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VRMMOを作ろう!  作者: 末次克臣
6/8

企業の現状

風邪をひきました・・・

「ふぅ」


CDGを外して一息つく。感想のレポートを書かないといけないのだが、さすがに6時間ずっとゲームの世界にいたのだ、腹も空くし喉も乾いた。この部屋の主である男は椅子から立ち上がり、机の上の空になった自分のコップをもって部屋から出た。扉を開けた先はオフィスになっていて、そこではPCの前に座った自分の部下がそれぞれの仕事をしていた。


「あ、お疲れ様です主任」


扉の一番近くに座っていた部下の一人、佐々上ケンスケが部屋から出てきた自分に気付いて声をかけてきた。もう三十路は過ぎているはずだが、童顔のせいか若手の新入社員と言われてもわからない顔をしている。


「おう」


短く返事をして、乾いた喉を潤すために2m先のコーヒーメーカーの乗った台に向かって歩いてく。


「どうでしたか?」

「なにがだ?」


コップにコーヒーを注いでる時にケンスケが聞いてきた。疲れているのか、何のことかさっぱりわからない。とりあえず今はこのコーヒーを胃袋に入れなければという事しか考えていない。


「この前帰ってきたユニットですよ、やってたんですよね?」

「ああ」


こいつは俺の感想を聞きたかったのか。一応、俺だけでなく他の奴らもテストプレイはするのだがそう毎回やるやつはいない。俺は義務として毎回やる羽目になっているのだが、こいつはやっていないのだろう。


「てんで話にならない、駄作としか言いようがないな」

「やはりそうでしたか・・・」

「金持ちどもは、どいつもこいつも同じ駄作ばかり作りやがる。圧倒的な自分優位と無双、そしてハーレム。しかも、話もテンプレのような一方通行。何の参考にもならない」

「ははは・・・」

「しかも今回のは途中で飽きたのが見え見えな話の展開だ。今すぐにでもフォーマットするべきだな」

「そうでしたか」


そう、いつもそうなのだ。こちらの思惑通りに行ったことは一度もないどころか、時間の無駄にしかならない。そして決まってフォーマットしてまっさらな状態にする。

当初の思惑としては次の作品への足掛かりとしての参考資料、経費削減となるはずだったが、これが全くもって総外れ。レンタル費用も機材の運送費、維持費を差っ引いてもちょっとのプラスにしかならない。月500万と一見法外な価格に見えるが、実は結構ぎりぎりの価格なのだ。

運送には業者ではなく機材の事を知り尽くした専用のスタッフ、機材の運送専用のトラックを用意している。機材もちょっと普通じゃない物を使っているので、機材だけでも結構な値段がするのだ。

しかも機材にはちょっと特殊な仕掛けが施してある。それはもちろん機密情報の漏洩阻止なのだが、その仕掛けを誤って作動させないためにも専門のスタッフが必要なのだ。


グゥゥゥ、と音がして視点を下におろす。自分だけではなく目の前にいたケンスケにも聞こえていたようだ。

腹の虫が液体だけではなく個体もよこせと訴えてきているのだ。


「飯を食いに行ってくる、専務が来たら『報告はもうしばらく待ってくれ』と伝えてくれ」

「わかりました」


コップを置いて、掛けてあったあった自分のコートを羽織って、「ゲーム企画部第1開発室」と書かれたオフィスから出て廊下を歩く。


当初の予定と違う、確かにそのとおりである。


もちろんそれはレンタルすることだけじゃない。ゲーム市場の一時的独占もさることながら、ゲームの次回作を作る事、ゲームを継続利用するための30日チケット、ゲームの広告費、そのどれもが当初の予定とは大きく違うのだ。

仕方ないと言われればそれまでなのだが、それでも諦めがつくものではない。彼個人でも全てをダメにしたクラッカーが目の前にいたら、周りの制止を振り切ってでもそいつを絞め殺しているだろう。


「全く、何とかならないものか・・・」


本当にそう思う。次に行きたくても次に行けず、かといって終わらせるなって絶対に嫌だ。

夢をもって電子工学や生体工学を必死になって学んで、やっと実現出来た夢。これを終わらせるなんて冗談じゃない。そう考えてるのは俺だけじゃない、部下どころか上司や社長だってそうなのだ。みんなゲームが好きなのだ。好きなもの同士が集まって出来た会社がサイバードライブという会社なのだ。


どこぞの企業が引き抜きに来ても、みんなの結束の固さから離脱した奴は一人もいない。

中には軍事転用を利用したいなんてふざけた国もあった。みんなで遊ぶための技術を戦争に使うなんて馬鹿な考えはこっちから願い下げだ。その時の社長は法外な金額を積んだ軍人にコップの水をぶっかけて「出て行け!」と叫んだ姿は本気で格好良いと思ったものだ。

その時の映像は社員全員見ている。何故映像に残したかというともしもの時のためである。正面からではなく搦め手で来る可能性もゼロじゃない。映像に残しもしもの時に公開されれば、うかつに手が出せないようにしたのだ。


もちろんレンタルするユニットにも細心の注意が払われてる。プログラム自体は公開されているがユニットの中身は知られていない。

何せ約50cm四方の箱4つでゲームの作成保存ができるのは自社だけなのだ。

他社はその構造を調べるためにレンタルして、規約違反の解体をしようとした。

がユニットの解体をすると中の基盤が融解して駄目になるようになっているため、それはできないようになっている。


そうして駄目になった機材はこれまで4セット。ある企業達は倒産し、ある事業家は自己破産、そしてある国は痛い目を見ることになった。


そんなこんなで機密は漏れず、そして愚者は無惨に散っていったのだが、そんな事はもはやどうでもいい。

今は現状を打破しないといけない。だが残念なことにその光明は見えてない。ただズルズルと今が過ぎて行ってる。


「やはり才能と熱意がある奴がやらなければ意味はないな・・・」


結局はそこに行きつく。

どんな作品も才能が無ければ駄作でしかない、熱意が無ければ最後までいかない。

それらが無いと良い作品なんてできやしない。


「ふぅ・・・」


何度目かのため息の後、買ってきたコンビニ弁当と共に自分のオフィスに入った。

が、全員仕事をせずに中央のデスク前に集まってる。その中にはケンスケや専務の姿があった。


「どうかしたんですか?」

「ああ、真島君!やっと帰ってきたか!」

「え?」


専務の岡東さんは俺を見て顔をほころばせるも、すぐに難しい顔に戻る。


「実はユニットのレンタルの依頼が来たんだが」

「ああ」


なんだまたかと思うが、それでもおかしい。連絡はいつも事務の子がやるしこんなに全員の雁首をそろえて悩むことでもない。何か問題のある奴からの依頼なのだろうか?と思い至って聞いてみた。


「実は依頼主は大学生なんだ」

「は!?大学生!?」


思いも寄らない依頼主に驚く俺、真島龍一郎だった。

もっと早く上げたかったです

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