危機一骨2 骨のメル友
はぁはぁしたよ
モリアート家領内、森の近くにあるヒカン村。
農業を営む平凡で平和な村だ。
村から煙が上がっている。
食事の準備だろうか?
いや違う、悲鳴や怒声が飛び交っている。
「そら、そらそらーーー、さっさと出すもん出せやぁ!」
巨体の男が、幅広の曲がった刀剣を振り回す。
―青龍刀―
その重さと刃の鋭さで抜群の切れ味がある特殊な剣だ。
青龍刀を持った男の周りには無数のゴブリンや
剣をもった人間が同様に村人たちを追い立てる。
めちゃくちゃに追い立てているのではなく、
どこか一方向へと村人たちを追い立てているようだ。
しかし逃げ遅れた村人たちの首は青龍刀にあっさりと
切り落とされる。
村の中央の広場
―普段は寄合や祭りでも行うのだろう―
そこへ村人たちは追い立てられていく。
広場から少し離れたところに、
ダークエルフの男が立っている。
杖を持っていることから魔法使いと思われる。
広場に村人たちが逃げ込むのを確認すると
ダークエルフの男はニヤリと笑い、杖をかざす。
「毒雲」
ダークエルフの男が持つ杖の先から、
紫色の毒々しい雲が現れ広場に逃げ込んだ村人たちを
瞬く間に包み込んだ。
グェ、ゲェ、ブフォ、グファ
村人たちは雲と同じように顔が紫色に変わり、
首を押さえ吐くしぐさを繰り返す。
グウェ、ゲボ、グボ。
次々と口から血を吐出し倒れる村人たち。
"地獄絵図"そんな光景が目の前に現れていた。
それらをニヤニヤと見つめる青龍刀を持った男、
武装したゴブリンや人間達、そしてダークエルフの男。
そう山賊達である。
「主だった男どもはもういませんね、スクルド、
そろそろ刈り取りといきましょうか」
ダークエルフが、青龍刀を持った男に声をかける。
青龍刀を持った男、スクルドと呼ばれた男はうなずくと
「よーっし、刈り取りだぁぁ!!てめぇらぁぁぁぁぁ
根こそぎ、いけ」
うぉぉぉぉ、という怒声やグヒヒヒヒという
下卑た笑い声とともに山賊達が、村々に散っていく。
「そるぁそるぁそるぁ、おじょうちゃん逃げないと
お腹ぷすって刺しちゃうよ~グヒヒ」
あるところでは、幼子が追い立てられ、
腹を串刺しにされる。
「ぎぃやぁーーーやめてーーーお腹の子だけはーーー」
エルフの女の絶叫が聞こえる。どうやら妊婦らしい。
「おい知ってるか?エルフの胎児って寿命が延びる薬
っつって高く売れるらしいゼ」
「そうなのか?へぇー金になるのかー」
シャコンと剣を鞘から抜き出す音。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
山賊は、引き裂かれた中に手を突っ込み、
真っ赤な何かを取り出す。
「これ、これ」
「本当に寿命が延びるんか?」
「そんなわけねーだろ」
「「ぎやはははははははは」」
「ぃやぁぁぁぁぁーーーー」
女の絶叫だ、先ほどとは別のエルフの女だ。
草むらに倒れている。
その足の間に一人の山賊が乗っかって動いている。
「おい、そろそろ代われや」
「はやくしろや」
「あんまりやりすぎんなよ、
高く売れなくなっちまうからな」
それを数人の男達が見守り、はやし立てる。
「なぜ?なぜだ?なんの恨みがあってこの村を襲うんだ!」
一人の村人が震えながら抗議の声を上げる。
「なぜ?それはシャーロン家のお坊ちゃんのせいですよ。
さんざん汚れ仕事させといて、お役御免。
冗談じゃありません。
私達を物か何かと勘違いしてるんじゃないんですかねぇ」
ゴブリンだ。巨大なメイスを持っている。
「あー思い出しただけで腹が立ってきた、
そこのアンタ!アンタがくだらない質問するから悪いのよ、
責任とりなさい!」
というと、巨大なメイスを村人の頭へと
勢いよく振り下ろす。
ぐちゃ、
スイカが割れたような、そんな光景が目の前に広がる。
「ご、ご慈悲を」
老人が、跪いて命乞いをしている。
命乞いをしている相手は小柄な男だ。
両手に短剣を持っている。
命乞いしている老人は、その短剣で、何度も切られたのか
いくつもの切り傷が全身にできている。
小柄な―ホビット族の―
男は、短剣を舐めながら老人に近づく。
「いや・・・だね、キシシシ」
シュッシュッと短剣を振るうと老人の身体に
無数の切り傷が出来る。
「知ってるか?この世は、殺っていいヤツと、
殺られるヤツがいるって」
「ひ、ひ、ご慈悲を」
「俺は、殺っていいヤツ。お前は殺られるヤツだ!
キシシシシ」
村の中央。
スクルドと呼ばれた青龍刀を持つ男と
ダークエルフが立っている。
「スクルド、そろそろ行きますか?」
「いや、もう少し奴らを発散させないと
後々面倒なことになる。
奴らは獣と変わらんからな。
フェンル、お前はもう良いのか?」
フェンルと呼ばれたダークエルフの男は、ニヤリと笑い
「この悲鳴、この匂い、この空気、それで満足ですよ」
と、うっとりとした表情を浮かべる。
そこへ、巨大なメイスを持ったゴブリンが近づいてくる
「もう、いやねぇ汚れちゃったわ」
スクルドが腕を組んだままゴブリンへ声をかける。
「そろそろ満足したか?パッシャー」
「えぇ、満足よ、ロークの野郎は
まだ、じじいを切り刻んでるから
もうちょっと時間かかるかもね」
村のあちこちで、いまだ悲鳴や絶叫が聞こえてくる。
■
山賊の根城、モリアート家領内にある山の中腹の洞窟。
山賊達が宴会をしている。
ヒカン村を襲い食料や物資など略奪の限りを尽くした、
その慰労会であろう。
あちこちで下卑た笑い声や、先の村の略奪行為を
武勇伝のように語り合う姿が見られる。
宴会の上座には、4人の男が座っている。
青龍刀をあやつる巨体の男スクルド。
魔法使いダークエルフのフェンル。
巨大なメイスを使うゴブリンのパッシャー。
短刀使いのホビット、ローク。
彼らがこの山賊団の主力4人だ。
皆が宴会で大騒ぎしている中
入口から一人の山賊がやってきて、スクルドに耳打ちする。
スクルドは一瞬目を見開いたが、ほぅと嬉しそうな顔をし、
そっと席を立つ。
「で、どこの者だと言った?」
宴会場を出たスクルドは、
先ほどの山賊の先導で洞窟内の道を歩く。
「タルマ家の使いと言っていました」
「なんと!タルマ!」
スクルドは嬉しそうな顔をして足早に歩き、
洞窟の入口へと急ぐ。
「知ってるか?
タルマ家というのは古代統一王朝の時代から連綿と続く
由緒正しい家だぞ!
そこに仕える者達はサムライと呼ばれ尊敬される
高貴な存在なんだ。
そこが俺たちに仕官の話とはな!!!」
ウキウキという表現がぴったりの足取りで
入口へと急ぐスクルド。
洞窟の入口には、一人の男が立っている。
男はスクルドを確認すると会釈し
「お忙しい中お呼びたてしてスイマセン。
スクルド様ですね?
わたくし、タルマ家のシンザエモンと申します」
と、何か身分証のような物を見せる。
スクルドは、タルマ家の使いという男をじっと見る。
何の特徴もない凡庸な顔をした男だ。
「あぁ、この山賊団を率いる頭目だ」
と言いながらスクルドを案内した山賊を洞窟内へ追い払う。
「お呼び立てしたのは他でもありません。
聞いてらっしゃると思いますが、仕官の話です。
ぜひ、タルマ家に」
一瞬ニンマリと笑みを浮かべたスクルドだが、
すぐに厳しい顔を作り
「なるほど。で条件は?俺たちは安くないですからな」
と答える、しかし言葉とは裏腹に嬉しそうな空気感は
隠せない。
「この先のテントに私共の上官が待っております。
細かい条件もありますが、非常に申し上げにくいお話も
ございますのでここではなく
テントに来てはいただけないでしょうか?」
「ほう、なるほどでは伺いましょう」
スクルドが動こうとすると、タルマ家の使いシンザエモンが
手を出しとどめる
「あ、スクルド様、
フェンル様、パッシャー様、ローク様
4名様全員で来ていただけませんか?
たしかこの4名様がこの山賊団の主力でしたね」
とシンザエモンがニヤリと笑う。
「ほぅ、そこまで知っているのか」
スクルドはやや警戒の色を浮かべる。
「タルマ家ですから。諜報はお手の物。
それに仕官してもらいたい相手のことを
何も知らないなんてありえませんでしょう?」
にんまりと凡庸な顔に笑みを浮かべる。
「それと、非常に申し上げにくいお話の件も
関係ございます」
「うむ、さっきから言っている、その申し上げにくい件
というのは何だ?ここでは言えんのか?」
スクルドが苛立ちを隠さずに告げる。
「細かい話は上官としていただきたいのですが、
概略を申し上げますと、そちらの山賊団の構成員約半分は
強さと協調性に疑問が残ります。
ゆえに、構成員を現在の半分にしていただくこと。
これが仕官の条件なのです。リストラですね。
これが申し上げにくいお話です。
長い間労苦をともにしたお仲間ですから心苦しいでしょう。
ですが、この条件を飲んでいただけないなら、
このお話は無し・・・」
「いや、かまわんよ。半分にして構わんよ」
食い気味にスクルドが話を遮る。
「さようでございますか、では構成員を半分にすること。
タルマ家に仕官すること。
これらを4名様全員で承諾していただきたく。
スクルド様おひとりの承諾で良いとお考えと思いますが
我が上官は4名全員の承諾がなければ仕官の話は
無しにすると考えております」
「わかった!4人を呼んでこよう!すぐに」
■
タルマ家の使いシンザエモンを先頭にして
スクルド、ローク、フェンル、パッシャー
の4人が続く。
4人とも心なしか浮足立っているかのように見える。
山賊の根城である洞窟を出て、しばらく森の中を歩くと
やがて木々が開けた場所に出てきた。
そこにはテントが一つぽつんと立っている。
シンザエモンが、テントに近づき
「連れてまいりました」
と声をかけ、テントの横に立ち4人に中に入るように促す。
スクルドがテントの中に入ろうとするとシンザエモンが
小声で囁きかける。
「あ、スクルド様、よろしいでしょうか
ちょっと例の件で、、、、人員の削減の・・・」
シンザエモンは、
他の3人にどうぞテントの中へお入りくださいと声をかけ
スクルドをテントからやや離れたところへ連れていく。
スクルドを見ていた3人だが、テント内から
「どうした、なぜ入らない!」
という声が聞こえ、慌てて一人づつ並んで入っていく。
短刀使いのホビット、ロークがテントの中に入ると
何もなく、ただ小ずるそうな顔をした男が
ポツンと立っていた。
ん?と首を傾げた瞬間、ロークの目には
小ずるそうな顔をした男が黒い棒のような物を持って
近づいてくる様子が見えた。
それがロークが認識できた最後の映像であった。
テントの中にいた小ずるそうな顔をした男が、
ふわりとロークに近づいた瞬間、ドスッと
手に持った棒をロークの左目に躊躇なく突き立てた。
ロークの手足がピンッと張る。
目に突き立った棒を右に左にグリグリと動かしながら
下卑た声で
「殺っていいのは殺られる覚悟があるヤツだけさ、
ギヒッギヒヒヒヒ」
と笑う。
突き刺さった棒が脳まで達しているのか、
棒をグリグリと動かすたびに
うつろな表情のままロークの身体がびくびくと痙攣する。
あまりにも自然な動きだったため、
ダークエルフのフェンルは、
一瞬何が起きているのか理解できなかった。
罠だ!!
「罠だ!戻れ!!」
フェンルは後ろを向きながら、叫び、テントの外に出る。
そこには、アジの開きのように左右に分かれて倒れる、
ゴブリン、パッシャーの姿があった。
文字通り真っ二つにされたパッシャーの死体のそばで
剣を構えた青年が立っている。
「シャイアぁぁぁぁ」
ダークエルフのフェンルは、剣を構えた青年を憎々しげに
にらみつける。
と、後方のテントから小ズルそうな男―ゴブリンのワン―
がニヤニヤと笑いながら出てくる。
「黒いエルフのニーチャン、ハイ、あうとぉー、
ギヒヒッヒ。背中が、がら空きダゼ。
ニーチャンどうだい?この悲鳴、この匂い、この空気、
これで満足かい?ギヒヒヒヒ
さぁ、シャイアと戦いなよ?憎いんだろぉ?
見守っててやるからさ、ギヒッ」
フェンルはクソッとつぶやくとシャイアに向き直り
戦闘態勢に入る。
この様子をテントから離れた木陰でシンザエモンとともに
見ていたスクルドは慌てて青龍刀を抜きながら、
フェンルのもとへ駆けだそうとする。
しかし一歩も動けない。
誰かがスクルドの腕を押さえている。
スクルドが腕の方を見ると、シンザエモン―クライド―が
腕を軽く押さえている。
「まぁまぁ、あっちはあっちで一対一でやらせとこうよ」
とクライドはニコリと微笑む。
「こっちも一対一で殺ろうか?」
クライドのこの言葉と殺気にスクルドが
はじけ飛ぶように離れる。
「何者だ!」
腰を落とし、青龍刀を油断なく構えながらスクルドが叫ぶ。
「タルマ家だと思った?残念アンチャン達を取り締まる
奴らでしたー」
クライドがその凡庸な顔(幻術で作られた顔だ)
でへらへらと笑いながら手を振る。
その隙を見て、スクルドは一気に間合いをつめ
青龍刀をブンッと振るう。
が、そこにはクライドはいない。
耳元で声が聞こえてくる。
「何をもってタルマ家が雇うと思ってたの?
なんでタルマ家が一介の山賊の存在を知ってるわけ?
なんでタルマ家が山賊ごときを雇うわけ?」
バッと声が聞こえた反対側にスクルドが飛び去る。
クライドはへらへらと立っている。
態勢を整えたスクルドは再び青龍刀を構え
一気に距離をつめ、刀を振るう。
青龍刀の重さを利用して前方270度へ大きく横に払う。
青龍刀を振り切ると急激に重みがズシリと増す。
刀の上にクライドが片足で立っている。
「アンチャン、そんなに刀振ったら危ないよ?
アンチャンが」
キェェェェェ!!!
スクルドは雄たけびをあげ青龍刀を振り回す。
一見めちゃくちゃな攻撃に見えるがそうではない。
的確な連続攻撃だ。
この連続攻撃をかわせる者はそういまい。
だが
青龍刀の上から飛び降りたクライドは、
それらをヒラリヒラリとかわし、トンッと距離をとる。
「へぇ~、追い詰められても結構冷静なんだーアンチャン。
やっぱ上に立つヤツはすごいなー。すごい、すごい」
ぱち、ぱち、ぱちと手をたたくクライド。
「てめぇ、何者だ!!
モリアート家の奴らか!?
シャーロン家の連中か!?
それとも、ワソン家か!?
俺たちを使うだけ使って、いらなくなったらぽいっ
そして都合が悪くなったら殺すか!」
「ぶーっ、残念でしたぁー
具体的な名前を出して
相手の表情を探ろうとしてもダメですぅー
相手が後ろめたいであろうと思われることを言って
動揺を誘おうとしても無駄ですぅー」
クライドはニタリと笑うと
「まぁ何でも良いじゃない、
アンチャン被害者ぶってるけどさ
ずーーっと加害者だったじゃん。
たまには被害者になっても良いじゃない。
アンチャン達の討伐条件は、デッドオアアライブ。
生死問わずなのよ」
(クソッ、
頭も身体もちょろちょろと動きやがるイヤなヤツだぜ)
スクルドは心の中で悪態をつきつつ言葉を吐き出す。
「わかった!俺の首はやる!
だが子分たちは助けてやってくれ!」
クライドは、スクルドをじっと見つめる。
スクルドにはクライドがただ厳しい顔をして
ぼんやりとこちらを見ているようにしか見えない。
(さぁ、
"わかった"と言って偽善者ぶって近づいてこい、クソが。
近づいて来たら握手のふりして手をつかみ、
その首はねて青龍刀のサビにしてやる。
スピードは負けるが、力なら負けねー)
クライドは、じっと観察する。
相手の目の光、表情、呼吸、全身から上がるその空気。
そこから感じられること
欺瞞・侮蔑・策謀・憎しみ・愉悦
「わかった」
クライドは、そう言いスクルドに近づいて行った。
「おぉ、感謝する!」
スクルドは感嘆の声を上げ手を差し出す
(馬鹿が、ひっかかった)。
クライドは差し出された手を一瞥し
「その手は地獄の片道切符か何かかね?アンチャン」
クソッ!!スクルドはとっさに青龍刀を振り上げる。
クライドはスクルドの目の前でふうわりと
大きく回転しながら跳躍すると青龍刀の先端をつかみ、
スクルドを後ろへ引き倒す。
ドシャァと音を立てて仰向けに倒れるスクルド。
慌てて起き上がろうとするが、動けない。
クライドが馬乗りになっているのだ。
馬乗りになっているクライドを力いっぱい
押しのけようとするがびくともしない。
クライドは、相手の首に青龍刀を片手でゆっくりと
押し付ける。
「どうした?スピードは負けるがパワーなら
負けないとでも思ったか?」
クライドは片手で軽く青龍刀を押しているように見える。
しかし、スクルドが必死に青龍刀をどけようと
両手で押し上げるがびくともしない。
圧倒的実力差。スクルドの頭にこの言葉がよぎる。
(全然かなわねぇ、ダメだ、ここまでか。
クソッ口惜しいが仕方ねぇ、
山賊になったときから覚悟はできてる。
俺は生きたいように生きた。
後悔はねぇ、、ベス、幸せに暮らせ)
スクルドがスッと目をつぶり、その顔に
覚悟のような表情が見えたときクライドがニタリと
いやらしく笑い口を開く。
「スクルドのあんちゃーん、
良い知らせと悪い知らせがありまーす。
まずは、良い知らせ
アンチャン、山のふもとの娼館にいるおねーちゃんと
良い関係なんだって?
エリザベータって言ったっけ?本名ベス」
スクルドはカッと目を見開く。
「良い知らせはー
ベスちゃん、アンチャンの子供妊娠したんだってー。
で、悪い知らせはー手配中のアンチャンをかばった罪で
処刑されるんだってー。
でもアンチャンが、出頭して全てを話たら
助かるんだってー」
「ま、待ってくれ、ベスは関係ないだろう!!」
「そうねー、ベスちゃんもお腹の子供も全然関係ないねー」
「そ、そうだよな!わかったしゃべる、全部しゃべる。
俺が知ってること全部しゃべる、子分の連中の詳細も
全部しゃべる!これまでの仕事の依頼者も
全部しゃべる!!!
その後俺は処刑でも構わねー、だから!!!」
そうだねぇ、、、とクライドがのんびりつぶやく。
「アンチャン、多分なんだけどさ、これまで色んな所で
略奪やっておんなじように、助けてくれって言われた
と思うんだよね。
それでアンチャン許したことある?多分許してないよねー。
タルマ家の仕官の話を信じた時もそうだったけどさ
アンチャン、なんで自分だけ特別だって思えるの?
ふしぎー。頭悪いんじゃないのー?」
「な、なんでだ!!ダメなのか!!!!」
「ぶーだめー。
ちょっと変わった刀でぶいぶい言わす奴はだめー」
「じゃあ、じゃあなぜ、わざわざベスのことを
俺に知らせた!!!どうせ認めないなら
同じことじゃねーか!!!」
「えー、だってアンチャン、さっき覚悟決めて
気持ち良く死のうとしてたじゃん。
そんなん、俺が気分悪いやん。悪党は悪党らしく
苦しみぬいて死んでほしいやん。
だ・か・ら、教えてあげたの。アンチャンの罪の重さで
全然無関係のアンチャンが愛する人が死ぬってこと」
「パパー、アノヨデアオウネー、ジゴクダケドー」
「キ、キサマ、それでも人間かーーー!」
涙と怒りで顔をべちょべちょにしたスクルドが
雄たけびのように叫ぶ。
「ぶー、俺魔物でしたー。
ということで飽きてきた。じゃあねん」
と、これまでにこやかな表情をしていたクライドが
急激に怒りの表情に変わる。
「山賊、悔いたまま死ね」
青龍刀に添えた手に全体重をかける。
クライドはスッと立ち上がり、テントの方を向く。
シャイアとフェンルの戦いも既に終わっており
地面には紫色の顔をしたダークエルフのフェンルが
壮絶な苦悶の表情で息絶えていた。
■
一方、山賊の洞窟の入口では
「「おらよ!!」」
ドスンと大きな音が鳴る。
ブリッツとツーが巨大な柵で洞窟の入口をふさいだのだ。
「これで山賊達は洞窟から一歩も出られません。
この後どうするんですか?」
スリーが、ツーにたずねる。
「このまま火を投げ入れて蒸し焼きにしようか?
という話もあったが、シャイアさんが、
モリアート家の軍隊に処理を任せてほしい
ということだったんで、このまんまだ」
ブリッツが怪訝な顔をしてツーに
「え?こいつら助かるってこと?」
「いいや、助からんよ。捕縛して全員公開処刑、
後に首をさらされるそうだ」
「蒸し焼きも大概残酷だと思っていましたが
顔をさらすために、一回助けて
それから殺すというのも・・・」
「魔物と人間、どっちが残酷なんだか・・・」
■
モリアート家の山賊討伐は全員討伐で幕を閉じた。
あれからシャイアとはすぐに別れた。
山賊の後始末が色々あって忙しいそうだ。
別れ際、丁寧に礼を言われパックスのみんなは、
なんだか照れていた。
シャイア。
荒くれ連中が、手助けしたくなる不思議な青年だった。
ということで、色々と引き払い一行は
のんびりと帰路についた。
その帰路の途中
「そういえばスリー、モリアート家の当主の情報は
集まったか?」
とクライドがたずねる。
「ハイ、モリアート家当主以外にも、
シャーロン家、ワソン家、3人分の当主の情報
しっかり集めましたよ!
頼むだけ頼んで、忘れられてるかと思いました!」
ワハハハと一行が笑う。
スリーが集めた情報は、しっかりとした情報で感心した。
まずは、モリアート家当主。
テリー・モリアート
人間の盗賊だ。
モリアート家当主は初代当主と同様に
盗賊のスキルを身に着ける。
まだ年若く、お人よしで心優しい少年。
領土拡張などの野心は無いと言われている。
政治の全てはシャーロン家当主とワソン家当主
そしてモリアート家の重臣に任せている。
どちらかと言えば、愚公扱いか。
次に、ワソン家
当主は、ヨーハ・ワソン
人間の戦士。
猛々しい顔をしており、血気盛ん。
激しいが潔白な性格をしているため自国の兵士等
軍人らからは非常に人望が厚い。
しかし、融通が利かないということで嫌う人材も多い。
最後は、シャーロン家
当主は、シャイア・シャーロン
人間の魔法戦士。
若く品のある美しい顔立ちをしている。
代替わりしたばかりだがつい先日、改革を断行し
シャーロン家内の膿を全て出し切ろうとしているらしい。
「よく集めたなー、スリー、すげーじゃねーか」
とパックスの面々が
スリーの顔をくしゃくしゃにしながら褒める。
と、クライドが一つのことに気付く。
「シャイア・シャーロン?
シャイア?あれ、あいつ・・・。もしかして・・・・」
ゲッ!とも、えっ!とも何ともいえない悲鳴が
メンバー内から上がったとき騎士が馬に乗ってやってきた。
「クライド様とその御一行とお見受けいたします。
我が主、シャイア・シャーロンより
手紙をお届けに参りました」
と、手紙をクライドに渡すと騎士は瞬く間に去っていった。
「おい、クライドの旦那、なんて書いてあるんだよ、
オイオイオイオイ!」
クライドが手紙を開き読む。
クライド様、ワン様、ツー様、スリー様、ブリッツ様
先日は我が家のお見苦しいところをお見せして
まことに申し訳ございません
・
・
・
手紙の内容は、非常に丁寧なお礼が述べられており
本当ならば、直接お礼せねばならないのだが
あれ以来、当主の身として、そう簡単に
出入りできなくなったこと。
そして協力してもらったとはいえ、
他国の諜報部員であるクライド一行に簡単にあうことも
難しくなってしまった。
ということが謝罪の言葉とともに書いてあった。
そして最後に簡単に会うことはできなくなったが、
ぜひとも手紙を使ってみなさんと交流したい。とある。
「えー、俺たち手紙とかそんな高尚なことできねーぜ
しかも相手は一国の当主だろー、無理無理無理無理!
それにシックスの大将が何て言うか・・・」
ワンが泣きそうな顔して首を振る。
他の面々も困った顔をしてうなずく。
そして皆、ちらりとクライドの顔をうかがう。
「わかった、わかったよ!
俺が代表してシャイアと手紙のやりとりするよ!
シックスの大将も俺が許可を取る!」
「「やったーーーー」」
と歓声をあげるパックスのメンバー達。
そして
「クライドの旦那ぁ、シャイアさんから手紙が来たら
見せてくだせぇよ?あっしらもシャイアさん、
嫌いじゃねーんで」
シャイア。
こんな輩の連中が、好きになる、不思議な青年だ。
にしても、一国の当主がメル友になっちゃったよ。
と若干とまどうクライドであった。
めるともができた




