アイアムアボーン
「もう良い!!!!!
敗因の分析は後で行う!!!」
魔王が手を振り払い
ラ・モンドの報告を途中で止め
あたりをカッと見渡す。
「カーツの失態をほくそ笑むが
ジュードよ、キサマこの任務で
何の役に立った?
ラ・モンドよ、オノレは我の命令以外で
何を動いた?
どうなのだぁぁぁぁ!!!!」
魔王の再びの激高の声に
ラ・モンド、カーツ、ジュードは
額に汗をかきながら首をすくめる。
ジークも黙って頭を下げるだけだ。
他の魔物達も青い顔をして
視線を下げる。
魔王様が激切れしたら
4侯爵でも恐れるんだな。
魔王から雷を落とされまくっている
クライドは、自分じゃないから
平気だわーと余裕だ。
4侯爵を睨みつけていた魔王だったが
バッと顔を上げ周囲の魔物達を見渡し
「この4人どもに気を遣わんで良い!
誰か我こそは!と思う者はおらんのか!
手段は選ばん!!!!」
シーンと静まり返る謁見の間。
魔王軍4侯爵の一人であるカーツが
失敗したこの状況で、私がやりますと
手を挙げる者はいない。
それは、カーツに対する恐怖というものも
あるだろうし、カーツの実力を
もってしても失敗したという恐怖も
あるだろう。
「誰かおらんのか?
これだけ爵位が集まっておいて
我こそはという覇気ある者は
誰一人としておらんのかぁぁぁぁ!!
激高した魔王のちょっと甲高い声が
鳴り響く。
全員がうつむいている状況。
誰か何とかしろよ・・・。
4侯爵の誰かがとりなせよ・・・。
そんなピリピリとした、そして
うんざりとした空気が漂う中
ハイ!
謁見の間後方から、気の抜けた声と
一本の骨の手があがった。
魔物達が一斉に声のほうを見る。
手を挙げた声の主。
魔物達の後方にそっと立っている者。
一体の骨。
この物語の主人公
クライド the スケルター。
「ほぅ、骨か・・・」
魔王が爛々と目を輝かせて
クライドをじっと見る。
その隣に立つラ・モンドが心配そうな
顔をして思わず
「どのような策を取るのだ?
カーツが失敗したのだぞ?
勢いでした、冗談でした
では通用せんぞ?」
と声をかけてしまう。
そこへ
「モンド、だまれ」
と魔王が手を挙げ制する。
魔王に制止されたラ・モンドは
黙り込んでしまう。
「骨、どのようにやるか?」
この場にいる誰もが驚きの顔をして
クライドの発言を待っている。
「ハイ、長期戦用にスノー砦の近くに
新たに砦を築きます」
「ほぅ、どこへ?」
「川の中腹あたりに」
謁見の間後方のクライドと
謁見の間玉座の魔王が声を交わしていると
唐突に
「敵地真っただ中ではないか!!!
砦を作ってもすぐに壊されるわ!」
とカーツがクライドへ向かい
怒号を発する。
チッと、あからさまに舌打ちをし
めんどくさそうな声でクライドは
「砦を攻め落とすには2倍の戦力が
必要と言います。
一度築けば砦を守ることは可能です」
「戦場の真っただ中でどうやって
砦を築くのだ!
それが出来れば苦労などせんわ!!
ワシでもできぬことをキサマは
どうやってやる気だ!!」
とカーツはクライドを問い詰める。
周囲の魔物は、どうなることかと
身動き一つとれない。
クライドは嘲るようにハッと声を出し
「頭を使わぬからです。
仲間を信じぬからです。
それに
敵に手の内を明かすバカが
どこにいますか?」
と返答する。
「何ぉぉおぉぉぉぉっぉ!!!
ワシを敵だとおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
完全に激高したカーツが
破壊の波動を周囲にまき散らしながら
今にもクライドに飛びかかろうとした
その瞬間
「やめんかぁ!!!」
魔王が一喝する。
その声を受けたカーツは慌てて
魔王へ跪く。
しばらくの沈黙。
この場の誰もが声を発しようとしない。
皆が頭を下げ跪く中。
クライドだけが謁見の間後方で
顔を上げ、立ち、じっと魔王を見つめる。
玉座に座る魔王も何を考えているのか
じっとクライドを見つめる。
「よーし!骨!よう言った!
お主に全てまかせる。
やってみせい!!!」
カーツを含む謁見の間にいる魔物達は
驚き顔を上げ、クライドと魔王を
交互に見つめざわつく。
そんな中、魔王の兜の下に垣間見える目が
いたずらっ子のように輝き
「骨!あと細かい話だが
砦を攻め落とすのに必要な戦力の
比喩は2倍じゃなくて3倍だぞ。
もっと勉強せえよ」
キャ、はずかしい。
■
魔王からスノー砦完全攻略の任務を
直接引き受け、早速城を出たクライドに
向かい、慌てて駆けてくる者がいる。
「おぉい!クライド!待てって!」
大声でクライドへ声をかける
大柄の若者、シェイだ。
シェイの声が聞こえたクライドは
振り返って立ち止まる。
「よう!シェイ、どうしたの?
そんな心配そうな顔して?」
「んだよ!お気楽そうな声出して!
おい!大丈夫なのか!
冗談でしたではタダではすまねえぜ?」
「大丈夫だってば」
本当に心底心配した顔をしたシェイ。
まるで耳を完全に垂らした犬のような
表情をして
「何か協力できることがあれば
手伝うからな!
お前さんはオヤジ殿とソリが合わないから
俺の事警戒してるだろうけど
そこは俺のこと信頼してくれよ。
だから困ったら何でも言ってくれな?」
裏表なく、本心から本当に
クライドを心配し、何の策略も損得も
考えず協力を申し出てくれていることが
クライドには手に取るようにわかる。
そんなシェイのまっすぐさと優しさが
嬉しくあるクライドであった。




