さて、これからどうするか・・・な?
第4話できました。どうぞ!
大都市セインガルド
「アークフェンサー」のゲーム内においてもっとも大きな都市で。商業、工業、学問の全てにおいてトップクラスの発展をしている。町の地形はちょっとした山のような形になっていて、都心部が高く、なだらかに坂が外延部に広がる形をしている。たいていの町は夜間時間になると明かりが消えるが、この街だけは夜間時間になっても明かりは消えない。それどころか夜のネオン街のように明かりをつけているので夜景が奇麗だと人気がある都市だ。
ゲームのエンディングが終わって、俺たちのパーティーはそこに集まっていた。
何をするかって?それはもちろんゲームクリアの打ち上げの宴会です。
このセインガルドで一番の高級ホテル、それも最上階を貸し切っての打ち上げをすると、クリア前から決めてたのだ。
「それではゲームクリアお疲れさまでしたー!」
「「「「「おつかれさまでしたー!」」」」」
コップに注いだドリンクで乾杯する。ゲーム内でもこんな宴会ができるのは味覚再現プログラムによる恩恵があるからだ。ゲーム内において料理の味が楽しめる。このゲームの世界を楽しめる要素の一つとして非常に有名だ。
このプログラムは一部の人間に希望を与えることとなった。
それは食物アレルギーを持つ人や、ダイエットをしている人など、食べたいけど食べることができない人たちである。プログラムにより、実際に食べた気になれる事で精神的ストレスなどを緩和させることになり。多くの人を助けることになった。もちろん情報開示されてから、医療用プログラムに組み込まれるようにもなった。まさにSD社様様である。
最高の夜景を見ながら、大枚をはたいて買った料理アイテムを食べる。リアルじゃ味わえない美味に舌鼓を打ちながら最高の気分を味わう。
「さーて、これからどうするかなー?」
ふと考えていた事がポロッとでた。全く予定が無いわけでもないが、特にこれだっていう用事も、やるべき事もない。リアルだってそう。大学もバイトもそんなに忙しくないし、就職だって一流企業になんて行くつもりもない。むしろバイト先を正式雇用させてもらった方が自分的には十分なのでそうしようと思ってる。つまりはそこそこ暇なのだ。とりあえずみんなの予定を聞いてみた。
「俺はとりあえずエクストラクエストやってくるかな」
ギントは魔神の残滓を討滅するのを目的としたエクストラクエストをやるようだ。この世界の様々な場所に散らばった特殊なモンスターを狩るミッション。だがシナリオというものは存在し無いようで、強くなったモンスターと戦いたいというプラクティスモード的なものになっている。シナリオがあるのならやってもよかったが無いのであまり興味はなかった。
「私とクリスは『エターナルゲート』に行くつもりだよ」
うんうんとうなずくエルフ娘とケモっ娘。ゲームでもリアルでも結構仲がいいらしい。
「ああ、あのSFゲーか」
「うん。さすが海外企業。フィールドマップは全VRMMO随一の広さってね」
そう「エターナルゲートは」銀河をまたに駆けるSFをうたい文句に、馬鹿げた広さのフィールドになっている。一つの星どころか宇宙空間、一星系をフィールドマップにするという超広エリア探索SFRPGとなっているのだ。自由度が高く、自分用の宇宙船で広い世界を駆け巡れることが人気になっている。
「俺はFSPの『ARMS』に行くわ、リアルフレにチーム参加してくれって頼まれてるし」
「ARMS」も海外企業のゲームで古今東西の銃火器、戦車や戦闘機、果ては潜水艦や戦艦だって使えるサバゲーである。これもかなり人気がある。戦車や戦闘機に乗りたい男は沢山いるからね。
「私はEF15やる予定」
と、カナは国内企業デルタソフトウェア作の「エンドレスファンタジー15」をやるそうだ。EFシリーズは長く続くRPG作品の一つで、俺も歴代EFはプレイしている。発売してからそう経ってないので今がやり時かもしれない。
「俺もEFやろうかなー?」
シリーズ通してやってるのでやってみたいとちょっと思ってたのだ。
「カズも『ARMS』やろーぜ、こっちは人数多ければ多いほど面白いし」
が、他の作品も気になるところではある。どれも人気作の上、ネットでの評価も高い。つまりどれをやっても面白い事は確定してるも同然なのだ。
「いかん、本当に悩む」
沢山の中から自分はどれをやるべきか本当に迷う。
ちなみにどれもこれもやればいいというのは傲慢である。「積みゲーは罪ゲーである」と誰かの言葉だが全くその通りだと思う。あっちへこっちへ移り気する浮気者にはなりたくない。
「ま、好きしなさいな。『エターナルゲート』やるんならメールして、拾ったげるから」
俺たちPT内では既にメールアドレスの交換は済ませていた。でないと集まって攻略なんてできない。
とりあえずプレイした感想でも後で聞いてみようと決めた。時間はたっぷりある、急ぐ必要はないのだ。とりあえず今はゲームの思い出に花を咲かせよう。今はそれが一番だ。
食料アイテムも底をつき、宴会はお開きになった。楽しい時間が終わり、少し寂しい気もするが、仕方がない事だ。みんなで散らかしたものを片付ける。散らかしても宿屋が自動で綺麗にしてくれるのだが、ここは自分らでやりたかったのだ。
掃除をしていると、カナが聞いてきた。
「カズ、明日は講義?」
「え?うん、そうだけど。どうかしたの?」
「明日行くなら、アサミに借りたものはもうちょっと待ってって言っといて」
「わかったよ」
と言伝を頼まれた。メールをすればいいのだが、意外とアサミは気付かない事が多い。なので直に会って伝えた方が確実なのだ。何で自分で伝えないのか?と言うと、ログアウトしたら直ぐにEF15を始めるからだそうだ。リアルでは昼をだいぶ回ったところとはいえ、既に朝から4時間ほど続けている。本当によくやる幼女だ。
掃除も終わりPTは解散した。後は自分に割り当てられたレストエリアに行ってログアウトするだけだ。
「なぁカズ、リアルのカナってどんな感じ?」
共同リビングから出て、廊下に出たところでリックが肩に腕をかけてきて聞いてきた。普通はリアル情報はタブーワードなのだが、もう1年以上の付き合いがあるのでそこのところが緩くなっている。どこ地方出身とか、実際の性別、年齢などは既に言っている。ちなみに俺は関東地方、リックは九州の南の方だそうだ。
「は?どんなってどういうことだよ?」
「リアルもあんなに美人なのか?ってことだよ、察し悪いやつめ」
「ああ」
ゲーム内でのカナは年齢25相当の美人なキャラになっている。腰まである黒髪のロングストレート、スタイルもボンキュボンのグラマラスなモデル体型、こんな奴がリアルにいたらとんでもないことになるだろう。だがここはゲームの中、空想を形にした世界だ。なら、ゲームの中では夢を見たいのだろう。恐らく、あれが彼女の理想的姿。現実のロリボディから目を背けた彼女の夢。それを俺の口からばらすなんて恐ろしい、もとい残酷な事はできない。だが嘘はいけない。なので、
「美人って言うより可愛い系だな」
うん、嘘は言ってない。本当は成人してるのによく子供に間違われる合法ロリ女性とは口が裂けても言えないし、言ってはならない。もしばらした事がばれたらリアルでサンドバックにされてしまう。彼女の怒りの鉄拳の威力は身に染みて味わっている。決して怒らせてはいけないのだ。だからここは真実をぼかした言い回しがベストアンサーである。
「そうなの?うわ会ってみてぇ」
そして見事に勘違いする男。これで男の夢も、彼女の見栄も、俺の身の安全も守られた。これで一安心だ。
リックとも別れ、自分の部屋に入る。
ログアウトはこういうレストエリアでしかできない。戦闘中や、探索中での勝手な離脱を防ぐためだ。もちろん緊急時のログアウトもできるが、結構重いペナルティがある。因みに、またログインする場合は各町の広場にあるログインポイントよりスタートする。宿屋の部屋でログアウトして、宿屋の部屋からスタートでは、その部屋をログアウトの間占拠し続けることになるからだ。
メニューアイコンの項目からログアウトを選択してゲームを終了する。
視界は真っ暗になって、目を開けると見慣れた自分の部屋の天井が見える。春とはいえまだ少し肌寒い。布団をかぶって寝ながらプレイしてたとはいえ若干体は冷えていた。それに
「ふむ、とりあえず飯だな」
起きて湧き上がる空腹衝動。ゲームの中で飲み食いしたがそれはデータ上の出来事。リアルでは飯を食わせろと胃袋が訴えて来ている。
布団から起き上がってとりあえず冷蔵庫を開けてみる、が腹を満たせる食べ物は無かった。
「仕方ない、買いに行くか」
時刻は2時。ランチタイムはとうに過ぎているので、スーパーで晩御飯と一緒に遅い昼でも買ってこようと決めた。いそいそと着替え、1LDKの部屋から出ようとする。
「おっと、スプリングジャンボ今日じゃん、ついでに行っとこ」
玄関横に置いておいた宝くじを見つけてポケットに放り込む。いつも各シーズンごとに10枚ほど買っている。今まで大きな当たりなどは無いが、まぐれ当たりでもしてゲーム代や生活費がちょっと楽になってくれないかな?程度なのでたいして期待はしてない。
スーパーで買い物を終えて、帰宅途中にあるゲームショップに寄る。店舗内の4分の1がVRMMO専用のコーナーになっていて、国内外から集められた多種多様なゲームがジャンルごとに分けられて並べられていた。
「うーん、店頭で見るとやっぱ悩むなー」
店員が決めたピックアップ作品ですら30種。それ以外でも200種もある作品に目移りする。惜しむらくは店頭でのテストプレイができないことだ。理由はログイン中は体が無防備になるからだ。もし何かされては店舗自体がつぶれる可能性があるので、店舗側としても設置しない方針になってる。
ここで中古ソフトにすればいいんじゃないか?と思いたいが、そうはいかない。
VRMMOのゲームはインストールしてログイン認証パスワードが必要になるのだ。そのパスワードはひとつのアカウントに対して一回のみ。つまりVRMMOは中古販売ができないのだ。
CDGの中古販売はあるが、店頭に並ぶ前に綺麗にフォーマットされて店頭に並ぶ。つまり、ソフトは必ず新品を買わなければならないのだ。故に慎重に選ばねばならない。
とりあえず今回は諦めておく。カナやリック達の感想を聞いてからでも遅くはない。それにいい加減に腹も減っている。帰ってスーパーで買ったハンバーグ弁当を食べたい。
店から出て、家に向かって歩き出そうとするが、すぐ横になる宝くじ売り場が目に入る。そういえばくじの換金はまだだった。当たってはいないだろうがついでに済ませておくか、と宝くじ売り場に向かった。
「お願いします」
「はい、承りました」
販売員のお姉さんに宝くじを渡して確認してもらう。自分でナンバーを確認なんて面倒なので店員に頼んで機械で確認してもらう。その方が早い。
ピー
機械での識別が終わったようだ。小銭でもいい、いくら当たったかな?
「おめでとうございます!2等5000万、大当たりです!」
「え?」
はい?今何て言った?2等?5000万?そんな馬鹿な・・・
とてもいい笑顔でお姉さんが賞賛の言葉を送ってくれるが、混乱して理解できない。お姉さんは流れるような手つきで当選した宝くじとプリントアウトされた紙を出した。
「ここで直接お渡しすることはできませんので、こちらの証文と当選したくじ、印鑑と身分証明書を持って銀行の方へ行ってお受け取りください」
お姉さんは、証文の紙と宝くじをそれ用の封筒に入れて俺に渡してくれた。俺は、呆然としながらその封筒を受け取った。
「まじか・・・」
どうやら俺はお金持ちになってしまったらしい。
ようやく話の本題に行けるようになった、さて次は・・・
なるべく早くに仕上げたい・・・だが文章打つのが遅い俺。お待たせしてほんと申し訳ない。