全て無効となってしまう。



夜襲といえばまずは飛び道具を打ち込み

混乱した相手に突撃するのが定番だ。

それを防ぐ。

そしてこちらから逆に接近戦を仕掛ける。

相手はまさか闇夜の接近戦、いわば乱戦を仕掛けてくる

とは思っていないだろうから、最初のアドバンテージは

それでとれる。


というのがシックスの作戦だ。



「てめえらぁーーいけぇぇぇぇ」


シックスが大声で突撃の号令をかける。


「「「おらぁーー」」」

「「「くたばれやーーーー」」」


パックスとナグル族がシックスの号令に呼応し

猛然とドーガ軍へ突撃してく。



クライドは、シックスの号令が聞こえるとすぐに

ザインへ

「ザイン、ボニーを連れて安全なトコまで下がれ」


と指示を出した。事前の打合せ通りだ。


「んだ!!」


ザインの先導で非戦闘員は速やかに戦闘エリアの外へ

移動する。


非戦闘員が離れるのを見届ける間クライドはシックスとの

会話を思い出す。


「大将、それで乱戦を仕掛けてアドバンテージを握った後

はどうするんだ?次の作戦は?」


「は?乱戦になったら暴れまくりゃ良いだろうがよ?」


ここら辺が大将の限界なんだろーな。

アドバンテージ握った後は有利なんだから力攻めすりゃ

良いじゃんっていうね。


と言ってもそれ以上の策がクライドにも

あるわけじゃないから黙っておいた。




「あにじゃーーーー全員退避完了だべーーーー」


遠くからザインの合図が聞こえる。

よし、これで一安心だ。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


非戦闘員の安全確保が確認できたクライドは

咆哮をあげながらドーガ軍敵中真っただ中へ

突撃していく。


「オラァ!死にてぇヤツはかかってこいやぁ!!!」


素手で突撃してくるクライドに気が付いた

ドーガ兵の一人がクライドにむかって


「あの時のヘタレスケルトンじゃねーか!

何も持たずに来てバカじゃねーか?

バカでヘタレの、その頭ぶち壊してやるよ!!!」


と巨大なハンマーをクライドに向かい振り下ろす。

クライドはふわりと飛び上がりそのハンマーを交わす。


ドゴン!ハンマーは大きな音を立てて地面にめり込む。


ドーガ兵の背後に回り込んだクライドは、ドーガ兵の耳元に

「誰が素手のバカだって?お前みたいなホントのバカは

素手でも殺れんだよ」


と囁くと一瞬で首の骨をへし折った。


今までの戦いは勝手がわからない集団戦で探り探り

だったが、今回の戦いはそうじゃない。


集団戦と言うが、乱戦になってしまえば個人の戦闘と

ほとんど変わらない。

通常の個人戦と違い気を付けることと言えば



「クライドさん、危ない!!」


クライドの背後に忍び寄り剣を振り下ろそうとしていた

ドーガ兵をいつのまにか本体に合流していたゴロムが

けり飛ばした。


個人戦と乱戦の違いは四方八方から敵が

襲い掛かってくるから背後にも気が抜けないってことだ。







闇夜の乱戦




文字通り乱れに乱れた戦いであった。


この戦いを制することができたクライド達は

ドーガ軍へ致命的な打撃を与えることができた。



「お、おわった・・・・」


ボロボロのクライドがつぶやき、ふと

砦建築場のほうを見るとパックス建築組が変わらず

砦を構築している。


「あの乱戦の中で変わらず作業続けられるって

大したもんだねー」


「おうよ、ワシが丹精込めて育てたパックスよ」


いつのまにかシックスがクライドの横に立っていた。

流石にシックスも傷だらけだ。


「クライドよぅ、ありがとうよ」


「何が?」


「こいつらの価値をわかってくれてよぅ。

価値がわかるやつに使ってもらえて本望だぜ」


「なんだよ、大将あらたまってさー、フラグ?」


「ふらぐ?何言ってるかわかんねーが、オメー休め

ボロボロだ、それにここ数日寝てねーだろ?」


そういえば、シックスに指摘されて気が付いた。

初めての軍団を率いてやる任務だから

気が貼ってほとんど寝られなかったんだ。


そこに乱戦でボロボロ疲労困憊。

クライドは急激な眠気を感じた。


「そういわれりゃ眠いや・・・」


「構わねぇ、軍団はワシが代わりに率いておく。

オメーは今は休め」


シックスの言葉を聞くか聞かないかくらいで

クライドの意識はプツリと途切れた。


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