貴人(奇人)マナー講師にもうボキボキだ
「お久しぶりでんな、もうえろなったら
いけずしてぇ。
ザインはんも相変わらず男前でんな」
ザンビエ商会、ケイ・ウラーの本店。
魔王からの依頼で
リュウ位貴人皇団に魔王軍に正当性を
与えるように工作するのだが
その前に、ケイに一応の許可を
取りにきたクライドとザインであった。
にこやかに出迎えてくれた
ウラー家当主、ケイ・ウラー。
最近はボニーがお世話になっているから
そんなに久々感は無い。
「男前だなんてそっただこと」
とザインが頭をかく。
照れるな照れるな、社交辞令や
商人の社交辞令や。
「ほいで、クライドはん。
ボニーちゃんとはどこまで
いきましたん?」
「どこまで?
魔王城周辺から歩いて行ける
ところくらいだけど?
一番遠いのは、ここかな?」
「何言うてんの、とぼけて、もぅ。
ホンマえろなったら食えんお人に
ならはって」
ニヤニヤとクライドの脇腹を
肘でつっつくケイ。
「いやー、ボヌーと兄者の距離は・・・
キャッ」
とザインが顔を赤く染める。
ちょっとこの人達
何言ってるかわかんない。
「あ、それでケイさん。真面目な話
良いかな?」
「あら、失礼。なんでっしゃろ?」
ケイが姿勢を正し聞く体制をとる。
「実はね、仕事でガーチェのおっさん
ようは、リュウ位貴人皇団の
お墨付きを魔王軍にもらってこい
って言われたの」
「へぇ、人間の権力、正当性に
かかわるなんて魔王様は
えろぉ人間臭いお人でんな?」
「まぁ、色々策略とか深謀遠慮とか
あるんだよ。
それでね、ガーチェのおっさんに
その依頼に行くのにケイに
お断りをちゃんとしておこうと思って」
「あー!そういう話でっか!
クライドはん、相変わらず律儀なお人
でんな!そんなウチなんか気にせんと
勝手にやったらよろしおすのに」
「まぁそうかもしれないけどね。
良いかな?」
ケイはポンと自分の膝を一つ打ち
「もちろん!かまいやしません」
と気持ちよく返答する。
「ありがとう、ケイ。
それはそうとさ
もし魔王軍が、リュウ位から
公認されたとするじゃん?」
「金額次第とはいえ、されましゃろ?」
「うん、そうなったらさ
その出来事がきっかけで人間の
何かの相場が変動したりするのかな?」
ケイはふぅっと視線を上に向ける。
考え事をしている仕草だ。
「変動する相場・・・・。
よーけ、あるでしょうね。
魔王軍が正当性を持つことで
警戒する国は軍備や備蓄を
増やすでしょう。
逆に正当性を持つことで争う口実が
無くなる国は、軍備や備蓄を減らす
でしょう。
それ関係で相場は動くでしょね」
「じゃあさ、魔王軍は公認とろうと
してるわけですよ。インサイダー情報。
なので
公認を取ったら儲かるように
ウラー家は動いてください。
どこの国がどう動くかは、イコン族を
活用してください。ウラー家と
イコン族は連携とれますよね?
何か問題がありそうなら私の名前
使ってもらって良いんで」
「あら!儲け話でっか?」
「そう。でね、さらに
儲かる話なんですけどね」
にんまりとケイが笑いながら
「商人をくすぐる、そんなクライドはん
好きでっせ」
「好きだなんて・・・キャッ」
顔を赤く染めるザインを無視して
クライドは
「魔王軍が公認されたって噂を
まき散らすようにパックスという
亜人の集団に依頼してくれませんか?
噂がまき散らせたら影響が大きくなって
儲けも大きくなるでしょ?
で、彼らにその仕事の報酬を支払う必要が
あるんですけど、その費用は
儲かる具合をかんがみて
ケイさん捻出してくれません?
パックスって亜人の集団ですけど
クライドからの紹介って言ってもらえたら
大丈夫ですんで」
「あら、ガチで儲け話ですやん。
だったら、あんさん、魔王軍で
したらよろしやん。その功績でまた
出世しまっせ?」
「ちょっと諸事情があって
私はパックスへ依頼できないんですよ」
クライドは困ったような表情を
素直に浮かべる。
その表情につられて、ザインも深刻そうな
表情になる。
じっとクライドの表情を見ていた
ケイだがやがてポンと膝を叩き
「困ってるようでんな。
わかりました。細かい話は聞きまへん
やりましょ!
何よりウチが儲かるから構いやしまへん」
■
「なるほどでおじゃ!」
リュウ位貴人皇団
ノア家当主、ガーチェ・ノア宅。
相変わらず狭いしこきたない。
ガーチェのおっさんの風貌は
相変わらず奇抜だ。
そして相変わらずおじゃおじゃ言う。
「人間ではない魔王軍に対して
正当性を持たせるというのは
色々と難しいかもしれませんけど・・・」
クライドが説得を試みようとすると
ガーチェは手をクライドの前に出す。
それ以上言うなという仕草だ。
「だいじょうぶでおじゃ。
みなまで言うなでおじゃ。
恩人のクライドの頼みでおじゃ」
おぉ、おっさん中々仁義あるじゃん!
ガーチェは後方から一枚の紙を取り出す。
「正当性を認めるコースは
松、竹、梅の3コースでおじゃ。
それぞれのサービスと費用はココに
書いておじゃ」
金とるんかーい。
でも金さえ払えば魔王軍であろうと
問題なく公認してくれるって
ことかな?
他のリュウ位だったらそう簡単には
いかなかったのかな?
と自分で自分を説得しておこう。
「で、魔王軍ならば、梅コースだと
格に合わないでおじゃね。
かといっていきなり松コースは
不安でおじゃね。
だから竹コースが
オススメでおじゃよ?」
商売人かーい。
まぁ良いや
費用は全然、想定内だ。
「で、でおじゃね、梅と竹の違いなんか
ないやんけってケイみたいなドケチ
は言い腐りよるけど、やっぱり組織に
とって見栄えって大事でおじゃよ?
やっぱり竹コース・・・・」
「おっさん、おっさん、ガーチェの
おっさん!わかった、わかった。
みなまで言うな、竹コース
よろしく頼むよ。
おっさんの誠意も伝わったからさ」
「おぉ!竹コースでおじゃか!
流石魔王軍の貴族殿は見る目があるのぅ」
と言いながら奥に引っ込む。
一連のやり取りをあっけにとられながら
見ていたザインは小声で
「兄者、この人も濃いべな・・・」
クライドは
ふくふくとしたガーチェの顔を
見ながら、金に汚いなくて濃いけど
このおっさんどこか憎めないんだよなー。
なんて考えていた。
「さて、こちらが公認書でおじゃ。
これで魔王軍はノア家の正式なる
剣の一本じゃ!」
しばらく奥に引っ込んでいた
ガーチェが紙に見事な字で公認書を
書いて持ってきた。
形としてはノア家を守る軍隊の一つ
であるという体裁だそうだ。
それにしてもおっさん、見事な字書くな。
こういう文化的な素養の高さは
没落しても貴族ってとこかね。
「それにしても、貴公も、もう一人も
下品じゃのう。
ということで、礼儀作法を教えてやる
でおじゃ」
おいおいおい、さらに商売かよ。
確かに貴族による礼儀作法というのは
そりゃ立派なスキルだし
行くとこ行ったら必要だろうな。
でもそれって金とるよね。
「おっさん、俺達公認で金使ったから
もうそんな金ねーぜ」
「んだ」
怪訝な顔をする二人に
ガーチェは初めて聞いた、さて驚いた
そんな表情を浮かべ
「金?
そもそも、ノア家の礼儀作法を
金払って教わりたかったら
さっきの竹コースの費用くらいじゃ
全然足りんでおじゃよ」
おいおいおいおい、そんな金ねーって。
「費用の面は心配いらんでおじゃ。
そんな金、貴公らは持っておらんで
あろう?はなから期待しとらんて」
さらっと無礼だよなおっさん。
さらっと無礼なトコってザインと
似てるかも。
「それにケイからも口添えが
あったでおじゃよ。
貴公には恩もあるでな
サービスでおじゃ。
魔王軍公認のほうは、リュウ位としての
決まりがある故、麿の一存ではどうこう
できんでの、その代わりでおじゃ」
へぇーーー。
おっさん意外と律儀なんだな。
あとケイったら、もう裏から手回して
くれてたんだ。
おっさんの想像以上の健気さと
ザンビエ商人の行動の素早さ、気の回し方
に、驚かされるクライドであった。
■
「ほぅ、クライド、意外じゃの
貴公、礼儀作法に才能あるんじゃの?」
ガーチェによる礼儀作法のレッスンを
受けるクライドとザイン。
クライドは割とスムーズにこなす。
これって社会人のマナーに近いんだよな。
っていうか突然ルールが変わる
社会人マナーに比べたら一貫性がある
ノア家作法のほうが楽かもしんない。
一方ザインは
「これ!ザイン、貴公はさっきから
全然ダメでおじゃね!」
「べさ」
「ほれ!ザイン、立つときは右足から
左座右起じゃ」
「べさ」
「ぼりゃ!ザイン、相手の右側から
いかんか!」
「べさ」
・
・
・
・
「あだだだだだだだ
足がしびれたべ。
ダメ、兄者、足触っちゃダメ」
足をぴくぴくさせて倒れるザイン。
まぁ2時間も正座させられりゃそりゃ
普通は足しびれるけど
俺達骨だぜ?
骨の何が痺れんだよ・・・・。
そんなこんなでガーチェから
ノア家礼儀作法を教わった
クライドとザインがボニーの家へ
戻ると、魔王城から使いが来ており
「ローアーク以上は全員火急登城せよ」




