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一万年も寝て起きた、俺がついに決戦開始?

 そしてこれから戦場となる海岸に着き……。

 俺は、最前線に建てられた柵の後ろの物見台の上に立ち眼下の海辺の光景を眺める。

 登ったばかりの朝日の照らす海がキラキラと光る中に、敵が橋頭堡として構築した巨大な鳥の巣のようにも見える陣地、その周りをずらりと取り囲むリザードマンやラミア、巨大なトカゲやワニ、何体かのドラゴン。空にはワイバーンが飛び、その背に乗る竜騎士が抜けめなくこちらの様子を伺っている。

「やっぱり気づかれていたな」

 横に立つブレイヴが、大してびっくりした様子もなく言う。

 敵がこちらを迎え撃つ準備を固めているであろう事は予想されていた。

 こちらの陣地近くまで飛んでくる偵察の竜騎士は、できる限り撃退していたが、高高度で飛ぶそれを全てを落とすことは難しかったし、例の暗殺者侵入の件もあり陣内の監視と秘密保持は最高のレベルで保たれてはいたものの、王都から移動中の部隊を見た住民の噂などを抑えきれるものでもない、

 我々は敵が我々を迎え撃つ準備をしているだろうと予測していて、その予測通り敵はそうした。

 全く予定通りであるが——だからといって望ましい状況ではなかった。

「敵が油断している中を奇襲して、一気に沖の母船を攻め落とせないかとか少しは期待してなかったわけでは無いけれど……」

 それは、色々考えた戦いのシナリオ中のもっとも理想的な展開の一つだったが——そんな油断をする敵であったなら、この国の騎士達はとっくにこの地を取り戻していただろう。

 我々はこのまま真正面から攻めて敵を討ち倒さなければならないだろう。

 それは、そもそもの我々の本命の作戦——プランAであるが、

「結局、あんたは『あれ』をやるしか無いということだな」

 ブレイヴの言葉は淡々としたものであったが少し俺のことを哀れんでいるかのような響きが紛れこんでいるかのように思えた。

 俺が偽勇者であることを知る彼であればこそ、俺が陥ってしまった境遇を不憫と思ってくれているかもしれないが、

「——なら『それ』をやるしか無い。……もともとそのつもりであったことだし」

 ブレイヴは、俺の言葉に、顔にちょっと悲しそうな笑みを浮かべながら、無言で首肯し、

「では始めるか」

「ああ……」

 俺は、聖剣を頭上に構えるのだった。

 そして……。


「全き希望のグラディウス・オムニ・スペム!」



 俺の声とともに、前方の海岸から爆煙が上がった。 

 賢人ウィズの残したアエギスは爆破した。

 その瞬間鉄柵が倒されるとそこからハルカンディア軍の突撃が始まった。

 爆煙が収まる頃には、しっかりと隊列を組み侵攻した我が軍は、爆発で混乱する敵の歩兵と遭遇する。

 先陣は、アイアン騎士団が務めた。この軍は、第一王子にの威名の責を持つため勇猛果敢と事前にバローから聞いていたが、その話に違わぬ剛なる者達の集まりようであった。

 混乱し、しかしそのせいでかえって、窮鼠猫を噛むかのような無謀で無茶苦茶な反撃をしかけけてくる敵の歩兵を、落ち着いて確実に打ち倒していく。

 無秩序に動く敵兵を、隊列を築き、盾で鎮圧しながら確実に槍で仕留めていく。それはまるで、大きな鉄の塊が動き地の物を引き潰していく光景ででもあるかのように思えた。

 そして、その後ろに続くのはアスヒ公に率いられたガルツ公国軍を主体とする元々の前線部隊。

 この、敵を知りぬいた部隊がアイアン騎士団から逃げて脇に回ろうとする敵を迎え撃ち包囲はさせない。いやむしろ次第にアスヒ公の部隊は両翼から前に進み相手を包囲殲滅しようとする。その姿は鳥が翼を広げたように——鶴翼の陣形であった。

 その両翼はさらに進み、瞬く間に敵を包囲するまでになる。

 圧倒的に優勢なのは我が軍であった。

 そもそも海岸のあちこちで起こった爆発によって、敵の戦力は半分以下にまで落ち込んでいた。そして隊が分断され連携が壊れた烏合の衆となった相手では、こちらの勝利はどう転んでも間違いが無いように思えた。

 しかし、

「来たな……!」

 沖に停泊するドラコアの母船から、ここからは黒い雲のように見える大きな影が浮かび上がる。そして、それは、そのまま空高くに上り、そのまま海岸い向かって移動してきたかと思うと、一気に急降下をしてくる。

 ワイバーンを駆る竜騎士たちの一団であった。

 竜騎士たちは、低空まで来ると、一斉に矢を射つとそのまままた高空に戻るを繰り返す。

 奴らは俺たちの陣形に穴を開け突破を狙っているようで、中央のアイアン騎士団を集中的に狙い、雨のように降り注ぐ矢の攻撃を加えるのだった。

 ただし、とは言ってもただ矢が射られた程度では、重武装をして加護の魔法をかけられて突撃しているアイアン騎士団には重大な被害を出すとまではいかない。それに、この矢の攻撃を見て、騎士に同行して突撃している魔導士が出した防御の魔法陣が頭上に広がれば、矢は次々にその中に飲み込まれて消える。

 敵の空からの攻撃はせいぜいがアイアン騎士団の足止め、勢いを殺す程度にしかなってはいないと言えた。

 しかし、その程度が、戦場においては大変な問題となるのだった。——陣形が足止めされ勢いが弱くなったその瞬間に、爆発から生き残ったドラゴンを先頭に、楔のような陣形となって突進してくる。それに、その敵の勢いに騎士団は一瞬推される。

 それが、その一瞬の立ち止りが、戦局における致命傷となるのだった。

 背後に着陸したワイバーンから下りた竜騎士達が抜刀攻撃を仕掛け、乱戦になる中、アイアン騎士団は両面の防戦を余儀なくされる中で、ついには中央を突破され囲まれ個別に包囲されえかねない状態となってしまうのだった。。

 ならば、

「俺たちの出番だ!」

 俺の掛け声により、ジュエル騎士団の精鋭と、アイアン騎士団から志願したハナを加えた即席の一隊が戦闘の中に突入した。

 中心にいるのはもちろん俺だった。

 周りを腕利きの騎士達に守られながら、俺は叫ぶのだった。


「勇者だ! 勇者が今そこに参るぞ!」


 味方の歓声と敵の怒声が上がった。

 空のワイバーンたちの動きが変わった。竜騎士達は、明らかにその集中攻撃の目標を俺に向けるつもりのようであった。馬に乗り走り出す俺たちに向かって竜騎士たちは集まり、同じく矢のように雨が降ってくる。

 しかし、俺たちは止まらなかった。

 飛ぶ矢でも切り裂けそうな、これ以上はない精鋭騎士と、アスヒ公より配下で一番の魔導士イタコの提供を受け強力な魔方陣を展開しているのであれば——そんな遠隔からの攻撃では俺たちを一瞬も止めることはできなかったのだった。

 ——そして、俺たちは、矢の雨の中を疾走し、あっという間に突撃中の竜騎士の後ろにつける。そして、ブレイヴがハナが、バロー卿が次々に敵を倒していくのであった。

 この人たちが実戦を戦っているのは初めて見ることになるが、凄まじい剣の腕、おそるべき闘気であった。魔王と戦った一万年前の勇者パーティの面々と比べても見劣りしない戦士達であった。敵の竜騎士などではまるで相手にもならないようだった。

 特にこの戦闘のために王家より魔剣グラムを与えられたブレイヴ、家伝の妖刀村雨を持ち出してきたハナの斬撃は凄まじく、一太刀をふるえば、竜騎士だけでなく地に降り立ったワイバーンでも切り裂く勢いであった。まるで無人の荒野を疾走するがごとく、まさに向かうところ敵なしといった俺たちであった。

 俺たちはその勢いのまま、挟撃されているアイアン騎士団の救援に向かう。抜刀した竜騎士達に背後から突撃してあっさりとピンチの騎士たちと合流したにとどまらずに、そのまま前に進んで前面のドラゴンに突撃する。

 一気に混戦となる戦場。

 その中で、リザードマンたちの爪をかいくぐり、バローが飛び乗ってその騎者を倒す。 

 すると無秩序に暴れ始めたドラゴンに敵はまり、その間に包囲を完成、挟撃となったアスヒ公率いる前線軍が敵を壊滅させる。そして、そのまま軍が反転して横陣に陣形を変えれば、背後い降り立った竜騎士達と長く横に対峙することになる。

 すると、騒々しい戦場の中に一瞬の沈黙が生じ……。

 ——雄叫びが上がりまた戦闘が再開する。

 再開した戦闘は、今は、数も勢いも勝るハルカンディア軍が圧倒しているように見えた。

 横に長く対峙する戦線であったが、厚く陣を張るハルカンディア側が各所で競り勝っていた。すると、戦線を破られたドラコア側は囲まれ各個撃破されていく。

 圧倒的に有利な我が軍だった。一見、これならばこの戦いはもう早々に決着がつくそんな風に見える光景であった。

 しかし……、


「勇者は! 勇者はこっちだぞ!」


 俺たちは戦線から離れそのまま誰も敵のいない砂浜に走り出した。

 そこに降り注ぐ矢の雨。

 海に浮かぶドラコアの母船からまたワイバーンが飛び立ち、俺たちを狙って降下してくるのだった。

 この跡切れのない竜騎士の攻撃。これがいつまでたってもアスヒ公が上陸した敵を撃退できない理由、むしろジリジリと勢力を相手に広げられている理由であった。

 さすがに、敵の竜騎士部隊だけではアスヒ公の前線部隊とまともに戦える規模ではないようなのだが、確実に敵を突破できる騎兵部隊として竜騎士部隊を考えれば、戦線で押し込まれている部分の支援攻撃、後方からの包囲攻撃。竜騎士は、地上部隊との連携して、あらゆる危機をチャンスに変えてしまう非常に厄介な敵であったのだった。

 今回も今優勢なハルカンディア軍の後方にまた一部隊が降下して挟撃しようとしていたのだった。

 だから俺は——その竜騎士達を俺たちに引きつけようとする。

 ジュエル騎士団とハナ。ハルカンディア軍の精鋭が集まって、その上伝説の勇者がいる遊撃隊なのだ。ゆうに一大隊に匹敵する力を秘めている——少なくとも敵はそう思うだろう そんな連中に自由に動かせたままにはしておきたくない。

 どんな犠牲を払ったにしても最初に潰しておきたいと思うだろう。

 俺に、俺たちに、竜騎士達は集まってくるだろう。

 それが、俺たちが事前に予想した敵の行動で、それこそが俺が望んだ敵の行動であった。

 できるなら全ての竜騎士を、ワイバーンを俺の周りに集めたかった。ハルカンディアがまだ温存している竜騎士——ワイバーン二十体でも敵と対処できるくらいにまで敵の数を減らしたかった。

 だから、俺たちは派手に逃げ回りながら、適度に敵につけこませた。

 いくら攻め込んでも歯が立たないと思われてしまったら、敵は俺たちを襲うことをやめる。

 ワイバーンの損耗が激しすぎると思ったら、母船にワイバーンを温存し、一旦橋頭堡を放棄するかもしれない。

 それでは、元の木阿弥だ。

 一旦陸から兵を引いたドラコアが、そのまま逃げ帰るとは思えない。

 また隙を見て侵攻してくるだろう。

 もしかして、母船は移動して、別の場所で上陸作戦を行うかもしれない。

 この島国であるハルカンディアの、長い海岸線のどこに連中が現れるのか?

 常に全部を監視していることなど不可能だ。

 いつか、できた隙を捉えらられてまた橋頭堡を作られるだろう。

 ——だから俺たちはあの母船を潰さなければならない。

 だから俺と一緒に動く部隊はもう少しで、もっと集中して攻めれば潰せるのではと思わせるように、時々わざと敵に攻め込ませたりしながら、巧みに竜騎士達を俺たちのまわりに集めたのだった。

 なるべく本隊同士の決戦の横陣の戦いの場所から離れるように、向こうには俺たちが本隊から分断されて追い込まれて潰走していると思わせるようにふらふらとなるべく遠くへ——俺たちは馬を走らせた。

 そしてもう母船から飛び立つワイバーンもいなくなった頃、空にまだ十体ほどのそれは飛ぶが、他は地に降りて我々を包囲しようとしている頃——ついに時が来たと俺は判断したのだった。


 俺は、馬を少し蛇行させ、ブレイヴの横にぴったりと付けて言う。

「そろそろ、打ち合わせ通りあれをやる、頼むぞ……」

 俺の声が聞こえていたかは怪しいが、うちあ合わせた企みを実行する瞬間が来たのだと理解して首肯するブレイヴ。

 それを見て、

「それじゃあ、みんなを頼む……」

 そう言うと俺はわざと落馬。

 すると、あっという間に目の前から去っていく仲間たち。

 俺は、その様子を顔に微笑みを浮かべながら眺めながら、地上に転がり……。

 直ぐに聖剣を構え、ここぞとばかりに斬り込んでくる敵の剣を自動勇者の剣技で防ぎながら、タイミングを待つのだった。

 前もってブレイブとうちわせていた手順だった。彼らがこの竜騎士達の囲みを突破したならなば、ブレイブはのろしをあげる。俺は、それを確認したら、まわりのアエギスを活性化させて爆発させ、自分ごと竜騎士達をまとめて吹き飛ばすつもりだったのだった。

 ——俺は、自身を巻き添えに、この竜騎士とワイバーンを殲滅しようと考えていたのだった。

 敵に完全に囲まれた、この状態では、いくら勇者ジェイドの剣技をつかっても、多勢に無勢、俺の命などもう数分持てば良いだけのものだ。

 でも、それで十分だった。俺はその数分間だけ命をかけて勇者であるこの身を守れば良い。

 俺が間違われてしまったその偶像を守り切れば良いのだ。

 そして、落馬した勇者を仕留めようと集まって来た、敵を道連れにこの一帯を爆破するのだった。

 ——これが、俺が考えついた責任の取り方だった。

 ——勇者に間違われて、そのまま状況に流されてしまったただの男にできるせめてもの償いだった。

 勇者は犠牲になったが、敵の航空戦力を壊滅させ、そのおかげで敵の母船に攻め込むことができれば、その犠牲はむしろ軍を奮起させるものになるのではないか。

 俺はそう思ったのだった。

 たぶん最善ではないが、俺が考えうる限り、最良の企み。

 民衆が——軍でさえ——目覚めた伝説の勇者に期待し、依存してるかのように見えたハルカンディアが、俺が偽の勇者だと気づき落胆し、戦意を喪失するよりも……。

 俺は、俺の死によってみんなが奮起するような、別の伝説をつくろうと思いたったのだった。

 俺は、それを夜の練習場で立ち会ったブレイヴに打ち明けて、協力者になってもらったのだった。

 彼は、みんなに、落馬した俺を置いてそのまま包囲を抜けるよう言いくるめているはずだ。

 ——俺が、勇者ならばこのくらいの包囲は自力で抜け出すと。

 ——戻り俺を助けることは逆に勇者の聖剣による領域殲滅攻撃の邪魔になると。

 そして、彼らが十分に安全な場所に離れたなら、俺は自分ごと、この周りの竜達を吹き飛ばすはずだったのだ。

 ——のだけれど、

「なぜだ!」

 俺は、後ろから襲ってきた竜騎士をグラムで一刀両断にしたブレイヴに向かって言う。

「勇者様が落馬したとあっては、一緒に戦う騎士としては助けに来るしかないでしょう」

「何を……」

「そうですな、勇者様。あなたにはまだまだ死んでもらっては困りますゆえ」

 今度は俺が斬り結んだ竜騎士の頭の上を飛び越えて来たリザードマンを斬りながらバロー卿が言う。

「私も子種をまだ貰えてないですし……」


「「「………………」」」


「——って! お前らそこで黙るな!」


 ハナまで(相変わらず滑っているが)やってきた……。

 この調子では、俺は改めて周りを見渡す。

 結局一緒に遊撃隊となった部隊のみんなが、全てやって来ていた。

 ——って、どうすればいいんだこれ。

 俺が今、アエギスを爆破したらここにいるみんなが巻き添えになってしまう。

 こうならないようにブレイヴに協力を頼んだのに、

「まったく、我らの勇者様ときたら、突然いなくなったかと思ったら、こんなところで一人で何をする気だったのやら?」

 お前はそれを知ってるだろ。

「まさか、ここで一人で玉砕して勝手に伝説になろうとしていたんではあるまいな?」

 えっ?

「まったく、ひどい勇者様です。自分は偽物だとか言って——もしかしてやっぱり私みたいな婢女から逃げたいんじゃないですかね?」

 もしかしてバレてる?

「ブレイヴ!」

 こいつがみんなに話したのか?

「——まったく、我らの勇者様は、嘘つきだ。単に一万年寝ていただけの一般人だなんて言いながら、こんな大それたことをしようとする」

「いやいや、随分と無責任だ。自分だけいい格好して死んで逃げようと思っているとは」

「いえ——(子種もらえるまで)逃がしませんよ!」

「みんな……」

 この連中はブレイヴから俺の正体と、俺の企みを全てきいて、それでも俺の元に残ったのだった。

 俺はこれから自分もろともドラコアの竜騎士を吹き飛ばそうとしているのだ。

 なんでそんな無謀なことをしようとする男の元にこの連中は残っているのだ。

 もしかして、俺にこの自爆攻撃をやめさせようと?

 しかし、それでは竜騎士の殲滅ができずに——この戦いの意味もなくなってしまう。

 それは——もし俺を哀れに思って残ったのならかえって迷惑だった。

 俺に残された、唯一の責任の取り方をできなくされてしまったのだった。

 ——この人たちを巻き込んで爆破をすることはできない。

 それに、さすがに、化け物揃いのジュエル騎士団の精鋭部隊(加えてハナ)でも、馬を捨てて、敵に囲まれたここから逃げ出すのは難しい。

 このままでは、そのうちに我々は力尽き、ただ敵を一時混乱させただけで、犬死となってしまうであろうと思われた。

 なら、

「では、勇者様には諦めて派手に爆発をおこしてもらいましょうか」

「でも……」

「我々を巻きぞえにはできない——ですかな?」

 俺は首肯する。

「しかし、このままここにいたらいつか私たちもさすがに多勢に無勢力つきる——それは困りますね」

 わざとらしくため息をつくハナ。

 それを見て、いい加減本題に入ろうと、ブレイヴは皮肉っぽく笑うと、

「大丈夫だ……」

 俺に向けて言う。

 そして、

「仲間を信じろ!」

 と言いながらブレイヴが目配せをすると、魔導士が魔方陣を展開し始める。

「我々は死ぬためにここに来たのではないですな——御身も、自分自身も守ってみせましょう」

「勇者様——私たちは大丈夫です。……心置なくぶっぱなしてください」

 グラムを頭の上に掲げ、闘気を身にまとうブレイヴ。村雨を下段に構え埋めたい光に包まれるハナ。

「我々が英雄の『偽物』の力なんかでやられるわけはないからな。そして、御身には、今後『本物』の英雄の力をふるってもらわないといけない」

「ジェイド……俺が偽物って知っているはず……」

「さあ? 偽物とは何のことですかな? この老兵には勇者様は誰よりも『本物』に見えますが?」

「みなさん? 何を言っているんでしょう……細かいことはどうでもよくて——勇者様はこのあと『本物』になってしまえば良いんですよ」

「お前ら……」

 俺は、この連中のこれからしようとしていることが何なのかに気づいた。

 俺を取り囲んで防御の結界を張る、グラムと村雨の力を引き出すだけでなく、彼らの霊力を、生命の全力をかけて魔導士の張る結界にエネルギーを注ぎ込む。

「さあ、勇者様、もう迷っていられないぞ」

「敵も我々がしようとしていることに気づく頃ですしな」

「勇者様、さあやっちゃってください」

 この連中は、俺を爆発から守ろうとしている。

 結界を作りそれでアエギスを活性化したその爆発から俺を守ろうとしているのだ。

 そのため自分たちが危険に陥ろうとも、

「それじゃ、やるぞ! 結界がうまくいかなっかったてうらみっこなしだぞ」

 みんなは、俺の言葉に当たり前だと言うような表情で首肯する。

 ならば、俺は、覚悟を決めて聖剣を頭上に構えると、


「いけええええええええ1」


 と叫ぶのだった。

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