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執事オレガノ視点

ほんとはもっとあっさり終わって後半は主人公視点に戻るはずだったのだが…


SIDE 執事オレガノ


私が馬車を置いて戻るとあのコボルトが所在無さげに立っていた

お嬢様を抱えていないのはおそらくお嬢様付きの猫人のメイド(確かチコリといったか?)が連れて行ったからだろう

なぜそれに付いていかなかったのかは分からないが…

とにかく今の姿からはあの時の恐怖は微塵も感じず、本当にただの…いや、むしろ気の弱いコボルトのようにしか見えない

これではこのコボルトの異常性を話しても誰も信じないだろう

なぜこんなにも落差があるのだろうか……

私の勘違いだった?

いいや、ありえない、あれはそんなレベルの話じゃない


…あぁ、そうか、簡単な話だ

このコボルトは正しくお嬢様の魔物なのだ

だから肉体的にも精神的にも無理をしているお嬢様を放っておいた私に敵意を向けたのだろう

その上で恐怖に呑まれた私をお嬢様をできるだけ早く屋敷に連れ帰るために利用した

だがこれは異常なことだ

なぜならこのコボルトは初めて見たお嬢様と私の関係を理解したということだ

しかも私に怒りを覚えていたにもかかわらず、その怒りを呑み込みお嬢様を早く屋敷に帰すことを優先したのだ

ひょっとしたら私をあの場で害すればお嬢様に不利益をもたらすことも分かっていたのかもしれない


魔物は基本的に単純な行動原理で動くものだ、いくら下級の魔物の中では知能の高いコボルトだとはいえこれは有り得ない

例えより知能の高くなるコボルトの希少個体であってもそれは変わらない

中級の希少個体か上級でも比較的知能の高い魔物ならば経験を積めば同じような行動を取れるかもしれないというレベルのものだ

あの時とは別種の恐怖に背筋が凍る

私達がお嬢様に昨日までと同じような態度で接していれば、そのうちこのコボルトに消されるかもしれない

あのお人よしのお嬢様なら私達を害するような命令なぞしないだろうし、コボルトがしようとしてもさせないだろう

だがこのコボルトなら間違いなくお嬢様に気づかれずに私達を始末できる、そう確信してしまう


幸いなことにお嬢様は5日後に学園の寮にお入りになる

王都に別宅を持つ貴族は普通その別宅から通うものだが、お嬢様を疎んじられた旦那様がお嬢様の内向的な性格を矯正するためという建前のもと寮に入れることを決められたからだ

偶然とは言えこれでお嬢様が卒業される3年後までシュヴァルツ公爵家がこのコボルトに支配されることも潰されることもないだろ

旦那様達が余計なことをしなければだが……


ともかく5日程度なら他の使用人達がこのコボルトの怒りを買うことはないだろう

普段お嬢様は離れの別館で暮らしているし、お世話は唯一明確にお嬢様の味方といえるチコリが1人でしているのだから

問題は私だ、私はこのコボルトにすでに悪い意味で目を付けられてしまっている

コボルトの様子を見るに今の所どうこうされることはなさそうだが、ついでがあればまとめて排除されるかもしれない


ではどうするか?

このコボルトの危険性を旦那様や周りに訴えるのは悪手だ

まず信じてもらえない、それにそんなことをすればきっと今度こそ消されてしまう

ここは単純だがお嬢様やこのコボルト――いや、もう彼と呼ぶべきだろう――に便宜を図ることで私の価値を高めるべきだろう

若く立場も強くないチコリ1人では手が回らないこともできないこともあるはずだ

だが私が急にお嬢様に対して協力的になっては余計な軋轢を生んでお嬢様に害が及ぶ、なんて本末転倒なことになりかねない

だからあまり表立って動くわけにはいかない

裏でこっそり、けれど彼にはわかるようにしなければ

差し当たって彼をお嬢様の部屋まで案内することにしよう



「こちらです」


私がそう言って先に進むと付いてきた

わかってはいたがやはり彼は私達の言葉を理解している


部屋に着き来訪を伝えるとチコリが出てきた、お嬢様はまだ寝ているようだ

まぁ、あの様子では明日の昼ぐらいまでは起きないだろう


彼を部屋に入れて寝床の準備をするように言うと猛反発してきた


「コボルトなんかをお嬢様の部屋に入れるわけにはいけません

まして同じ部屋で寝かせるなんてとんでもない、そのコボルトがコリアンダー様に如何わしいことでもしたらどうするつもりですか!!」


・・・この女は何を言っているのだろうか?

従えられた魔物が主人と寝食を共にするのは当たり前のことだし、主人の許可無く主人に如何わしいことなどできないのは周知の事実だろうに……

もっとも彼ならどうにでもできそうな気はするがな


それにしても、なぜ彼女はこんなにも敵愾心丸出しなのだろうか?

まるで子供を守るために外敵と対峙している野生の獣のようだ

しかしこれで彼が1人で佇んでいた理由がわかった

おそらくお嬢様を抱えていた彼から今のように敵愾心丸出しでお嬢様を奪って行ったのだろう

彼も彼女をお嬢様の味方と判断したからお嬢様を渡したが彼女の態度についていくのは諦めたというところか


彼は自分に対することならかなり寛容なようだ

今も彼から見れば彼女は彼を馬鹿にした上に理不尽な言いがかりをつけているのに怒気や敵意などは感じない

とは言え彼の部屋を別に用意するなんて波風立ちそうなことを許すわけにはいきません

そうでなくとも間違ったことを言っているのは彼女の方なのだから


「なるほど、貴女は自分の主であるコリアンダーお嬢様が従えて来た魔物を馬鹿にするというのですね?

しかも、お嬢様自身も従えた魔物の制御すらできない無能者だと、そう言うのですね?」


「っ!?いえ、そのようなことは決して――」


「無いと言うのですね?

では問題ないでしょう、早速準備しなさい

それと、もうわったでしょうが彼を貶めるということはお嬢様も貶めるということです

覚えておきなさい」


「…わかり……ました」


全く納得していないようですがそのうち嫌でもわかるでしょう

なにせお嬢様付きのメイドである彼女はこれから最低3年間は彼とお嬢様と共に3人で寮生活をすることになるのだから


SIDE OUT

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