骨2号試作機
スノームの街。
アンゼロ家の領内にある街だ。
そこに
凡庸な顔の男。
豚鼻ながら知性を感じさせる顔の男。
素朴な顔の男。
3人が歩いている。
素朴な顔の男は表情を引きつらせ
当たりをキョロキョロと見まわしている。
一言で表現すると挙動不審である。
道行く人がたまにチラホラと
素朴な顔の男を不審そうに見て
通り過ぎていく。
「ザイン、ザイン、あんまりキョロキョロ
するな!怪しい奴でーすって言ってる
ようなもんだぞ!」
凡庸な顔をした男が小声で素朴な顔の
男―ザイン―に注意する。
「そっただこと言ったって敵地だべ!
兄者怖くないだか?」
ザインも凡庸な顔の男―クライド―に
小声で返す。
「怖いからってキョロキョロしてたら
ばれて本当に怖い目にあうぜ」
「ひぇっ!」
「ザインさん、怖くて辺りを確認したい
なら、演じてください」
「演じる?」
「そうです。田舎の村から街に出てきて
見るもの全てが珍しいという人物を
演じてください。
その感じでキョロキョロするなら
構いません」
豚鼻ながら知性を感じさせる顔の男
―ゴロム―の言葉を受けザインは
再びキョロキョロし始める。
しかし先ほどと違い
挙動不審な雰囲気は消えている。
「珍しいべ、すごいべ、すごいべ。
街はすごいだなやー」
「演じてたらなんだか、気分も
落ち着いてきたべ」
「ザインさん、流石です。
素晴らしいですね」
ゴロムはニコリと笑う。
ザインもゴロムの顔を見て安心した
かのような表情を浮かべる。
ほんとにゴロムって優秀な先生だよな~。
パックスでは、このゴロムの教え方が
悪いってことになってたけど
やっぱパックスってバ〇なんじゃねーの
とか悪態をついてたら不意に
ゴロムから声をかけられた。
「クライドさん、情報収集の方針は
どうしますか?」
「あ、あぁ、方針ね。
"混沌者"に関する情報は俺が集める。
ゴロムとザインは"混沌者"以外の
アンゼロ家に関する情報を集めてくれ。
ゴロム、ザイン頼むわ」
ゴロムはニコリと笑い
「ハイ、かしこまりました。
おまかせください」
と返す。
とそこへ
「なんでだべ、なんでだべ
兄者よりこっちのほうが調べること
多いべ、大丈夫だべか?大丈夫だべか?」
ザインが異論をはさむ。
「ザインさん、大丈夫ですよ。
情報は量も大切ですが、その濃度や
重要度、入手難易度も配慮するんです。
今回は"混沌者"の情報を集めることが
重要かつ難易度が高い。
ということは?」
「兄者が難しいとこを
受け持っている?」
「そうです。流石ザインさん。
私たちは私たちに出来ることを全力で
やっていきましょう。大丈夫です。
ザインさんと私ならできます」
「ん、んだべなー」
目を輝かせてザインがゴロムのほうへ
うなずく。
いやー
ほんとにゴロムって優秀な先生だよな~。
パックスでは、このゴロムの教え方が
悪いってことになってたけど
やっぱパックスってバ〇なんじゃねーの。
■
「あー、知らないねぇ!」
「ひぇっ、スイマセンスイマセン」
「なんでアンタ、
そんなこと聞くんだい?」
「ひっ、(マズイべ身分がばれるべ)」
「しっしっしっ」
「きゃっ、スイマセン、ゴメンナサイ」
「怖いだ、怖いだ、ダメだべ」
「今の人、すごい協力的だったべ
おかしいべこっちのこと見破った諜報員
かもしんねーだ」
「さっき見回り中の警備兵と目が
あったべ、まずいべ・・・」
ゴロムとともに情報取集するザインで
あるがビビりまくっている。
「ザインさん、警戒すること
その感度を上げることは
とっても大切です。
ですが、時にそれを抑え込んで
客観的に考える必要性もあります」
「な、なるほどだべ・・・」
ゴロムによるザインの教育と情報収集は
着々と進んでいるようだ。
スノームの街、酒場スベッ亭。
情報収集を終えた、ゴロム、ザイン
そしてクライドの3人が集まっている。
「で、ザインはどうだった?ゴロム」
「とても優秀で将来有望ですよ」
「えーーーー?ホントにぃ?」
「なんだべ兄者!疑ってるだか!
ゴロムさんの言うこと疑うだか!」
「だって何かあったときに自分の身を
守る術ないじゃん?」
「べ、べさ・・・」
「あ、そこらへんは追々
埋めていきましょう」
「そうだべ!追々埋めるべ!」
「ゴロムの修行きっついよ?」
「え・・・・?」
「ぱきゃって割れるだけじゃすまない
と思うよ?」
「え・・・・?」
「まぁ、そこは追々」
「ひぇっ!」
バカ話をしながらもお互い集めた情報
を整理していった結果以下のことが
わかった。
まず、"混沌者"に関して。
本人の姿を確認することはできなかったが
容姿は、色白で青い髪の美青年とのこと。
「美青年とかそれだけで
敵認定ですわ!!」
「兄者嫉妬が醜いべ・・・」
"混沌者"の職業は魔法使いらしい。
魔法が使える知恵者といったところか。
そして周囲の評価はいつも穏やか
温和な人だそうだ。
「魔法が使える美青年で穏やかとか
もはや全人類の敵ですわ!」
「兄者・・・」
アンゼロ家当主アンゼロ・ドゥオ・ドーガ
とは遠い親戚にあたるらしい。
親戚筋ということは、アンゼロ家の重臣と
思っていたが
アンゼロ家の内部で地位は無く
普段はアンゼロ家の内政、外交、軍事
何もかかわっていない。。
ただしアンゼロ家が魔王軍に攻められたり
計略をしかけられたりして
窮地に陥った時にのみ活動するらしい。
これまでの魔王軍に対する対応で
優秀な知恵者であることは
間違いないのだが
なぜ常に重要な役割を果たさせない
のだろうか?
秘密兵器ということか?
本人が表に出るのを嫌がっているのか?
などという疑問は次の情報で解決する。
ドーガ家の当主は彼のことを嫌っている。
さらに
当主をふくめたアンゼロ家の上層部も
ドーガ家当主の意向なのかは不明だが
彼にあまり良い感情を持っていない。
しかし現場の兵士や実務に携わる者達は
彼のことを慕っている。
優秀な知恵者であり
理由は何かわからないが上から
嫌われている。
そして下から慕われている。
有能上役からしたら有望な人材だけど
無能上役からしたら厄介者以外の何者でも
ないな。
さらに
最近、アンゼロ家当主、ドーガ家当主
彼らともめたらしい。
そして
アンゼロ家に関して。
アンゼロ家当主は、なぜか"混沌者"を
重く用いようとしない。
理由はさっぱりわからない。
魔王軍の度重なる侵攻を防いではいるが
財政、軍事ともに疲弊しており
ドーガ家本体へ防衛設備の強化や
軍備の助成を願い出ているが
却下されており、
不平不満を募らせている。
ガント家、ウージ家の2貴族とは
定期的に連絡をとっており
彼ら3貴族のドーガ家本体に対する不満は
かなりのものである。
ということがわかった。
魔王軍にとってドーガ家攻めは今が
チャンスと言えるのではないだろうか?




