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お嬢様視点

お嬢様言葉難しい、安定しないです(;_;)

SIDE 令嬢クミン


今日は本当に充実した楽しい1日(一部黒歴史を除いて)でした

面白い物が沢山見れましたし、本当に大切な者を手に入れることもできましたもの



今日は魔物使いとしての才能(ギアス持ち)があり、魔物使いを目指す15才の子供にとっては特別な日

そう、魔物市に参加が許可される日なのです


ギアスの効果は自我と意志の強さによって従えることのできる魔物の格が決まると言われています

レベルによって従えられる魔物の数が決まっている以上幼いうちに弱い魔物を従えてしまうとその子の為になりませんし、仮に魔物使いとして生きていく気がなく制限を気にする必要がない、もしくは強い魔物を従えることができたとしても余りにも未熟な精神では上手く制御できず様々な問題が発生してしまうので国法で魔物にギアスをかけるのは15才まで禁止されているのです

事実この国法ができるまでは癇癪を起こして人を殺害してしまうなどの事件が多く起こっていたそうです


ですので多くの子供達が自分がはじめて従える(例外はいますが)ことになる魔物に対する不安と期待で胸がいっぱいだったことでしょう

恥かしながら私も少々興奮して昨夜は中々寝付けませんでした

私は少々はしたないと自覚しつつも朝一番で魔物市に赴き上級の魔物のいる区画を目指しておりました

今の私に上級の魔物を従わせることができるとは思っていませんでしたが、何もせずに諦める気にはなれませんでした

物語に出てくる人物のように強く美しい上級の魔物を従えることに憧れてしまうのは仕方のないことでしょう?


しかし、そんな私の目に1匹の魔物が映りました

その魔物はグリズリーというギリギリ中級に入るありふれた魔物でした

ただ普通のグリズリーが灰色の毛並みをしているのに対して、そのグリズリーは白銀の毛並みをしていました

担当の騎士様にお聞きしたところ、やはりグリズリーの希少個体とのこと

一般的に希少個体は同種の魔物に比べて能力が高く格も随分上がります

特に知能が高くなる傾向が強く従えるには同種の魔物の倍以上の力が必要と言われており“希少個体を従えるのに失敗した魔物使いがその希少個体より強い魔物を従えた”なんてこともあるそうです

ですので希少個体は十分に強い魔物を従えた上位の魔物使いが箔付けに従える魔物と言う認識になっています

ですがこの娘(雌でした)に一目惚れした私は騎士様にこの娘にギアスをかけることを伝えました

騎士様も執事のコンフリーも驚いた顔(面白い物その1です)をしましたが何も言わず見守ってくれました


不思議なことにこの時の私は失敗するなんて露ほども思っていませんでした

ギアスをかけながらも私の頭の中はこの娘の名前は何にしようか、一緒にどんなことをしようか、という考えで埋め尽くされていました

今思えばよくそんな状態で成功したものだと我がことながら驚いてしまいますね

それはさておき、無事に紋様がお臍の辺りに浮かび檻から出されて私の前まで来た時に念話で《よろしく、ご主人様》と言われた時は感激のあまり抱きついてしまいました

ちなみにギアスをかけた相手とは念話で意志の疎通ができるのですが大抵は単語、よくてカタコトなのだそうです

流暢に喋ることができるとはさすが私のフェンネル(そう名づけました)ですわ


予定より早く帰ってきましたので随分時間ができました

フェンネルと一緒にのんびり過ごして癒されることにしましょう

夕方にはシュヴァルツ侯爵家の晩餐に出席という憂鬱な出来事が待っているのですからしっかり英気を養わなければ

シュヴァルツ侯爵家も先代の御当主であるリンデン様が生きていらした頃は良かったのですが事故でお亡くなりになって弟君のタラゴン様が継いでからというものあまり良い噂を聞きません

私とニゲラ様の婚約もリンデン様とお父様が個人的にした“お互いの子供が男女だった場合婚約させよう”というものをあとを継いだタラゴン様が家と家との約束と拡大解釈して屁理屈で無理やり成立させたものですし、ニゲラ様ご自身も体面を繕うのはお得意のようですが傲慢で自己中心的な性格は婚約者や貴族として以前に人として問題があるでしょう

昔からいた使用人達もリンデン様のご息女であるコリアンダー様付きの侍女1人以外辞めてしまったとか

ああ、駄目です、考えていたらどんどん気分が落ち込んでしまいました、はやく荒んだ心をフェンネルに癒してもらわなければ


フェンネルの毛はサラサラで撫でているだけで癒されますわねぇ

気が緩んでるせいかついついフェンネルに愚痴をもらしてしまいました

淑女としては失格ですわね、でもおかげで少しすっきりしました


ナデナデ

《ねぇ、ご主人様》


《なぁ~にぃ~フェンネル~~?》


スリスリ

《そんなにニゲラって言う人は強いの?》


《?、どんな魔物を従えたか知りませんしぃ、わかりませんわねぇ~》


モフモフ

《強いかどうかも分からない嫌いな雄と番になるの?》


《ん~、そうなりますわねぇ、嫌ですけどぉ》


フゴフゴ

《嫌なら追い払うか先にもっと強い雄と番になっちゃえばいいのに》


《残念ですけどぉ、人の場合はそんなに単純では……》


ガバッ

《ご主人様?》


いえ、この婚約にお父様はあまり乗り気でなかったはず、お父様は親友のリンデン様とだったから婚約の約束を交わしていたようですからシュバルツ侯爵家と婚姻関係を結ぶよりヴァイス家にとって利のある殿方を私が射止められれば婚約解消を認めていただけるかもしれませんわね

相手は侯爵家、国内では難しいかもしれませんがこれから私が通う学園には国外の方も多数通われているとのことですからひょっとしたら条件に合う殿方がいらっしゃるかもしれません

正式に婚約が結ばれるのは今日ですし、今なら条件を付けることも可能なはず

これはお父様にお願いしてみる価値はありますわね


ギュッ

「ありがとう、フェンネル

おかげで希望が見えましたわ」


《?どういたしまして??》



お父様が帰ってらしたのでさっそくフェンネルを連れて報告とお願いに行きましょう

お父様はフェンネルをみて驚いていらっしゃいましたがとても喜んでくださいました

これならすんなりお願いを聞いていただけるかもしれません


「つまりクミンはニゲラ君より優れた相手を見つけた場合その相手と結婚できるように条件を付けたいのかい」


「はい、どうかお願い致します、お父様」


「ふむ

(どの道ニゲラのようなドラ息子に家の可愛いクミンをやるつもりなどなかったしな、タラゴンのやつは知らなかったようだがどちらかにでもより良い相手が見つかった場合白紙に戻すという条件が最初からあるから土壇場でプギャーしようと思っていたが、今ぶちまけてあのプライドだけは高そうな小僧がどんな顔するか見るのも一興か)

駄目だな」


「そんな!お父様お願い致します!!」


「そんな頼み方じゃ駄目だよ、フェンネル

昔のようにお願いしてくれたらその頼みを聞いてあげよう

ここ1,2年でクミンは急に余所余所しくなってしまったからね、私も寂しかったのだよ」


「それは侯爵令嬢として恥ずかしくないよう…」


「ん?条件は付けなくていいのかい?」


うう…、背に腹は帰られません

私は手を胸の前で組み上目遣いでお父様を見ます

恥ずかしさで顔が赤くなっているのが自分でもわかります


「お願い、パパン」


「うむ、任せなさい、必ずシュヴァルツ侯爵にその条件を呑ませよう

さぁ、もうすぐ出かける時間だ、準備してきなさい」


「わかりました、それでは失礼致します」


まだ顔の熱は引いてませんが何とか取り繕ってお父様の書斎を出ます

書斎の方から『フォォォォォォォォ、娘サイコ~~~~~!!』とかいう叫び声が聞こえるのは気のせいでしょう

えぇ、気のせいですとも


《ねぇ、ご主人様》


「なにかしら、フェンネル?」


《ご主人様のお父さんって変な人?》


「…言わないでちょうだい……」



外出準備を終えた私がフェンネルに近づくと一瞬顔を顰められるという悲しい出来事がありました

理由を聞いても


《気にしないでご主人様、僕頑張るから》


という要領をえない返事が返ってくるだけでした


そんな訳で少々落ち込みつつシュヴァルツ侯爵家に向かいました


出迎えに来られたシュヴァルツ侯爵様とニゲラ様は自慢げにブラッティファングを従えていらっしゃいましたがフェンネルの姿を見た途端シュヴァルツ侯爵様は笑顔を引きつらせ、ニゲラ様は苦虫を噛み潰したような顔になりました

初めての魔物でブラッティファングクラスの格を持つ魔物を従えることのできる人は滅多にいないので自慢しようとしていたのでしょう、相変わらず器の小さい親子ですわね

でもお2人のそうゆう顔を見ていい気味だとだと思う私も人のことは言えませんね


晩餐の席にコリアンダー様がいらっしゃらなかったので尋ねてみると


「コリアンダーは魔物を従えられず、まだ帰ってきていないのですよ

何をやらせても上手くできない上に魔物も従えられないなんて本当に我がシュバルツ家の恥ですな

優秀だった兄の血を継いでいるとは思えませんな

これはひょっとしてエルダー嬢は不義でもなさいましたかな?

ハッハッハッ」


あまりな言い方につい声を荒げそうになりましたが、先にお父様が先の言葉を諌めて下さいました


「シュヴァルツ侯爵殿、兄君の奥方とご息女を貶めるような発言はいかがなものか」


「おっと、これは失礼を

まぁ、この席にいない者のことなぞお気になさらず食事を楽しんでいただきたい」


謝罪の言葉を口にしつつもその表情は優越感に満ちています、これはニゲラ様も同じでニヤニヤと笑っています

相変わらず品のない親子です、ちょっと恥ずかしい思いもしましたがお父様に条件を付けることを承諾していただいて本当に良かったですわ


食事が終わり、私とニゲラ様の婚約を正式に書に認める“婚約の儀”の準備が使用人達の手によって行われています

ここでお父様が例の件を切り出しました


「そうそう、この婚約なのですがどちらか一方にでもより良い相手が見つかった場合無効となる旨を明記しておいた方が後々揉めることがなくていいでしょうな」


「なっ!?何を今更そのような勝手なことを

そんなことを認められるわけがない、我がシュヴァルツ家を侮辱するおつもりか!!」


「いえいえ、そんなつもりは毛頭ありませんよ

リンデン殿と約束した時点でこの条件は組み込まれていましたからね

確か“リンデン殿とした婚約の約束を引き継いで”というお話だったはずです、何も問題ないでしょう?

お疑いでしたら精約書を作ってもかまいませんよ」


「う、ぐぅ」


お父様の言葉に激昂なされていたシュヴァルツ男爵様ですが“精約”の言葉に言葉を詰まらせておいでです

ニゲラ様は怒りと屈辱の入り混じった顔で私を睨んでいらっしゃいますね

それもそうでしょう、“精約書”とは精霊の加護を持つ者だけが作れる自身に対する絶対の証明、万一、精約書に書いた言葉に虚偽があればその者は精霊の加護を失い、精約書を手にした相手にもそのことがわかるので偽りようがありません

つまり私も含めて皆お父様の手のひらで転がされていたということですわね

腹立たしいですが今日のところはシュヴァルツ侯爵親子の百面相を見れたことで良しとしましょう


「クミン、精約書の作成などで遅くなるだろうからお前はもうお暇しなさい」


「はい、お父様」


「…ニゲラ、クミン嬢をお見送りしてこい、その後は部屋に下がってよろしい」


「わかりました、父上」


「それではシュヴァルツ男爵様、本日はお招きしていただきありがとうございました

お先に失礼させていただきますわ」


「ああ、クミン嬢も気をつけて帰りなさい」


「はい、ありがとうございます」


そう言ってシュヴァルツ男爵様とお父様に礼をして部屋から出ます

一緒にニゲラ王子も出てきました、言いつけ通り見送るためでしょう

部屋の外で待っていたそれぞれの魔物と従者とも合流し暫くたった頃ニゲラ様が問い詰めるような、それでいて馬鹿にしたような口調で喋りかけてきました


「随分と無駄な条件を付けたものだな

俺様より良い相手などいるわけないだろうに

まぁ、そこは屁理屈こねて何とかするつもりなんだろうが

そもそも、お前を娶るということはシュバルツ侯爵家に泥を塗るということだ

そんな馬鹿な真似する奴なんかいねぇよ」


「本当にニゲラ様の言うとおりでしたら素直に妻となりますわ

けれど私は、より優秀な殿方を見つけその方から私の夫になる承諾を得てみせますわ

それまでの婚約者ですけどよろしくお願い致しますわ」


「テメェッ――」


もう私がニゲラ様の妻になる気がないのは分かっているでしょうから取り繕わずにお話します

ニゲラ様は私にまだ何かおっしゃろうとしていましたが階段の下にコボルトがいるというおそらく予想していなかった事態に言葉がとまりました

逆に私は


「あら、なぜコボルトがここに?」


と疑問を口に出していました

もっとも、そう言っている最中に答えは出てましたけど

おそらくこのコボルトはコリアンダー様が従えた魔物なのでしょう

ニゲラ様も同じ答えに達したらしく馬鹿にした目でコボルトを見ています


なぜかコリアンダー様が近くにいらっしゃらないようですので従者達は万が一攻撃された時のために一応気をつけているようですが、皆コボルト1匹なんて素手でどうとでもできる実力の持ち主達ですので空気は緩いです

私も特に気にせず階段を下りていたのですが、そんな私にフェンネルが警告してきました


《ご主人様、気をつけて》


驚いてフェンネルをみるとすでに臨戦態勢に入っていました

中級のフェンネルが警戒する下級のコボルト、ひょっとして私達が気づいていないだけでこのコボルトも希少個体なのでしょうか?

興味を持った私は害意や敵意といったものを感じなかったのをいいことに皆の制止を聞かずコボルトの目の前まできました

フェンネルは本気で心配しているようですね、後で謝らないといけませんわね

私が目の前まで来た時コボルトの口元が引きつったような気がしましたが主人であるコリアンダー様がいない以上追求のしよがないので今回はあきらめましょう、それにしてもフェンネルといいこのコボルトといい私に何があるというのでしょうね?

それにしてもこのコボルト


「臭いますわね」


思わず口に出してしまいました

相手が言葉の分からないコボルトだったからよかったものの、この本音をポロっと言ってしまう癖は何とかしなければなりませんね


それはともかく、このコボルト何処からどう見ても普通のコボルトで、なぜフェンネルが警戒するのか全く分かりません

コボルトの観察を続ける私に痺れをきたしたのか再び苛立たしげにニゲラ様が声をかけてきました


全く、女性を急かすなんてなっていませんわね

おかげで興が削がれてしまいましたので軽くニゲラ様を煽ってから帰るとしましょう



帰りの馬車の中でフェンネルになぜあんなに警戒していたのか聞いてみましたがフェンネル自身にも理由はよくわかっていないようでした

これは学園に通う目的が1つ増えましたわね

今から楽しみですわ


SIDE OUT

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