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ボーン連相

「お気をつけて、帰りやしー」


屋敷の入口まで見送るケイ。

ニッコニコの表情で手を振っている。


ザンビエ商人の中で五本指に入る

規模を持つウラー家の当主自らが

見送る相手とは、どれほどのVIPなのか?


どこかの巨大な勢力の当主か?

その代理人か?

どこぞのお偉いお役人か?

それともトップクラスの同業者か?

はたまた愛しい人か?




「はい、どーも、よろしくー、またー」


ケイのあいさつに答え、一人ふらーっと

帰途につく、ぱっとしない凡庸な顔の男。


そう、この物語の主人公クライドである。



ケイから情報を得るためと

関係維持のために定期的に行う

訪問の帰りだ。




ザンビエ商人の中で屈指の実力者である

ケイ・ウラー、その人がなぜ

こんな貧相な男をわざわざ見送るのか?




イコン族、ナグル族を巻き込んだ

貿易ビジネス。

そして、ノア家からの貴人特有の

情報とお墨付き。


これらをケイは他のザンビエ商人達を

出し抜いて手に入れた。


今やウラー家の商売は

飛ぶ鳥を落とす勢いと言っても

過言ではない。



それをもたらしたのが

誰であろう、クライドである。


もちろんケイがクライドを信じて

賭けたからこその結果であるし

そもそもクライドがケイに

豊かさをもたらせたのは偶然にすぎない。



それでも丁重にあつかいたくなるほど

ウラー家は潤っている。




おかげでクライドは魔王からの指令である

ザンビエとの顔つなぎは完璧にできた

と言える。


そしてもう一つの指令であるリュウとの

顔つなぎ。これもまた完璧である。


リュウの一つであるノア家。

当初は少々ごたついたが

今では以前にもましてケイからの

支援を受けることができている。

これもまたクライドの働きである。


おかげで、ノア家当主である

ガーチェ・ノアのクライドに対する信は

過剰なほどと言っても良い。



御庭番として、魔王からの任務。

完璧にこなせた!と自負している

クライドであった。



「おれ、凄くね?流石じゃね?

褒められまくりじゃね?」


ルンルン気分でクライドは

魔王城下にある店や人々に声を

かけながら調子に乗って魔王城へ向かい

魔王庭園

―御庭番クライドにとっての謁見の間―

へと報告に向かった。









「たわけがぁぁぁ!!!

途中報告をせぬかぁぁぁ!!!!!」



ぎぃぇぇぇぇぇぇぇぇ

「すいません、すいません、

すいません、すいません」





魔王庭園。

魔王の怒声という巨大な雷が落ちていた。


一通りクライドを怒り飛ばした魔王は

諭すように語り掛ける。


「良いか、骨?

指示を出した以上、上の者は

常に指示された側がどうなっておるか

気にかけておる。

お前がいかなる立場になろうとも

現状がいかなる状況であっても

上司から指示されたならば

それを定期的に途中報告せねばならぬ」



「ですが、結果だけ知れれば良い。

嫌な報告なんか聞きたくない。

忙しい、めんどくさい。

というお考えは無いのですか?」


クライドは、会社員時代の嫌な

経験を思い出して魔王に問う。



魔王は平時、頭巾を常にかぶっており

目元だけが見える。そのため

その表情をうかがい知ることは

できないのだが

クライドの問いに対し苦笑に見える

そんな空気感をにじませ


「ふんっ、どこのブラック上司だ。

骨よ、お前は私をそんな無能と思って

おるのか?

私はお前にとってその程度の無能か?」


と優しく語りかける。


「め、めっそうもございません!!

で、ですが悪い報告、嫌な報告を

聞きたくないのが人情では?」



「もちろん、できれば悪い報告など

聞きたくはない。

だが悪い報告こそ素早く欲しいのだ」


平伏していたクライドだが


「へっ?ナンデ??」


と思わずあほ面をあげてしまう。



「悪い報告ということは、任務が

うまくいってないということだ。

ならば何か手段を講じねばならん。

フォローは早ければ早いほうが良い。

 へいはしんそくをたっとぶ

と言うではないか」



「・・・・。

平和だしん。

ソックスぶっ飛びだしん。

何ソレ??」



「たわけ!!!!!!!

兵は、神速を貴ぶ。だ!!!

空耳にもほどがあるわ!!!!!!」


ぎぃぇぇぇぇぇぇぇぇ

「すいません、すいません、

すいません、すいません」





ひとしきり謝ったあと

しばらく空中に視線を泳がせていた

クライドがやがて


「戦いとは常に2手3手先を読むもの

なのだよ?」



魔王は手をひらひらさせながら


「あぁ、もうそれで良い。

だいたいあってる」


と流した。



そして、表情を引き締め


「骨!報告を怠った罰だ。

すぐ次の任務へ移れ!

次の任務は

ドーガ家への工作任務だ。

2つの任務を同時実行せねばならん。

一つは破壊工作。

もう一つは流言工作。

これを同時にお互い息をあわせて

行う必要がある。

破壊工作をナグル族へ。

流言をパックスへ実施させよ。

双方と連携をとらせよ!

双方と顔見知りでキサマならば

容易にできよう?」




「はっ!!」


クライドは頭を下げる。





魔王城を出たクライドは

どの順番で何て言って任務を

進めようかと思案する。


「別に難しい任務じゃないんだよね。

ナグル族もパックスも顔見知りだし。

でもせっかくだからパーフェクトに

達成したいし。

それにシックスの大将とは久々だし。

どういう順番で進めようかな・・・」



なんてブツブツ言いながら

魔王城、城下町を歩いていると


向こうからドラゴニュートの巨体

―カーツ・シーヴァ―

がのっしのっしという足音が

聞こえるかのように

取り巻きを連れてやってくる。


あ、くそ爬虫類野郎。

あいついっつも取り巻き連れてんな。

さびしんぼうやな。



見るだけでイラっとするクライド

であるが、素知らぬ顔をして

すれ違おうとしたが


まさにすれ違おうとしたその瞬間

取り巻きの一人である

蝙蝠の羽が生えた男

―カジーという名前だったか―

が、クライドのほうへ顔を向け


「オイ、雑魚!上官へ

あいさつせぬか!!」


と威嚇する。


「上官?私は魔王様直属ですので

ちょっと何言ってるかわかりません」


クライドも負けてはいない。



カーツがジロリとクライドを睨み


「骨、キサマ!魔王様に仕事の報告を

ちゃんとしておるのか!」


と威圧する。


「報告?ちゃんと途中報告も

していますが何か?」


さっき魔王から怒られたばっかりの

大嘘だ。



「途中報告ぅ?」


カーツはギロリとクライド睨みつける。


やべぇ嘘ついたのばれたかな?

などとクライドが思っていると


「馬鹿が、結果だけ知れれば良いのだ。

魔王様は、お忙しいのだ。

そんなこともわからんのか、愚か者が!」


とカーツが言うと

取り巻き達がそれにあわせて

ゲヘヘヘと、いかにも小悪党な笑い声を

挙げる。


「はぁ、そうっすか・・・」


クライドは、口では返事しながらも



魔王様が

途中報告が面倒などと言うのは

どこのブラック上司だ。

って言ってたけど


ここにおったわ

ブラック上司。



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