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瓜売り歩く瓜売りの骨

魔王城、ラ・モンド軍専用広間。


「すいませ~ん、遅れました?」


広間の一角に

数人の魔物が立っており

その中にデグもいる。


「いや、大丈夫だ」


デグが声の主へ答える。


「どーもすいませ~ん、フヒヒ」


ペコペコしながら声の主―クライド―

が魔物達の中に紛れ込む。



先だって、デグから広間へくるように

通達が来たのだ。


クライドはデグ以外の魔物の顔を

チラリと見渡す。


ラ・モンド軍入隊の時に一緒だった

新入りの魔物達の一部もちらほら見える。


デグはクライドを含めた魔物達を

ぐるりと見渡し


「任務だ。これが初任務の者もいるな」




クライドがラ・モンド軍の広間に

呼ばれた理由。

―任務である。


まわりを見ると新入りの魔物達は

心なしか緊張している気がする。


初任務だもんなぁ。


クライドにとっては

イコン族、パックス、魔王諜報員

として任務をこなしており

完全なる初任務というわけではない

ため、緊張感ゼロである。

しかし、魔王軍正規兵としては、

初任務である。



「今回の任務は、小麦の換金だ。

それぞれ均等に分量を割り当てる。

やり方は問わない。己の持てるもの

全てを駆使してできるだけ高値で

換金するように」


魔王軍に備蓄されている食料(小麦)の

余剰処理の仕事だ。



はっきり言って雑用だ。

特に難易度が高いという任務ではない。

新入りが行う任務としては

悪くない種別の任務か。


しかしクライドにとってこれまで

こなしてきた任務とは大きく異なる点が

一つだけある。




競争だ。



これほどまで明確に同じ任務を競争する

ということは経験が無い。


これが魔王軍か。


こうやって競わせることで

それぞれの資質や実力を見ることを

兼ねつつ

できるだけ多くの資金を

得ようとしているのだろう。

なんとも効率的な采配だ。



任務そのものは、なんら難しくないが

最大の結果を出すために

さて、どうするか・・・










ボニーの部屋


ボニーとザインは、エイトさんから

ちゃんと資金援助を受けてきたのだ。

その結果借りることが出来た部屋だ。


エイトさん、二人の要請に資金を出すの

結構厳しく渋ったらしい。


二人の交渉力アップのため

という俺の意図を汲んで

わざと渋ってくれたようだ。


ありがたいなー。


まぁそんなエイトさんの意図に気づかない

ザインとボニーの中では

エイトさんはケチということに

なっちゃったけど。



「小麦売り・・・どうすんだべ」


ザインがクライドへ問いかける。

ボニーは心配そうに二人を見守っている。


「エイトさんがその手の仕事で

稼いでるんだよ。イコン族の潤いは

そこから来てるわけだ。

だからイコン族に依頼しても

良いかなー?って思ってる」



本当は自分で売る手配とかしないと

ダメなんだろうけど面倒だから

イコン族に依頼しちゃおうかなんて

考えていると


ボニーが難しそうな顔をする。


やっぱ人任せは、よくないよ!

とか言うのかな?と思いながら

黙っているとボニーが口を開いた。



「えー、けちけちエイトのトコいくの

アタシ嫌だー」



エイトケチ属性付与。



っていうかそっちかよ。



「じゃあ、そうだなー

ウラーという商人のトコいこうか

もともとエイトさんのその手の

仕事のきっかけの人だし

そっちとも知り合いだから」


「兄者は顔広いんだべな」


ザインが感心したような声をあげる。


ボニーもずいっと前に出てきて


「アタシも行っても良いかい?」


「ボニーがかい?

良いけど大丈夫か?

相手は生粋の商人だぜ?」


「大丈夫だよシーノさまの財政を

支えてたのはアタシなんだからね」


「どいうこと?」


「シーノさまってお嬢だろう?

だからお金のことに無頓着だったのさ。

で、見境なしに変な生き物を

連れて帰ってきて

変な名前をつけるだろう?

あれの餌代とかバカにならないんだよ

それをアタシがやりくりしてたのサ」



シーノさまはとってもお優しいから

そのお優しさを陰ながら支えていた。


って言え。まあ良いや。



「へぇーボニーはシーノさまの

"ばあや"みたいなことやってたんだ」


「"ばあや"ってなんだよ!

そこは奥さんとかお母さんとかだろ!

わざわざおばあちゃん扱いすんな!」




ということで3人でウラー家へ向かう

ことになった。






ザンビエ地方

ケイ・ウラーの屋敷兼商店。


相変わらず人でごった返して

活気がある。



「ほぇ~すごいだなや!兄者!」


素朴な顔をした男が凡庸な顔した

男に語り掛ける。


「ほんとだねぇ!クライドは、こんな

トコにしょっちゅう来てるのかい!」


向日葵のような元気そうな娘が答える。


「お前ら田舎者丸出しだから

上見ながらキョロキョロするなって」


ボニーとザインに口では注意しながらも

クライドも心なしか嬉しそうだ。


三人はわちゃわちゃとケイ・ウラーの

屋敷へ入っていく。



「ごめん、クライドです。

ケイ・ウラーさんいますか?」


「あら!お久しぶり!」


店頭にいたケイが笑顔でこちらへ

やってくる。



「聞きましたえ。

魔王軍正規兵という立場に

ならはったって。

ワテの目は確かでっしゃろ?

クライドはんの

成り上がり第一章ってとこでんな」


ケイはニヤリと笑う。


「いやそんな、買いかぶりすぎだよ。

おれ、まだペーペーだし」



「いやいや、ご謙遜、ご謙遜。

それにそこのお嬢さん、クライドはんと

良い仲でっか?恋の道も爆進中でんな。

あんさんもすみにおけまへんな、

ぐふふふ」


とさらにニヤニヤしながらクライドの

脇を肘でつっつく。



「んだ、んだ、んだべー」


となぜか照れるザイン。



「もうそんなんじゃないよう」


と同じように照れるボニー。


その肩をたたきながらケイは


「女は度胸だす!!」




いやーん



・・・小麦売りたいんですけど!!!




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