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01.とりあえず幼なじみに相談してみよう!

流行りの悪役令嬢転生モノが書きたかった。後悔も反省もしていない!(ドヤァ

……と、被告は供述しているそうです。

「だからね、私は乙女ゲームの世界に転生したと思うんだよ!!」

「……わかった。とりあえず医者を呼ぼう」


 元気良く言えば頭の心配をされた。

 ……わかったって言ってるけど、君、絶対わかってないよね?お医者さん呼ぶって言ってるし、絶対信じてないよね……?



***



 私、三条ふうりには『三条ふうりになる前』の記憶がある。いわゆる前世の記憶というやつだ。


 とは言っても、すべて覚えているというわけでは無く、むしろ曖昧な部分のほうが多い。例えば、前世の自分の名前や、何故死んだのか、といったことは全くわからない。

 しかし、中にははっきりとした記憶があった。死ぬ直前までやっていた、和風乙女ゲームの記憶である。……なんで自分の名前は忘れているのにゲームの内容は覚えているんだとか、色々自分に突っ込みたいけど、とりあえず置いておく。


 その乙女ゲーム『月下の約束』はとても人気で、確か続きの作品も出ていたと思う。……残念ながら、私はプレイする直前に死んでしまったけどね!!


 乙女ゲームの内容は割と王道な感じだった。

 時代は現代。明治を過ぎても鎖国をしていた、『あったかもしれない日本』が舞台だ。……あったかもしれない現代日本が舞台とか言いながら、実は妖怪とか先祖返りの登場人物とかファンタジー要素が沢山出てくるんだけどね。


 コホン。話を戻しますよー!!

 ごくごく普通の主人公ヒロインが高等学校に入学する所から物語は始まる。

 主人公が学校に入学すると、普段は人を襲わないような妖怪から非常に凶暴な妖怪まで、何故かたくさんの妖怪に襲われるようになる。

 そして、あわや喰べられる――という所で助けてくれたのが5人の男子生徒。

……言わずもがなこの5人が攻略対象である。


 だんだんとストーリーを進めていくにつれて、攻略対象の家系には妖怪の血が交じっていて攻略対象みんなが先祖返りであることや、主人公が実は巫女の血をひいていることが明らかになっていく。


 そして! 乙女ゲームに欠かせないのが悪役令嬢!

 もちろんルートごとに決まった悪役がいる。この乙女ゲームはストーリーがしっかりしているのだ。選択肢もたくさんあるから全部のストーリーを回収するのが大変だったのは良い思い出だ。


 ふふふ……勘のいい方はもうおわかりだろう。その悪役令嬢の中に、私、三条ふうりがいるのだ!

 ……まぁ、悪役は悪役でも、たいした嫌がらせはしない上に友情エンドまである、下っ端悪役令嬢だけどね……。


 しかし! 悪役令嬢、というか名家のお嬢様である私は、そこらへんの乙女ゲームのお嬢様と大きく違う特色がある。なんと、私も攻略対象と同じように、妖怪の先祖返りなのだ!

 ……ちなみにたいした妖怪じゃないのは察して欲しい。うぅ、私もどうせなら、鬼とか妖狐とか雪女とか! もっと強くて綺麗な妖怪やつが良かったさ! 化け猫なんて、あんまり強くないし、しょぼくて他の妖怪せんぞがえりの影に隠れてしまうわ! でも、他の妖怪になりたくても、運命には抗えないんだよ……!


 ……まあ、前世がオタクの私としては、乙女ゲームの世界に転生したことだけで幸せだけどね! 多くは望みませんとも。


 私が転生したこの和風乙女ゲームは前述したように、続きが発売されるほど人気だった。

 ストーリーは王道ながら細部までよく考えこまれてるし、なによりスチルと豪華な声優さん! 素晴らしい乙女ゲームだった……!! この乙女ゲームは歴史に残る作品だったと言っても過言ではないだろう。


つまり何が言いたいかというと、



***



「乙女ゲームの世界最高!!!!!」

「……はぁ」


 私が乙女ゲームの良さについて語り始めて早数十分。

時間が立てば立つほど元気が無くなっていく幼なじみを心配して出来るだけ早く話を切り上げたというのに、返事が「はあ」とはどういうことだ。まったく、最近の若者は礼儀がなってないね! あぁ嘆かわしい!

「……何となく何を考えてるか想像つくけど。礼儀がなってないのは、ふうりの方だから。」

「え、エスパー……!?」

 私は目を見開いて、目の前の幼なじみ――四ツよつたに荒夜こうやを凝視する。


 何もしゃべってないのに言い当てるとか、エスパーとしか考えられない。はっ! もしくはストーカーということも……!?

「エスパーじゃないしストーカーでもないから。ふうりの顔に全部出てるから。……それで? 俺に話してどうすんの?」


 え、私って結構顔に出るタイプなのかな? もしかして嘘ついてもすぐバレてたのって顔に出てたから? 


 ぐにぐにと顔をマッサージしつつ荒夜に答える。

「もちろん、かっこいい悪役令嬢になれるように一緒に特訓するんだよ!」

「……はあ。わけがわからない上にこれの相手するの疲れる……」

 渾身のドヤ顔をすれば、荒夜は遠い目をして溜め息をついた。


 ……確かにいきなり『ここは乙女ゲームの世界で私は転生者です』って言われて困惑するのもわかるけど。私だったらこの人電波かなって思うけど。でも幼なじみの仲でしょ! もうちょっと信用してくれてもいいと思うんだよ!!


 もう、この幼なじみは頭が固すぎる! もっと柔軟に生きていこう!? そんなんじゃ、時代の波にすぐ乗り遅れちゃうよ!!

「……全部顔に出てる。本当に疲れる……」

「むぅ。疲れるってどういう意味? だいたい君だって攻略対象の一人なんだからね!」

「……は? 何言ってるの」

 冷たい目で、頭大丈夫? と言われる。結構傷ついた。


「……本当だもん。荒夜はクーデレ担当の攻略対象で、私は荒夜ルートの悪役令嬢なんだもん」

「……」


 いじけつつ荒夜に答えると、依然冷たい目をしたまま荒夜は考え込んだ。


……けっこう勇気出して言ったんだけどな。やっぱり信じられないよね……。


 しばらく無言が続く。先に口を開いたのは荒夜だった。

「……信じられないけど嘘ついてる風でもないし。俺が攻略対象とかいうのは納得がいかないけど。……とりあえずは理解した」

「……! 本当!?」


 驚いて荒夜の顔を凝視する。荒夜は軽く頷いて、

「まあ、アホなふうりがそんな話を思いつくとか、ありえないし」

「ちょっと待って!? そんな理由で!?」


 それはあまりに酷いと思うんだ、荒夜くん……だいたい私って勉強出来る方だし。頭悪くないし。


……でも、本当に良かった。こんな疑わしい話、信じてもらえないかと思った。……あれ、ほっとしたらなんか目から水が……。


「……は!? なんで泣いて……!?」

「な、泣いてない! 泣いてないよ!!」

「思いっきり泣いているだろうが!?」

「これはただの水だもん!!!」


 珍しく荒夜がおろおろしている。

こんな光景めったに見られない! 目に焼き付けなきゃ!! と、そう思うのに、目の前が滲んで何も見えなかった。


 荒夜が困ったような顔をするのが雰囲気でわかる。

「……いいかげん泣きやめ」

「泣いてないってさっきから言ってるでしょ!」

「お前は本当に変なところで頑固だな……」

 そう言って、荒夜が近づく気配がして、私は体を固まらせた。……なんだか荒夜の雰囲気がいつもと違うような……?


 私が困惑している間にも距離はどんどん近づいていく。

 そして、吐息を耳元に感じたその瞬間、

「何ちょっといい雰囲気になってますのーっ!!」

「!!?」

「ぐぇっ」


唐突に誰かに拘束された。

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