骨々しい活躍
怪我の功名と言うか、何と言うか
非公式に魔王を警護するという行為は
カーツ・シーヴァに因縁をつけられ
それが噂話となり
その結果
魔王公認の行為である
ということが周知の事実となった。
魔王の周りには
強力な結界が張られている。
魔王は世界の隅々が見渡せる能力を得た。
不用意に結界に侵入した物は
骨まみれになる。
真実とも虚実ともとれる噂話となって
クライドが仕掛けた結界は
魔王軍及びその周辺国へと伝わった。
イコン族やナグル族、そしてパックスが
周辺諸国へ噂話をまき散らした結果だ。
魔王周辺に結界があるということは
秘匿するべきことと考えていた
クライドは、かなり焦ったが
結界を張ったという事実は
いつか必ず周知の物になる。
ならば、こちらから虚実織り交ぜた
噂話をまき散らし、周囲をかく乱、警戒
させ本来の目的である魔王の警護という
任務をより強固にしよう。
という話がパックスのゴロムから
発案され、イコン族、ナグル族も
それに賛同したと聞き
なるほど、ということで
クライドは納得したが
「あれ?俺置いてけぼりじゃね?」
と一瞬思ったが深く考えるのはやめた。
イコン族や、ナグル族の活動のおかげで
クライド自身がたとえ
雑用でこき使われていても
イコンの屋敷で遊んでいても
任務で遠隔地に出かけていても
魔王がどこにいるかが
クライドの元に流れ込んでくる。
そして監視対象である
魔王反乱軍である先代派、
現在争っている最中であるドーガ家の
おおざっぱな動きも入ってくる。
そんなこんなで
当初の計画は達成している。
魔王様への暗殺や不穏な動きは
あれ以来無い。
■
ということで、クライドは
イコンの屋敷、シーノの部屋へ来ている。
今日は珍しく魔王がいない。
久々にクライドはシーノと二人きりだ。
シーノは体調があまりすぐれないようで
ベットに体を横たえたままであるが
クライドの訪問を快く迎えてくれた。
「いやーシーノさま、それでですね
タルマ家のマレーっておっちゃんが
凄い良いヤツでね、タルマ家では
良い馬が取れるって
教えてくれたんですよー」
でれでれとしゃべるクライドを
シーノが優し気に見つめながら
相槌を打つ。
「そうですか、じゃあそのマレーさんに
何かお礼をしなければなりませんね。
兄にお礼の手配をしてもらうよう
私から頼んでおきましょう」
あわてて首を振りながらクライドが
「いやいやいやいやいや
大丈夫ですよ!シーノさま!
先方はお金とかはあんまり興味ない方
なので」
クライドの返答を受け
「クライド、お世話になったら
ちゃんとお礼しなければいけませんよ」
とシーノがちょっと眉間に
しわをよせながら言う。
まるで子供に言い聞かせる母親のように。
「あ、だいじょぶです、だいじょぶです。
お礼そのものはちゃんとしてるんで
ホントですよ」
「本当ですか?嘘ついちゃだめよ?」
クスッと笑うシーノ。
「だいじょうぶですよーデヘヘヘ」
みっともなく笑うクライド。
「あー、あとですね、そのマレーさんの
紹介でマレーさんの上司に
あったんですよ」
「まぁ、お偉い方と!
ご無礼はしませんでしたか?」
「ハイ!そこらへんはちゃんと、
それでですね、そのマレーさんの上司
みんなには自分は背が大きいって
言ってたのに実は小柄だったんですよ。
それで、すごい疑り深い人でね。
チビなのに巨体って嘘ついてしかも
疑り深いって見た目もだけど
心もちっさ!っておもったっすよ!」
「コラ、クライド、お相手を
悪く言っちゃダメですよ。
クライドだって気にしてること
あるでしょう?その方にとって小柄
というのはとっても気にすること
なんですよ。お相手の気分を害したり
してないでしょうね?そんな子に
育てた覚えはありませんよ?」
「だいじょぶです!マレーさんの上司
シュウさんって言うんですけど
すっごい仲良くなりましたから。
さっきの話じゃないですけど
ちゃんとお世話になったんで
お礼の品とか差し上げましたよ!」
「まぁ、良いことですよ、クライド」
クライドはでれでれと
いつまでもシーノに自分の任務の
話をしていた。
もうずっとシーノさまタイムで
良いのに、なんてクライドが考えていると
部屋の外に気配が漂う。
「それでは、シーノさま
今日はこれで失礼します。
お体にお気をつけてくださいね」
と、クライドはでれでれと話ていたのを
切り上げてシーノに挨拶する。
「ありがとう、クライド。
あなたも体には気を付けるんですよ」
「ハイ!それでは失礼します!」
クライドは、扉を開け部屋を後にする。
扉が閉まるまで、シーノは優し気な
眼差しをこちらへ向けていた。
扉を閉めた後
クライドは日に日に弱っていくシーノの
ことを考えながら
じっと上を見つめていた。
「クライド様!」
足元から声がする。
クライドは上を見つめたまま
「うん、わかってる。ご苦労、要件は?」
と足元に跪いているイコン族の者に
声をかける。
「はっ!魔王様からの伝言でございます。
ドーガ家当主が亡くなったとの噂。
すぐドーガ家へ潜入して真偽のほどと
現在のドーガ家の内部事情を探るように。
とのお申し付けにございます」
「わかった、すぐ潜入任務に入る。
あ、イコンとナグルの連携は変わらずに
お願いするよ」
「はっ!」
イコン族の者は、短く答えると
即その場を立ち去った。
「忙しくなるな・・・・
ここには
しばらく来れそうにないや・・・」
クライドはそうつぶやくと
イコン族の者と同様に素早く
その場を立ち去り、駆け出した。




