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無茶ぶり、仕事ぶり、男ぶり、骨しゃぶり

ざんねんななまえのなかまができたよやったね

シーノのはからいで、イコン族の屋敷で過ごすことが

決まったクライド。


与えられる仕事は、シーノの身の回りの世話をちょっと、

とシーノが飼ってるペットの世話。主に力仕事と雑用だ。


同じ雑用係のボニーは、シーノの身の回りの世話。

後はお使いがメイン。


スケベイは、屋敷の掃除がメインで、その他雑用。


これは合理的でそうせざるを得ない役割分担である

とボニーが力説してた。


シーノは女性だ。

だから身の回りの世話の主だったところは、

骨男二人には任せられない。

お使いは、骨を出すわけにはいかない。

だからボニーがこれらの仕事を請け負う。


掃除はスケベイがずーーーーっとやってたから、

そのまま維持。残りの雑用をクライドが引き受ける

というのがこの役割分担の理由だそうだ。


合理的かどうかはわからないけど

ぶっちゃけシーノとの時間は楽しい。まじで楽しい。

お美しい方とご一緒できるなんて楽しすぎ。


仕事だって、正直簡単で楽だ。簡単なのにシーノさまは

いつも褒めてくれる。ほんとしやわせ。

同僚のボニーやスケベイは、バカだが気楽だ。



今日もシーノさまが飼ってるペットのお世話、餌やりだ。

まずは、

文鳥のスットコドッコイにえさを。

次に犬の勅使河原君にも。

シーノさまお優しくて結構ペットかってるから、

割と忙しい。

次から次へとえさを配らないといけない。

どんがら、べろんべろん、

カメのシューマッハ、

牛のデジタルスワイパー。

他にもあと、十数匹に餌をやらないといけない。

どのペットも馴れてるから苦労は全然しない。

引っかかることも何もない


名前が残念なことを除いてな。




仕事も身近な人間関係も、今までと比べたら劇的に良い。

安全も確保されている。この世界で安全が確保されている

というのは非常に重要だ。


ただ、どうしても気にいらないことがある。


それは、シーノさまボニー、スケベイを除いたイコン族の

対応が冷たいことだ。


人をよそ者を見るような目で見る。

もちろん他種族だしよそ者ではあるんだけれど

何か聞いたら答えてくれるがつんけんしてる気がするし、

気が付くとひそひそ話をしてる気がする。

後ろから妙な視線を感じることもあるし。

全体的に冷たい気がする。


これだけがどうしても気に入らない。


基本良い暮らしだけに、これが妙にひっかかって不愉快だ。


シーノさまに相談しても


「気のせいですよ。お仕事頑張ってれば

いずれ気にならなくなります」


としか言ってくれない。


ボニーに聞いても

「そうかい?気のせいじゃないかな?」


スケベイに聞いても

「そうだか?オラそんなことはないと思うだよ」


とどっちも同じ答えだ。


もちろん目に見える不都合は無いから特に何もしないけど。


疎外感を感じるのが気に入らない。





そんなこんなで日々を過ごしているが、

クライドには、どうしても

やらなければならないことがある。


ここは現代社会ではない。弱肉強食の世界だ。

無知は死につながる。


やらなければならないこと。そう情報収集だ。



シーノやボニー、スケベイはもちろん、

時には当主のエイトや他のイコン族にも

話をきくこともある。


他のイコン族に聞くのは少々気に入らないが、

それでも命には代えられない。


彼らからの情報収集でぼんやりとだが色々とわかってきた。


まず、先ほどさらっと言ったがシーノの兄エイトは、

イコン族の当主であるということ。

ゆえに忙しく屋敷で目にすることはほとんどない。


そのイコン族は、魔王軍に正式な所属はしていないが

経済状態などは比較的良いらしい。


そして魔王軍。

魔王軍は魔王を頂点として、4つの軍団にわかれている。

魔王軍に所属した魔物は4つの軍団のいずれかに

所属することになる。


イコン族は偵察や情報収集といった諜報活動が主で

戦闘力が低いため、どこの軍団にも入れないそうだ。


魔王軍は昔から武力を第一にかかげているため、

戦闘力が低いイコン族は軽視されがちだという。

先代の魔王のころは、今よりももっと軽視されていたが


今の魔王になって


―驚いたことだが、魔王は代替わりするらしい―


情報収集を重要視するようになったそうだ。


そのため非公式ではあるが魔王直属になったらしい。

だからエイトが忙しというわけだ。



そして、今の魔王に関して。

現魔王は、多様性を重んじるため種族や出身、血統など

気にせずに優秀であれば抜擢を行うらしい。


実力主義って素晴らしいことだと思うけど、

ちゃんと魔王なオマケ話がついてくる。


優秀な人材はどんどん抜擢して出世するが


しくじったり、役に立たなくなったり、

そもそも役立たずであった場合は

例えこれまでどんなに功労者であっても

容赦なく切り捨てるそうだ。


切り捨てるというのは比喩じゃなくって

文字通り首を切って

そいつの屋敷の前にぶら下げたとか、

しくじったヤツの一族郎党全員処刑されたとか


先代からの4軍団の長だったヤツを気に入らない、

仕事していないの一言で、一族全部放逐したとか。

切った首を自分の部屋に飾ってるとか、

その血を飲んでるとか、そんな噂を聞いた。



現魔王サウロ・ノヴァ。



こわいこわいこわい。

本人いないけど呼び捨てしたら、

それだけで殺されんじゃねーかって感じ。



いつもフルフェイスの兜をかぶって顔を隠しているから

魔王の種族は不明だそうだ。

ただ歴代の魔王は悪魔族なので現魔王も

悪魔族であろうと言われている。


悪魔族ではあるが血統や種族ではなく

完全実力主義を重んじるために

自分の顔を隠してるらしい。


まぁともかく自分はかかわらないようにしよう。


怖いし。









そんなある日、クライドはエイトに呼び出された。


エイトの部屋に入ると既にボニーとスケベイがいた。


「クライド、来たか。入って座ってくれ」


ボニー、スケベイの隣に座ると

エイトが今回の要件を話し始めた。


「今回は、3人で任務を行ってほしい。

任務は、ワズム・ナグル氏にメッセージを伝えることだ」


3人呼び出したり、神妙な面持ちで言うから

どんな重要な任務かと思えば、相手は聞いたことないけど

結局のところいつものように、おつかい&伝言番だ。


こちらの表情を読んだのかわからないが、エイトが続ける。


「単なる伝言役とは思わないでほしい。

ワズム・ナグル氏が率いるナグル族は我々イコン族と違い

破壊工作を主とする。

我々のように穏やかであると思わないことだ。

当主であるワズム氏も当然難しい相手だ」


クライドが

「それってつまり、

ちょっとしたことで気分を害したら・・・」


と問うとエイトは黙ってうなずいた。


「そして、伝えてほしい伝言とは、

既に決まっていたシーノのナグル族との縁談を

無かったことにして欲しいことと

縁談は破談だが、

我々は変わらずナグル族と良好な関係でいたい。

ということだ」


シーノさまの縁談は無しかー、よかったー。


でも破壊工作する物騒なナグル族とは仲良くしたい

ってことかー。


そうだよね、もめごとはイヤだよね。って、

それってめちゃくちゃこっちに都合の良い話じねーか!


場合によっては、相手激怒するじゃねーか、


何だったら、


「よろしいならば闘争だ」


とか言われちゃう案件じゃねーか。


ボニーとスケベイは、難しい顔をしているが、

これまでの付き合いからこの表情の意味がわかる。


よく理解できないけどなんだか難しい話のようだから

とりあえず難しい顔しとけ。って時の顔だ。



つまりこの任務のやっかいさ、物騒さを

理解してないってことだ。まぁお気楽なことで。


クライドは

ボニーとスケベイ二人に心の中で

悪態をつきながら、わずかな望みをかけて

エイトに質問をした。


「それで、先方のワズム・ナグル氏?そちらは、

この話は少しでも存じ上げているんでしょうか?」


ようは、伝言役と言いながらある程度話がまとまっていて、

単なる最終確認なだけってことがある。

その場合は、少々気を付けないといけないけど、

嫌みの一つくらい言われる程度の

比較的楽な仕事になるはず。


その望みをかけての質問だ。


しかし、エイトから絶望の返答がくる。


「いや、全然知らん。つまり大役だな」


ちょっと待ってくれと、色々と抗議をしようと思った瞬間、

ボニーが口を開く。


「そうですよね。大役。うれしいです。

雑用じゃない大役なんてアタシうれしい。」


スケベイもうれしそうに、

「んだ、んだ」

と相槌を打つ。


やべぇこの二人ガチで喜んでる。

たぶんこの仕事のやばさ理解してない。


クライドがちょっと待てと言おうとした瞬間エイトが


「うむ、頑張ってくれ、ボニーとスケベイは下がって良い。

クライドはちょっと話があるから残ってくれ」

と言い、

ボニーとスケベイだけを退室させた。




ボニーとスケベイが去った後、エイトがクライドに

まるで言い訳をするかのように説明をはじめた


「すまん。あの二人は今回の任務の危険さを

理解していないようだから、

ちょっとかわいそうだが退室させた。

お前は今回の任務の危険さを理解してるな。

・・・お前の想像通りだ。シーノの嫁入りは無し、

でも友好関係は築きたいなんて、こっちの都合の良い話だ。

もし仮に私が似たような話を持ち込まれたら

激怒するだろう。

しかし、シーノの嫁入りは我々イコン族にとって

切り札のようなものなのだ。

こういう言い方は良くないだろうが、

ナグル族は元々我々と近しい関係だ、

険悪な空気になっても、魔王様の目がある以上

激しい抗争にはなるまい。

ナグル族と険悪になってでも、シーノという切り札を

別のところで使わなければならなくなったんだよ。

わかってくれとは言わない。

だが我々イコン族の苦しい事情を知ってくれ」


クライドは、質問をぶつける。


「抗争にはならないということは、

伝言役に命の危険は及ばないということですか?」


エイトからの返答は絶望的だ。


「いや、抗争にならないというのは、イコン族とナグル族が

抗争にならないというだけで、伝言役の使いの者がその場で

殺される可能性は当然ある。

それで手打ちとしてくる可能性もある」


一方的な縁談の破棄。でも仲良くしてね。


ふざけるな!


で、ふざけた伝言役を殺しちゃった。ごめんねエヘッ。


こっちもふざけた提案を飲むから、伝言役

殺しちゃったこと許してね。これでおあいこね。

って筋書かよ、、それって


「伝言役は捨て駒じゃないですか・・・」


「その通りだ。だから屋敷の者は誰も

この任務を引き受けたがらない。

シーノが自ら行くと言ったがそういうわけにもいかない。

ゆえに、お前たち3人に白羽の矢を立てた」


「シーノさまは、このことをご存知で?・・・」


「いや、知らん。私の独断だ。

お前ら3人ならこの任務の危険さを理解せずにやるだろう

と思ってのことだ。しかし、クライド、

君はすぐに気が付いた。まいったよ。

私を非道だ、無能だ、と罵ってもらっても構わない。

だが言い訳が許されるならば当主というのは、

冷たい命の計算をせねばならんこともあるんだ」


以前ならふざけるなと叫んだところだが、

クライドはなぜか妙に冷静で

今まで上司というのはふんぞり返って文句だけ

言ってればいい楽な商売って思ってたけど、

組織によっては家族や一族すべての生活が

その肩にのしかかってくるんだ。


ときには全然望んでいない死ね、という命令を

出さないといけないのか。それはそれでつらい仕事だな。


シーノさまにはお世話になってるし、

比喩じゃなく命を拾ってもらったし、感謝しかない。


それに、そもそも自分がここで暮らすことを

OKと言ってくれたのはエイトさんだ。


いつもは威風堂々とした雰囲気を漂わせているエイトが

今日はとても弱々しく見える。

そんなエイトをみながらクライドは


「わかりました。この任務お引き受けします。」


と思わず言ってしまった。

答えてしまった後、しまったと思ったが仕方がない、

腹をくくって自分なりに抵抗してみるかと考えていた。


クライドのあっさりともいえる返答に

エイトは驚いた顔をしたが、

その後いつもの当主の表情に戻り


「うむ、貴殿の心意気感謝する。検討を祈る」


と答えた後、少しうなだれ気味で


「すまん、クライド、感謝する」


と頭を下げた。








出発の日。


「準備できたかい?

もしものためにおやつとパンツは重要だよ!」


「バナナはおやつに入るだか?」


「はいるね、バナナはおやつに、だって甘いもの」


「だどもバナナをおやつに入れると予算オーバーだべ、

ここはバナナをおやつに入れないことで

予算やりくりする方向で」


「だめだよ、ルールを守ることが大切なんだ」


お出かけ気分でウキウキの二人を横目に見ながら、

クライドの気持ちは真っ暗であった。


これから行う任務は命がけ、

それも命が無くなる方向にきわめて傾いている

任務だからだ。


あれからずっと考えていたが、何せ情報が少ない。


相手の名前がワズム・ナグル。

ナグル族の当主でナグル族は破壊工作を行う物騒な連中。


当主のワズムも当然物騒な輩。


屋敷の誰に聞いても、これくらいしかわからなかった。

もっと詳しいであろうエイトは忙しいことに加えて

あれからシーノと揉めまくっている。


正直お手上げだ。


生存の可能性を上げるために何をすれば良いのか?

どんな対策を立てれば良いのか?

さっぱりわからない状況であった。


お気楽な二人に少々腹も立つが、自分がしくじれば

二人ともおしまい、という現実が重く肩にのしかかり

クライドはこの場から逃げ出したかった。


もっとも逃げるといってもどこに?ではあるが。



道中、ボニーとスケベイは相変わらず

おバカなやりとりをしていたが、

あとわずかで、

ワズム・ナグルの屋敷に到着するであろうときに

そのやりとりが荒くなり、急激にもめはじめた。


「だーかーら、

バナナはおやつにはいんねーっつってんの!!」


「それは横暴だべ、フルーツの栄養素は必須で

お菓子のような娯楽じゃないだ!」


おいおいおいおい、と若干嫌気がさしながら、

言い争いを止めるためにクライドは

ボニーとスケベイの間に入った。


ボニー、クライド、スケベイという順番になり、

クライドが真ん中に位置することになった。


そのまま、二人をなだめているうちに

ナグル族の屋敷へと到着した。


ナグル族屋敷には禍々しい雰囲気がたちこめ、

その門には殺気立つ門番が立っていた。


「そこの3人、とまれ!!ここはナグル族の屋敷ぞ!」


クライドとスケベイは怒声に思わず

すくみ上ってしまったが、ボニーが一歩前に出て


「アタシ達は、イコン族の使いできた!

ワズム・ナグル様に伝言がある!」


と告げた。


門番は、聞いているという顔をし


「ワズムさまと面会できるのは、責任者のみだ!

責任者は・・・」


と3人を見渡した。



クライドは、ボニーしか伝言の場に出られないのはまずい

どうすれば良い?


ととっさに頭を巡らしていたが、良い策が浮かぶ前に、

門番が


「オマエが責任者だな、入れ」


と指さし告げた。


ボニーが!!まずい!!!


と門番の指さしている方向を見ると、

その指はクライドを指していた。


え?ナンデ?


「中央に立つスケルトン、オマエが責任者だな。入れ」


どうやら、門番は、堂々と対応したボニーではなく、

偶然にも真ん中に立っていたクライドを責任者だ

と考えたようだった。


全然事情を知らないボニーやスケベイでは、

最悪の事態にしかならない!なんとかせねば!

と思っていたが


本当にクライド自身が交渉の場に立つことになり


「え~っ」


という気持ちではあった。



ばななはおやつにはいりますか?

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