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四角い骨の刺客の資格

イコンの屋敷からの帰り道。

クライドは魔王が騎乗する馬の轡を

引いてトボトボと歩いていた。


と、物陰より無数の矢が猛烈な勢いで

魔王へ向かい飛んでくる。


「危ない!」


とっさに飛び上がってクライドは

矢を叩き落す。


しかし数本の矢ががクライドの後ろ

魔王の元へ辿りつく。


まずい!と魔王のほうへ振り返る。


魔王へ矢が突き刺さる!

と思っていたクライドであったが


数本の矢は魔王の元へたどり着く直前

音もなく消えた。


はじいたのでもなく

防いだのでもなく

ただただ、消えた。


何が起こった?

と魔王のほうへ目を凝らすクライド

であったが


「骨、後ろから刺客がくるぞ。

ぼーっとするでない」


という魔王の言葉とともに

後ろから猛烈な殺気が近づいてくる

のがクライドにもわかった。


素早く戦闘態勢をとりながら

振り返ると


翼が生えた魔物が

巨大な剣を振りかぶり

クライドの頭上を通り過ぎようと

していた。


魔王は丸腰、鎧もつけていない。

なんとか防がねばと

翼の魔物に飛びかかろうと

したクライドであるが

それよりも速く

魔王の頭上に巨大な剣が振り下ろされた。




しかし巨大な剣の刃は

魔王の顔の手前でピタリと止まる。


魔王が人差し指と中指

二本の指で剣を軽々と止めていたのだ。



「フゥーハハハ、ナーマス!

この魔王の首!それほど安くは無いぞ!」


と言うや否や

巨大な剣の刃は一瞬にして消えた。


ナーマスと呼ばれた翼の魔物は

驚愕の表情を浮かべている。


そこへすかさず

クライドがその腹へ強烈な蹴りを

ぶち込む。



ナーマスは、ぐふぅという声をあげ

口から血を吐き出し

後方へ吹っ飛んでいく。


内臓に強烈なダメージを与えた。


蹴りを打ち込んだクライドは

そう直感する。


ドサッと地面に倒れこんだナーマス

であったが、すぐさま立ち上がり

口から血を吐き出しながら

口惜しそうな表情を浮かべ

飛び去ってしまった。


「あ!まてこの野郎!」


クライドは追いかけようとするが


「待て骨!警護の者が私を置いて行って

どうする!」


と魔王の声が聞こえた。



「今の魔物は・・・?」


「ナーマス、以前は魔王親衛隊に

おった者よ。奴の父親は先代派の重鎮

でな・・・」


「じゃあ、食えなくなって

その恨みで・・・・」


「いや、ナーマスは

ラ・モンド軍で優秀に勤めておった。

食えなくなるということは無い」


「え?じゃあラ・モンド様も先代派!?」


「いや、事は先代派の内乱などという

単純な話ではないもっと根深い

複雑な事情があるやもしれんな・・・」


魔王はナーマスが飛び去った

空をじっと見つめながらニヤリと

笑いながらつぶやいた。



クライドは背筋にゾクリとした物を

感じたがそれが魔王に対してなのか

何になのかは

自分でもよくわからなかった。






魔王城、夜

ジュード・アークの部屋にある

バルコニー。


暗闇の中には二人の

高位不死者(ハイアンデット)がいた。


ジュード・アーク軍軍団長

ジュード・アーク。


ジュード・アーク軍幹部

ベルザ・アーク。



「ベルザ、あなたはどれだけシーノという

女に執着しているのですか。

しかも魔王様を殺してなんて

大それたことを・・・」


ベルザ・アークは頭を下げる


「はっ!しかしこの乱に乗じれば

ジュード様の思惑とも一致するかと!」


ジュードは不愉快そうな顔をして


「誰がそんなこと言いましたか?

めったなことを言わないでください」


と冷たい視線をベルザへ浴びせる。



とそこへ

ドサッと音をたてて

ナーマスが空から落下してきた。


口から血を吐きながら倒れこんでいる

ナーマスを見て


「ほらみなさい、失敗した。

しかもここへやってきた。

これでは我々が

あらぬ疑いをかけられてしまう。

ベルザ?どうするつもりですか?」


「はっ!」


頭を下げたベルザが倒れこむナーマスへ

近づく。


「ベ、ベルザ様・・・

申し訳ありません・・・」


とナーマスはかすれた声を上げる。



「ナーマス?

私もジュード様もお前とは何の

関係も無い。今日はお前が勝手に

やった。そして偶然我々の前に

落ちてきた。そうだな?」



「ま、間違いありません・・・

ど、どうか治癒の魔法を・・・」


「苦しいか、うむそうだな」


ベルザはニコリと笑い

ナーマスの腹へ手をかざすと

その手がぼんやりと光り出す。


するとナーマスが驚きの顔をし


「ベ!ベルザ様!!!!」


と苦悶の表情を浮かべた瞬間


一瞬にして砂となった。


分解魔法(ディスインデグレイト)


物体を一瞬で分解する高レベルの

魔法だ。



ベルザは、ナーマスであった砂の前から

立ち上がると


「ジュード様、何事もございません

でした」


とジュードへと頭を下げた。


ジュードは


「そうですね。何事もなかった」


と言い、部屋へ入っていった。





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